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心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

アナログレコードの魅力

2006-02-05 10:44:59 | Weblog
 立春というより、寒の明けという季語が似合う休日の朝、愛犬ゴンタの水入れは薄い氷で覆われました。でも、ゴンタは朝の散歩が待ち遠しく、元気一杯に跳ね回ります。
 そんな休日の朝を、きょうは珍しく「チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番変ロ短調」のレコードを見つけ出して聴きました。ピアノはマルタ・アルゲリッチ、バイエルン放送交響楽団、指揮はキリル・コンドラシンです。このあまりにも有名な曲を、わたしは多感な中学生の頃よく聴いたことを覚えています。万人のこころを虜にする懐の広さのようなものを、この曲から感じ取っていたのだと思います。
 最初の出会いは、大自然に囲まれた田舎の離れの一室で、父ご愛用の蓄音器で聴いたのが初めてでした。誰の演奏であったかは覚えていませんが、小さな箱の中から聴こえる西洋の音楽に不思議な魅力を感じたものでした。もちろん、SPレコードです。針は鉄製と竹製がありました。田舎の小さな楽器店にも蓄音器用の針を売っていて、東京に単身赴任していた父が年に何回か帰ってくる時期になると、新しい針を新調しておくのが私の役目でした。いま思えば、これが私のクラシック音楽との出会いでした。
 ところで、今わたしが聴いているアルゲリッチ演奏の第1番は、1980年2月にミュンヘンでのライブ演奏版です。アルゲリッチという人は、なかなか気難しい面があるようで、というよりもひとつひとつの演奏に最高のものを求めようとするあまり、結果として出来不出来がはっきりと表れるような印象をもっていますが、このレコードはコンドラシンとの息もぴったりあって非常にスリリングな演奏を実現しています。
 ライブ録音というのは、臨場感があって良いです。一般的には何度か録音を重ねて、それを編集して最高の演奏に仕上げていく。これがCDやレコードの制作だろうと思いますが、ライブ録音は嘘がつけない。乗るか乗らないか。その分、演奏が終わった瞬間の感動をオーディエンスの一人として共有できる素晴らしさは、他に変えがたいものがあります。オペラのDVDでも、映画風に編集したものは面白くなく、やはり大きな歌劇場でのライブ録画がお勧めです。要するに、そこに「在るもの」を素直に楽しむ。これがレコード芸術の楽しみなんだと思います。とはいえ、ライブ録音のレコードは極めて少ないのが現状です。
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