北国街道板取宿は近江・木之本から栃ノ木峠を越え南越前今庄へ至る越前側最初の宿場で江戸時代には番所も設けられていたようです。
往古平安時代から、畿内と北陸を結んでいたのは西近江経由の北陸道、それに対して北国街道は天正六年北の庄に封じられた柴田勝家が安土に赴く最短路として、栃の木峠の大改修を行ない東近江経由の北国街道として拓かれ、江戸の参勤交代や、お伊勢参りの最短ルートとして北国街道は大いににぎわったようです。
ここは福井県の嶺北と嶺南を隔てる南条山地の嶺北側にあり、板取宿と木の芽峠は日本の秘境100選にも選定されているように現在でも豪雪地帯として道路の冬季閉鎖が行れる処です。
しかし雪が無ければ国道365号線がこの旧宿場の真横をかすめて通過しており、この地がどうして秘境100選なのかといぶかしく思うほどです。それは勿論、この奥の山中にある木の芽峠を含めての事なのだから納得しないわけでもないのだけれど・・・。
R365号線脇に用意された駐車場に車を置き関所門の立つ石畳の上り坂を上ると左手に2軒の兜造りの萱葺き屋根住宅が見え、登り坂右手にもう2軒の萱葺き屋根民家が軒を連ねている。
現在往時をを偲ぶ建物はこの4軒のみと成っているが、しみじみ懐かしい郷愁を感じさせる風情はやがて滅び行くものの美しさと哀しさを充分にかもし出している。
この地はすでに昭和50年廃村になっているが新しく二家族がこの建物に住み維持管理などに当たっているという。
別に土産物屋さんがあるでもなく、案内人が居るでもなく、観光客も殆ど訪れないようでただただ静かなたたずまいに時間だけが過ぎてゆく。
この地の直ぐ脇を通る国道365号線をそのまま南進するとやがて栃の木峠、ここを越えるとそこはもう近江の地。
又板取宿の直ぐ南方にある今庄365スキー場の中を貫く道路(県道だが何号線かは解らず)をどんどん登れば旧北陸道が通じていた分岐点に差し掛かり左手にとれば言う奈地蔵を越えて木の芽峠に差し掛かる。
木の芽峠には1466年からここで峠の茶屋兼番人であった前川家が残っており、今もたった1人でこの家を守っておられる。
この道はそのまま道なりに進むとやがて栃の木峠でR365に合流する。
因みに木の芽峠は車での進入は出来ません。
一方、旧北陸道の越前側最終の宿場は二つ屋の宿。
ここは今庄365スキー場から旧北陸道を右に進むのだがここから車で旧二つ屋の宿場に下る事は出来ない。
旧二つ屋宿は今庄から旧国鉄北陸本線の軌道上に造られた県道207を走ること約10分弱、南今庄駅の直ぐ西、新道の交差を左折して山手に進む。
やがて見える集落が二つ屋の集落、集落を抜けるとやがて林道になるがそのまま1.5kmほど遡っていくと旧宿場跡の入り口と思しき名号碑と自然石に刻まれた地蔵に出逢う。
この地は戦後直ぐに豪雪の為今の二つ屋へ集落ごと離村し、現在全く建物は存在しない、ただ朽ち果てた日吉神社が残るのみでいかんとも哀しすぎる。
撮影2009.11.7(木の芽峠、言う奈地蔵は2008.7.5)