愛しきものたち

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木津川市 正覚寺(しょうがくじ)洪水供養石仏

2012年02月03日 | 石仏:京都

木津川堤防の近く、旧市街地の住宅密集地に在る正覚寺に洪水供養阿弥陀石仏が祀られて居る。

奈良市内と奈良坂で境界を接する京都府最南端の木津川市は木津川左岸に位置し、旧市街は木津川堤防下にあり、その歴史は洪水との戦い共にあったといっても過言ではないほど・・・・。

浄土宗「正覚寺」は木津川市役所北西約200mに在り、山門を入って直ぐ右手、簡素な覆い堂の中央にこの洪水供養阿弥陀石仏がある。

石仏は六角柱の台座に据えられ、大きい蓮台に座す丸彫り螺髪の阿弥陀坐像・・・どうしたのか手首から先を欠損。

総高約130cm、六角台座は約50~60cm、蓮台も含めた像高約70~80cm・・・・半眼で瞑想するような面相、引き締って慈悲深い顔つきはいかにも供養仏に似つかわしい。

元は木津川堤防上に在ったものを後この地に移動したものだという。

六角形の台座に銘文が刻まれ・・・・・「正徳二年(1712)辰八月十九日洪水によって、此川筋の近在辺境の人民おぼれ、死するもの幾千人といふ数をしらず」(右面)

「今日第三回忌にあたれるをもって、彼亡者の菩提のため、此阿弥陀仏を造立し、ながくここに安置し奉る。かねては又」(中央面)

「往来の貴賎男女をしてこの尊像を拝し心々の回向をなさしめ自他平等の利益とせんことを願ふのみ」(左面)

他背面には「正徳四(1714)甲午年八月十九日」「願主 京都住人 大八木弥右衛門 敬白」と在り、正徳二年の木津川大洪水で、水死した人々の菩提を弔う為、正徳四年願主の京都住人、大八木弥右衛門は三回忌にあたって、数知れない多くの人びとと、そのなかにいた近親者の菩提を弔うため 造立された事が解る。

この南山城に住む僕も物心付いた昭和28年山城大水害をはっきり覚えていて 、現在の国道24号線山城大橋付近では国道から直に木津川の流れに手をかざせる 程の水嵩で在ったような記憶がある。

当時木津川流域では300人以上の犠牲者を出している・・・・・・天災にせよ人災にせよ、自分の命は自分で守るしかない。

撮影2012.1.24