デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



100のモノが語る世界の歴史大英博物館展



来館者へのサービス、ルイス島のチェス駒のレプリカ(拡大版)



ちょっと困っているかのように見える

先月のことだが、100のモノが語る世界の歴史大英博物館展を鑑賞した。
一点一点、密度の濃い展示内容ででとても印象に残った。私は外国旅行をする機会があればなるべく大きなミュージアムを訪れる機会をつくるが、そういったミュージアムでは自分の見たい作品をなるべく効率よく見回ろうとする。しかし自分の見たい作品といえど、多くが世間によく知られた有名な作品であることには変わりなく、そういった有名作品だけ見回っても時間があっという間に過ぎてしまい、もし三日間以上来館できるならばぜひじっくり見ておきたいものが見逃しがちになる。今回の大英博物館展は、もし現地で入館したとしても見逃してしまうであろう展示品が厳選されているような展だったように思う。
ここ5・6年の間に塩野七生の「ローマ人の物語」をきっかけにして古代ギリシア・ローマ文明とエジプト文明のTV特集を見たり本を読むことが多くなったので、今回の展示に自分の見たいものが来ていたのでうれしい驚きであった。
瞠目した作品の一つに「ミトラス神像」があった。展覧会のチラシの下の方に映っている首をのけぞらせた牛の背に左ひざを乗せている男の像だが、この像を見て私はハドリアヌス帝やユリアヌス帝、そしてシンマクスのことを思った。そしてシンマクスの懇願が今ほど切実な響きを帯びている御時勢はないとも。
メソポタミアの大洪水伝説を語る粘土板にはT・マンの『ヨゼフとその兄弟たち』のことを思ったし、ロゼッタ・ストーンのレプリカには考古学や言語学のすごさを感じ取れた。アウグストゥス帝とソフォクレスの胸像には旅先の知り合った人と再会したような気持ちになった。宗教改革100周年記念ポスターにはニヤリとしてしまった。ヘブライ語が書かれたアストロラーベはアンティキティラを思わせたが、その延長線上にあるビーグル号のクロノメーターにはよくぞ日本に来てくれましたと言わんばかりの気持ちになった。
ビーグル号はC・ダーウィンが5年間の世界一周の航海に出た船の名前だが、その船に搭載されていたクロノメーターを間近で見れたのだ。私は人類が経度の測定を手のひらサイズの時計で成し遂げるにあたりジョン・ハリソンという時計職人の多大なる貢献があったという話が好きで、ビーグル号のクロノメーターもハリソンの職人魂が乗り移ったものであったからこそ長期間に渡る航海を成し遂げたと思いたくなった。

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