Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

神をも恐れぬ決断の数々

2006-11-22 | マスメディア批評
親中共の立場を今でも繰り返し発言するゲルハルト・シュレーダー前ドイツ連邦共和国首相。氏の新著「決断の数々-政治の中での私の人生」が25ユーロと高価雑本に拘らず好評発売の様である。特にこの前首相ファンへのクリスマスプレゼントに格好のアイテムである。

中国が、昨日今日で我々が苦労して勝ち得た人権とか民主主義的価値を、そう簡単に共有出来るとは思えないとして、孤立させることなくその経済的価値を引き出して行くのがこの政治家の持論である。

コソヴォ紛争におけるベオグラートの中国大使館誤射?事件の直後1999年に初めて北京へと謝罪のために韋駄天帰りをして、中国で一躍顔となったのが北京との個人的関係の始まりであろうか?現実的対中国政策とは、それなりに実弾が飛び交う密接な関係を指すのであろう。

同著書から最も興味深い、九月十一日後とイラク戦争を扱った章を読む。紐育タイムス2004年5月26日の記事をして、これで私の考えが正しかったことを示していると全文引用している。

つまり、「2002年の何時ごろからか、ワシントンのイラク侵略への口実が、反テロから大量破壊兵器へ変わったのか、私は分からない。」とする一節で、これは我々通常の意識を持った世界市民誰もが不思議に思っていることそのものなのである。

この著書では、まだまだ口外出来ないことがあるとしても、ベルリン政府が不可思議に思っていた事実と後に述べられている九月十一日後の動きを読むと、我々の受け止め方と全く変わらないことに驚かされる。

ベルリン政府は、テロ事件直後から同盟国として親密にワシントンと連絡を取りながら且つ、「1989年以降、国家の完全主権を取り戻した対等の同盟国として、軍事力を含む全ての援助を惜しまない。」として国連管理の条件で2001年11月8日アフガニスタン派兵に踏み切った歴史を忘れてはいけない。

コソヴォ紛争の時もそうであったが、初の欧州外への派兵には出血が伴った。しかし緑の党のフィッシャー外相を含む政府内には、同盟国の危機に際する軍事行動への疑問は皆無であった。

その後、アフガニスタンのタリバンのアジトでVIDEO等が押収されて、ハンブルクを拠点としたアルカイダが指揮する実行犯グループの軌跡が知れることから、ベルリン内務省は安全維持から一歩踏み出して対テロ作戦を繰り広げるに至る。この費用は、三十億ユーロにのぼり保険税やタバコ税から徴収される。

そうした状況で2002年1月の有名な「悪の枢軸」演説が小ブッシュ大統領によってなされる。この時点でハッキリと、米国はイラクへと 先 制 攻 撃 をかけると感じたと云う。そして、シュレーダー首相はワシントンへと飛んで意見を交わすが、ベルリンへの帰還の機上「米国の態度に曖昧さを感じた。」と思い起こす。

そして、翌日にはミュンヘンでブッシュ政権のブラックナイツの一人ポール・ウォルフォウィツ国防副長官とジョン・マッケインが、「同盟国の判断如何に関わらず米国は決断する」としたので、ベルリンの政治的決断の方向は決定的となって行ったようである。

その後、米大統領が5月にベルリンを訪問して、市民の多大な抗議行動から厳戒態勢となるが、連邦議会でのゲスト演説では驚くほどイラク侵攻への態度を軟化させた。そして、滞在最後二日の昼食会などでは、サッカーワールドカップやらの問題の無い案件の雑談に終始していたとする。

そこで、シュレーダー前首相は、小ブッシュ大統領を指して、「その後も何度となく公の場での様子を見たが、神の前に慄くような怯えて正々堂々としない人間性は何時も変わらない。」として、ベルリンで二人だけで接した経験からも、米国とその大統領には親近感を持てなくなったと述懐している。

あの自信の無さそうなおどおどとして浮ついた子供のような大統領の悪霊は、知的新保守主義者と宗教的原理主義者の影響下にあるとしている。欧州からすると米国人は向こう見ずな少年で、その大統領とプレスリーごっこに興じる極東の首相は思考停止状態のただの子供にしか映らない。

それにしても、こうしてみるとG8会議中アンゲラ・メルケル首相の肩を突然揉みにやって来て顰蹙を買った大統領のために、独の対米方針が定まってしまうというのが恐ろしい。

米国政府の政教不分離をイスラムの政治体制と共に非難して、「人類の進歩にそぐわない」としていてこれは快い。この書籍が英語に訳され、各国語に訳される頃にはブッシュ政権の後片付けや同盟国への政治責任追及はどれぐらい進んでいるであろうことか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 古くて新しい赤い賄賂 | トップ | 理想主義の市場選抜 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿