Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

野蛮で偉大な時の浪費

2006-12-06 | 歴史・時事
承前)奴隷政策や帝国主義が、殖民経営からなる強国の市民を精神的に奴隷にしてきた事実は、左派の論考を待つ必要も無い。むしろ、その歴史的意味に注目する方が、再び過ちを繰り返さないためには重要である。奴隷は必ずしも根絶していないのである。

先ず何よりも、ドイツの哲学者ヘーゲルが示した当時の世界観が参考になる。そこでは、世界の国々を文明国から未開国までの三段階に分けているようで、奴隷を徴集して来たのはアフリカの「未開国」であった。またその中間にあるようなシナなどは、十分に啓蒙されていない人が住む発展しない帝国の典型であった。

それは、面白いことに第一次世界大戦を挟んで創作されたトーマス・マン著「魔の山」のモラリスト役サッテムブリーニの東洋観に良く出ている。そのサッテムブリーニは青年カストロプに向かって云う。

「空に浮かんだものを語るではありません、君のヨーロッパ的な生活感に見合うものを語るべきです。」

そして、

「内面的に彼らアジア人に合わせてはいけません。彼らの概念に感染してしまわないように、そして彼らの存在に対して自らの気高い其れを掲げ、西洋の神の子として、文明の子として、生まれつき神聖なものを神々しく保つのです。」

さらに続けて、

「時間です。あの野蛮で偉大な浪費は、アジア人のスタイルですよ。だから、御覧なさい、ここに東方からの子息が喜んで屯するのです。」

そうした時間と発展がヘーゲルの手によって編み出される頃、江戸の数学者本多利明(1744-1821)は、蝦夷の実見などを踏まえて、「凡そ、大世界の海洋にエゲレス領のなきはなし」と殖民地経営と海外貿易を説いている。

そして、英国の地理的緯度や条件を「独島なり、極寒の土地なり、国産乏しく、何一ツ採るところなき廃島なるを、如斯大良国となりたる」と紹介して、ロシアの属国になったシベリア領土を顧みて、「国土の貧富も皆 制 度 教 示 にありて土地の善悪に非ず」と説く。

まさにこれこそが、ドイツ連邦共和国の社会民主党が途上国知的援助として行ってきた活動であって、前首相の野蛮な中国政策は異例としか考えられない。

再び、セッテムブリーニの声を借りると、

「ロシア人が四時間と云えば、そのときは我々の一時間ではもはやないと気が付きますね。時間に対する無頓着さは、その荒々しい広大な大地と関連していると考えるのは容易いです。」

「我々ヨーロッパ人には、そうしたものはありません。」

時間の感覚、歴史認識こそが、誤りを繰り返さないための指標である。三民主義を学んで、イデオロギーを学んだ、そして今日も自国民や少数民族に対して、また地下資源を掻き集め工場経営をするアフリカにおいても人権を蹂躙するシナ人がいる。

帝国主義がそのポスト帝国主義に歴史的意味合いをもって清算されるとき、所謂歴史修正主義者と呼ばれる者も、または似非イデオロギー信奉者もこうした歴史的認識を蔑ろに出来まい。

トニー・ブレアーは、商人の横暴と英国の啓蒙思想の矛盾をそのコンテクストで提示している。その影響は、産業革命と云う近代を突き進んだ全ての先進国家に及ぶ。(終わり)



参照:
「幕末における展開と停滞」-日本政治思想史研究より 丸山真男著
"Vorlesungen über die Philosophie der Geschichte", G. W. F. Hegel
27/11/2006: New Nation page one, The New Nation
「黄禍」の真意 [ 文学・思想 ] / 2006-10-12
ポストモダンの貸借対照表 [ 歴史・時事 ] / 2005-09-02
終わり無き近代主義 [ マスメディア批評 ] / 2005-09-03
世界の災いと慈善活動 [ マスメディア批評 ] / 2005-11-29
グローバリズムの領域侵犯の危険 [ 歴史・時事 ] / 2004-12-10
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