経歴20年のベテラン船長=「一般市民」と偽り脱出-イ容疑者(時事ドットコム)
J・コンラッド『ロード・ジム』をなんとか読み終えたのは約3ヶ月前だったが、この小説のようなできごとはしばしば起こるものであって、今回の珍島沖で起きた客船沈没事故の顛末も小説を思い起こさせるものであるように思っている。
小説の主人公ジムは多くの大人たちが望みたくなるような理想の青年像を具現化したような経歴の持ち主でかつ良い意味でのロマンチストであるが、その彼はいざという時に海に"飛び降りた(飛び込んだ)"ことで、生涯の仕事であったはずの船乗りとしては致命的な汚点が刻み込まれてしまったことに対し苦悶を続けるが、今回のような実際に起こった事故はもし記事のとおりならやりきれないものがあるように思った。事故によって死者も出てしまっていることだし…。
ただ、、、小説の語り手のマーロウは作中のジムに厚意を寄せたのであって、ジムを雇っていた薄情な船長に対する同情の記述は見られない。マーロウの目からすれば、作中の船長は関心を寄せる対象どころか眼中に入らない人物なんだろうか。コンラッドにこう尋ねたとしたら、どのような返答があるのだろう…。
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