「平安の秘仏」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館 特別5室
「平安の秘仏ー滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」
9/13~12/11 



東京国立博物館で開催中の「平安の秘仏ー滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」を見てきました。

滋賀県南部に位置し、南は京都、ないし三重とも面する甲賀市。その古刹、櫟野寺(らくやじ)には、平安時代に由来する仏像が20体もおさめられているそうです。

20体の揃い踏みです。まとめて寺外で公開されたのは初めて。いずれも重要文化財に指定された作品でもあります。


「十一面観音菩薩坐像」 平安時代・10世紀 滋賀・櫟野寺

会場中央、堂々たる姿で鎮座するのが本尊の「十一面観音菩薩坐像」でした。高さは3.12メートル。重文で坐像の十一面観音菩薩としては日本最大です。さらに台座に光背を含めると5メートルを超えます。さも泰然とした様で見下ろしています。第一印象はともかく大きい。一体どのように会場へ搬入したのかと思うほどでした。

頭と体はともに一本の木から彫られています。頭上には10面の顔も見えました。喜怒哀楽と言わんばかりの多様な表情です。しかも状態が良い。衣には彩色の跡も残されています。身体は黄金色で眩い。そもそも秘仏です。普段は閉ざされた扉の奥に安置されています。それを360度の方向から見ることが出来ました。

顔立ちは端正なものの、唇は厚く、顎のあたりがぷくりと膨れていました。腹回りは太く、肉付きは良い。指の動きはことのほかに艶やかです。軽く曲げては仏具を持っています。摘むと言っても良いのでしょうか。あまり力が入っているようには思えません。

「十一面観音菩薩坐像」を取り囲むのが櫟野寺に伝わるほかの仏像です。その数19体。本尊と同様にいずれも露出での展示でした。

櫟野寺の仏像は主に10世紀から11世紀前半と、11世紀後半から12世紀に造られたものの2つのグループに分かれるそうです。またなで肩で細身、目尻をやや吊り上げている仏像が多いのも特徴です。これらは甲賀様式と呼ばれています。


「観音菩薩立像」 平安時代・10~11世紀 滋賀・櫟野寺

その様式をよく伝えているのが「観音菩薩立像」ではないでしょうか。確かにかなり吊り目です。表情は険しい。またお腹の辺りはやや膨れていますが、全体的には細い身体つきです。衣文は優雅。洗練されていると言っても良いかもしれません。


「薬師如来坐像」 平安時代・12世紀 滋賀・櫟野寺

一方でさも笑みを浮かべているように見えるのが「薬師如来坐像」でした。本尊よりは小さいものの、像高は2.2メートルを立派です。表情は穏やか。顔はより丸みを帯びていて親しみやすい。都の大仏師、定朝の作風を模範としているそうです。


「毘沙門天立像」 平安時代・10~11世紀 滋賀・櫟野寺

「毘沙門天立像」が何やらコミカルでした。吊り目で険しい表情ながらも、宝塔を何やら訝しげに見据える姿は人間味すらあります。全体的に彫りが深く、構えはどっしりとしています。一木で造られたそうです。

会場は本館の特別5室。20体のみの展示です。点数こそ多くありませんが、「十一面観音菩薩坐像」をはじめとする甲賀の仏様は思いの外に表情が豊かで親しみやすい。お顔立ちを見比べるのも一興です。仏像の前を行きつ、戻りつつ、しばし時間を忘れて楽しみました。


「十一面観音菩薩立像」 唐時代・7世紀 奈良・多武峯伝来

なお本館の1階の仏像展示室にも十一面観音像が何体か展示されています。時代、様式は異なりますが、こちらもお見逃しなきようご注意下さい。



12月11日まで開催されています。

「平安の秘仏ー滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」 東京国立博物館・本館 特別5室(@TNM_PR
会期:9月13日(火)~12月11日(日)
時間:9:30~17:00
 *会期中の金曜日および、10月22日(土)、11月3日(木・祝)、11月5日(土)は20時まで開館。
 *9月の土・日・祝日は18時まで開館。
 *10月14日(金)、10月15日(土)は22時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館。翌9月20日(火)、10月11日(火)は休館。
料金:一般1000(900)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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「鈴木其一 江戸琳派の旗手」 サントリー美術館

サントリー美術館
「鈴木其一 江戸琳派の旗手」
9/10~10/30



サントリー美術館で開催中の「鈴木其一 江戸琳派の旗手」を見てきました。

まさに琳派ファン待望です。鈴木其一の名のみを冠した展覧会がついに始まりました。

主役はもちろん其一。とはいえ、全てが其一作で占められているわけではありません。

はじまりは師の抱一です。傑作として名高い「白蓮図」に目を奪われました。上では白い花が咲き、下方に蕾を付けています。花は散り際です。蕾がこれから開こうとしています。生と死を対比させているのかもしれません。また花の白は透明感があり、蕾はうっすらと緑色を帯びています。気高い。慈愛も感じられます。花を描いた作品でこれほど品があるものを他に知りません。

其一の得意とした朝顔の先駆けと言えるのかもしれません。俵屋宗理の「朝顔図」です。宗理は江戸の絵師です。ひょっとすると其一も作品を見る機会があったのでしょうか。朝顔の蔓はやや屈曲しているようにも見えます。花の群青は深い。種まで描いています。

次いでは其一です。まずは抱一門下の時代。其一は18歳で抱一に入門します。下谷の雨華庵で学び、一番弟子として抱一の信頼を得ました。

「蓮に蛙図」が可愛らしい。抱一が花と蕾を上下に描いたのに対し、其一は花の下で浮かぶ葉に蛙をのせています。花弁は丸みを帯びていて、柔らかな線も描きこまれていました。蛙は一匹、ぺたりと葉にくっ付いています。たらし込みを利用した葉も瑞々しく表現されていました。


鈴木其一「群鶴図屏風」 江戸時代後期 ファインバーグ・コレクション 全期間展示

この時期で目立つのが「群鶴図屏風」です。光琳にも倣ったという屏風、鶴の姿勢はあちこちを向いて一定ではありません。背後は波模様です。何やら鶴の曲線と呼応しているようにも見えます。細部が思いの外に緻密でした。黒い羽は毛羽立っています。脚の突起物も一つずつ丁寧に描いています。


鈴木其一「蔬菜群虫図」 江戸時代後期 出光美術館 展示期間:10/5〜10/30

抱一が没したのは其一が33歳の時でした。雨華庵の継承者は抱一の養子の鶯蒲です。其一は彼を支えます。その後、次第に抱一の影響を脱し、多様な画風を展開するに至りました。

「萩月図襖」に魅せられました。4面の襖絵です。月明かりのもとで花を咲かせた萩が広がっています。花は紅白ですが、ピンク色に染まっています。白い花は光を受けているのかやや輝いていました。夜の闇を示すためでしょうか。襖面にうっすらと墨が引かれているようにも見えました。

琳派の先人たちの画を踏襲しつつ、アレンジとも言えるような変化を加えるのも其一の面白いところです。「三十六歌仙・檜図屏風」はどうでしょうか。両画題とも光琳に例がありますが、これを一つの作品に合わせてしまう発想自体が面白い。また歌仙らもまるで大和絵に出てくるように優美です。衣装も模様も細かに描いています。デザイン云々でも語られる其一ですが、円山四条派も巧みに摂取していたのかもしれません。

「木蓮小禽図」も見逃せません。たわわに咲く木蓮。紫というよりもワイン色をしています。軽妙な水墨の技法です。丸まっていて先端部がぼやけている葉もありました。どことなく幻影的です。そして小鳥が一匹。葉が保護色の役割をしているのか、俄かに姿を確認出来ません。本作は御舟の作品との類似も指摘されているそうです。確かに其一画は時に近代日本画を彷彿させる面があります。

其一関連の資料も充実しています。抱一編の「光琳百図」はおそらく初版の可能性が高いとされるものです。其一自身が復刻した同図も出ています。さらに其一が江戸から九州へ旅した旅行記の写しも面白い。書状もあります。書画の鑑定、ないし貸し借りや、好物の漬物などについてのやり取りが記されています。几帳面な性格だったそうです。知られざる其一の人となりも伺うことが出来ました。


鈴木其一「三十六歌仙図」 弘化2(1845)年 出光美術館 展示期間:9/10~10/3

能絵、仏画、描表装がそれぞれまとまって展示されています。能絵は大名や豪商による注文品、仏画は一門の中でもとりわけ華麗だったそうです。また其一といえば描表装です。絵が表装の部分にまで拡張し、表具を含めて一つの作品と化しています。元は仏画で用いられた技法です。それを其一は需要の高かった節句図をはじめ、草花図や物語絵などに応用しました。

其一は40歳代後半で家督を長男の守一に譲ります。ここから晩年にかけては円熟、ないし黄金期と言えるかもしれません。より旺盛に作品を制作していきます。


鈴木其一「藤花図」 江戸時代 19世紀 細見美術館 展示期間:9/10~10/3

「藤花図」が美しい。3本の花房が吊り下がっています。花弁の一枚一枚は付立てです。輪郭線はありません。水色と青、紫色を交えて変化をつけています。「向日葵図」も見事でした。まさに太陽の如く輝かしい大輪の向日葵。一つは正面を向いています。葉には墨が混じっているのでしょうか。たらし込みが施されています。葉脈の金線の描写も抜かりありません。

「花菖蒲に蛾」も洗練されています。高い写実性と呼んでも良いのでしょうか。花弁はまるで図鑑を見るかのようにリアル。斑紋や線が再現されています。飛んできたのは蝶ではなく蛾でした。青白い羽には透明感もありました。

ハイライトは言うまでもなく「朝顔図屏風」です。所蔵はメトロポリタン美術館。2004年のRIMPA展以来の里帰りです。国内ではおおよそ12年ぶりの展示が実現しました。


鈴木其一「朝顔図屏風」(左隻) 江戸時代後期 メトロポリタン美術館 全期間展示

一目見て大きい。美術館の展示ケースいっぱいに広がります。右も左も朝顔。それ以外はありません。渦を巻き、上下左右へと自在に広がります。奥行きもあります。そもそも地平はなく、一体どこで咲いているのかもわかりません。まるで朝顔同士が手をとって踊っているかのようでした。

花の向きは様々。ほぼ開いていますが、蕾もあります。花の群青と葉の緑青の対比が鮮やかです。色のパターンは限定的。ミニマルです。いかんせん光琳の「燕子花図屏風」を連想しました。かの名作に対する其一のオマージュとも言えるかもしれません。もちろん難しいことではありますが一度、両作を並べて見る機会があればと思いました。

最後に展示替えの情報です。会期は5期制。途中、大半の作品が入れ替わります。


鈴木其一「風神雷神図襖」(右隻) 江戸時代後期 東京富士美術館 展示期間:10/5〜10/30

リストによれば第1期、第3期、第5期を観覧すると、ほぼ全ての作品を見られるようです。なお目玉の「朝顔図屏風」は全期間での展示です。

「鈴木其一 江戸琳派の旗手」出品リスト(PDF)

会期2日目の日曜日に出かけましたが、場内は思いの外に賑わっていました。10月2日にはNHKの日曜美術館でも其一の特集があります。まずは早めに出かけた方が良さそうです。


鈴木其一「夏秋渓流図屏風」(右隻) 江戸時代後期 根津美術館 展示期間:10/5~10/30

カタログも充実しています。論文は4本、其一の人となりに関する興味深い内容もあります。さらに全点の図版と解説、年譜、及び落款についても言及がありました。価格は2800円。かなりの重量級ですが、ここは迷わず購入しました。

私が琳派を好きになった切っ掛けが2004年。かのRIMPA展で抱一の「夏秋草図屏風」と其一の「朝顔図屏風」を見たことでした。

以来、「夏秋草図屏風」こそ何年かに1度は見る機会があったものの、「朝顔図屏風」は長らく目にすることが叶いませんでした。久方の再会です。朝顔のダンスに心を躍らせながら、其一の幅広い画業に改めて強く感銘を受けました。*なお「夏秋草図屏風」は現在、東京国立博物館の総合文化展(本館8室)で公開中です。(10/30まで)

[鈴木其一 江戸琳派の旗手 巡回予定]
姫路市立美術館:2016年11月12日〜12月25日
細見美術館:2017年1月3日〜2月19日

其一展は3会場の巡回展です。ただしそれぞれ美術館で出品作品が一部異なります。また「朝顔図屏風」はサントリー美術館のみの展示です。ご注意下さい。



10月30日まで開催されています。もちろんおすすめします。

「鈴木其一 江戸琳派の旗手」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:9月10日(土)~10月30日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜、土曜日は20時まで開館。
 *9月18日(日)、21日(水)、10月9日(日)は20時まで開館。
 *10月22日(土)は「六本木アートナイト」のため22時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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「トーマス・ルフ展」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「トーマス・ルフ展」 
8/30~11/13



東京国立近代美術館で開催中の「トーマス・ルフ展」のプレスプレビューに参加してきました。

ドイツを代表する現代写真家のトーマス・ルフ(1958〜)。日本の美術館における初めての大規模な回顧展です。

作品は全18シリーズ。1980年代の初期作から初公開の新作までを網羅します。


トーマス・ルフ「Portraits (ポートレート)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


冒頭はルフを半ば代表する「Portraits (ポートレート)」です。ただひたすらに前を向くモデルたち。正面性が強く、まるで証明写真のようです。いずれもルフの友人でした。そして何よりもサイズが大きい。高さは210センチです。つまり等身大よりも大きいポートレートです。さらに驚くべきは質感でした。画質は細かく、当然ながらブレがありません。元は24センチ×18センチのサイズでプリントされたそうです。それをルフは極限にまで引き延ばして提示しました。

ルフはデュッセルドルフの芸術アカデミーにてベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に写真を学びます。そしてドイツ国内の室内風景を捉えた「Interiors(室内)」や先の「Portraits(ポートレート)」などで注目を浴びました。ほかアンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらもベッヒャー派の写真家とされています。


トーマス・ルフ「Interiors(室内)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


「Interiors(室内)」はアカデミー在学中の作品です。「Portraits(ポートレート)」とは異なり小さい。被写体はルフの友人や家族の部屋です。その点ではポートレート同様にルフの身近な存在を捉えています。部屋には一切の手を加えず、ただ有り体に写し出しました。部屋には人の気配が僅かに残っています。とはいえ静寂に包まれていました。部屋の主はいかなる人物なのでしょうか。その辺を空想して見るのも面白いかもしれません。


トーマス・ルフ「Houses(ハウス)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


ルフの関心の対象は常に拡張します。今度は部屋を飛び出して建築です。「Houses(ハウス)」ではデュッセルドルフ周辺の建物を写しました。一部は「Portraits(ポートレート)」と同様に真正面から捉えています。ベッヒャー派の特徴の一つとして挙げられるのがタイポロジーです。タイポロジーとは「同じタイプの対象を一定の方法で収集し、その上に差異や共通性などを見出す手法」(*)のことです。そして「ハウス」においても建物の「光や距離感がほぼ一定」(*)に保たれています。 *解説より

ちなみに「Houses(ハウス)」、にわかには気がつきませんが、時に2枚のネガをつなげるなど、コンピューターによる加工がなされているそうです。実はルフ、相当数のシリーズにおいて写真を操作しています。さらに近年ではネット上からイメージを取り出して作品へと転化しています。どう写すのではなく、どう見せるのかを強く意識しているのもルフの特徴と言えるのかもしれません。


トーマス・ルフ「nudes(ヌード)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


そのネット上の画像を使ったのが「nudes(ヌード)」です。ヌードとあるように裸の人物が写し出されています。ただし画面は不明瞭。これもルフの画像処理のゆえのことです。色調も変え、細部も削除し、ヌードの構図、ないし身体の輪郭のみが認識できる程度にまで落とし込んでいます。ヌード自身も不特定です。モデルの名はおろか、そもそも誰が撮影したものかすら分かりません。


トーマス・ルフ「jpeg」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


ルフの加工の一つの極致とも呼べるのが「jpeg」です。よく知られるようにjpegとはデジタル画像の圧縮方式。9.11のテロの光景が写されていますが、これもルフ自身の撮影ではなく、ウェブサイトよりダウンロードしたものです。圧縮率を高め、画素を下げることで、jpegの格子状のパターンが浮かび上がっています。近づけば近づくほどイメージは崩れ、幾何学パターンにしか見えません。一方で少し離れると風景が立ちあがってきます。まるで絵画のようでした。


トーマス・ルフ「Substrate(基層)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


もはや原型すら止めていないのが「Substrate(基層)」でした。赤や青、それに黄色の色が水面をたゆたうように広がっています。何やらネオンサインのようにも見えます。元はネット上の日本の漫画やアニメの画像です。そこにひたすら加工を繰り返します。イメージは全て解体され、色と光にのみ還元されました。

はるか彼方、天体や宇宙もルフの興味の対象です。そもそもルフは少年時代から宇宙に対してシンパシーを感じていました。幼き頃はカメラより望遠鏡を先に手に入れたそうです。


トーマス・ルフ「cassini(カッシーニ)」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


「cassini(カッシーニ)」はどうでしょうか。いうまでもなく宇宙探査船のカッシーニです。1997年に打ち上げられ、2004年に土星の軌道に到着。衛星や輪の画像を地球に送り続けました。ルフはその際に公開された画像を入手。これもネットから落としたものです。色彩に手を加えることにより、星はより美しく輝いているようにも見えます。土星の輪の断面はまるで何らかのデザインのようでした。


トーマス・ルフ「press++」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


昨年の最新作、「press++」は世界初公開です。素材は古色を帯びた報道写真のアーカイブです。これまたルフが入手。画像面と裏面を同時にスキャンし、一枚の画面に統合しました。文字や数字は本来は裏面にあったものです。画像に関する情報が写真画面上に現れています。


トーマス・ルフ「zycles」 東京国立近代美術館
©Thomas Ruff / VG Bild-Kunst, Bonn 2016


ほか、マン・レイらが開発したフォトグラムの技法を用いた「photograms(フォトグラム)」や、カンヴァス上にイメージを出力した「zycles」も面白い。ルフといえばとかく特大のポートレートの印象があるやもしれませんが、まさかこれほど多様に制作を続けているとは思いませんでした。

[トーマス・ルフ展 巡回予定]
石川:金沢21世紀美術館 2016年12月10日(土)~2017年3月12日(日)



全ての作品の撮影が可能です。作家、作品、並びに展覧会、美術館名の情報をそれぞれ掲載すると、ネット上でも私的に利用が出来ます。


プレビュー時のトーマス・ルフ

11月3日まで開催されています。

「トーマス・ルフ展」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:8月30日(火)~11月13日(日)
休館:月曜日。但し7/18は開館。翌7/19は休館。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜日は20時まで。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般1600(1300)円、大学生1200(900)円、高校生800(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り「MOMATコレクション」、「奈良美智がえらぶ MOMAT コレクション:近代風景 ~人と景色、そのまにまに~」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「塩田千春 鍵のかかった部屋」 KAAT神奈川芸術劇場

KAAT神奈川芸術劇場
「塩田千春 鍵のかかった部屋」 
9/14~10/10



KAAT神奈川芸術劇場で開催中の「塩田千春 鍵のかかった部屋」を見てきました。

2015年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館に出品した塩田千春。その凱旋展と言えるかもしれません。ヴェネチアでの「掌の鍵」を再構成したインスタレーションを披露しています。

会場は劇場内のスタジオです。フロアは1つのみ。インスタレーション以外の作品はありません。タイトルは「鍵のかかった部屋」でした。



重いドアを押して進むとそこは赤の世界。無数の赤い糸が蜘蛛の巣のように広がっています。先には古びた白い扉が開け放たれていました。中央は糸に囲まれた空洞です。もちろん中に入ることも可能です。扉は5つあります。ドイツから持ち込まれました。



上を見上げればともかく赤に赤。雨が降っているようにも思えなくはありません。赤い糸は網のように四方八方へ触手を伸ばします。何やら包まれているというよりも、体に編み込まれてくるかのような不思議な感覚にとらわれました。

糸はヴェネチアでの作品をそのまま転用しています。全部で3000ロール。膨大な量です。ピンと張っています。一つ切ってしまえば全てが崩れてしまうかのようでした。



さらに奥へと進みました。するとたくさんの鍵が吊るされています。その数15000個。世界中の人々から提供されたものだそうです。いずれも古色を帯びていました。



「糸は人間の記憶を結ぶシナプスのようだ。」と解説の一節にありました。鍵も同様に人や場所の記憶を刻み込んでいることでしょう。糸の紡ぎ出す繭の中を縫って歩きながら、各々の宿していた記憶や世界を空想しました。

なおスタジオとあるように、会場は通常、演劇やダンスの公演などに使われるスペースです。



よって塩田のインスタレーションを舞台にしたダンスや音楽のイベントも用意されています。別途料金がかかりますが、そちらに参加するのも面白いかもしれません。

10月10日まで開催されています。

「塩田千春 鍵のかかった部屋」 KAAT神奈川芸術劇場@kaatjp
会期:9月14日(水)~10月10日(月)  
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00 
料金:一般900円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体は100円引き無料。
住所:横浜市中区山下町281
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約5分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。
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東京・天王洲に「TERRADA Art Complex」がオープンしました

東京臨海部、東品川一帯の天王洲。そこに4つのギャラリーを集積したアートスポットが新たに誕生しました。


「TERRADA Art Complex」ビル外観

「TERRADA Art Complex」です。ギャラリーを誘致したのは寺田倉庫。建築模型専門ミュージアムの建築倉庫を開設したことでも知られています。全5階建のビルです。ほか美術品輸送会社やアトリエスペースも入居しました。


「TERRADA Art Complex」入り口

場所は新東海橋交差点の近く。海岸通り沿いです。ギャラリーはビルの3階でした。専用の入り口はありません。ビル共用のエレベーターに乗って3階へと進みました。


「TERRADA Art Complex」3階スペース

3階フロアでは4つのギャラリーが通路を挟んで並んでいます。


URANO 「viewing space vol.001 岩崎貴宏」 展示風景

向かって正面がURANOです。白金から移転、2つのスペースを運営しています。viewing space vol.001では岩崎貴宏の展示が行われていました。既存の布や雑巾を解いた糸などを用いて、建築物やランドスケープを製作する作家です。最近では日産アートアワード2015にも出品。2017年にイタリアで開催される第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館出品作家にも選定されました。


URANO 「淺井裕介 胞子と水脈」 展示風景

URANOのメインスペースでは淺井裕介の個展が開催中です。巨大な泥絵が目の前に立ちはだかります。白金の旧スペースに比べ天井が高い(約5メートル)ため、大型の作品も展示が出来るようになりました。


児玉画廊|天王洲「ignore your perspective 35 外見の違うハードコア」 展示風景

同じく白金から移転してきたのが山本現代と児玉画廊です。山本現代は旧スペースを閉鎖しての全面移転。一方で児玉画廊は白金のスペースを残しつつ、ここ天王洲にもギャラリーを開設しました。


ユカ・ツルノ・ギャラリー 「ホセ・パルラ Small Golden Suns」 展示風景

東雲のTOLOTから移ってきたのがユカ・ツルノ・ギャラリーです。オープニングを飾るのはマイアミ生まれのペインター、ホセ・パルラの個展です。鮮やかな色彩が目に眩しい。同ギャラリーとしては2回目の個展だそうです。

[ERRADA Art Complex オープニング展示]

児玉画廊|天王洲「ignore your perspective 35 外見の違うハードコア」
9月10日(土)〜10月22日(土)
http://www.kodamagallery.com/

URANO「淺井裕介 胞子と水脈」
9月10日(土)〜10月15日(土)
http://www.urano.tokyo/

山本現代「Welcome to the AWESOME MANSION」
9月10日(土)〜10月15日(土)
http://www.yamamotogendai.org/

ユカ・ツルノ・ギャラリー「ホセ・パルラ Small Golden Suns」
9月10日(土)〜12月3日(土)
http://yukatsuruno.com/

最寄り駅はりんかい線の天王洲アイル駅。ちょうど建築倉庫のある寺田倉庫本社ビルを抜け、新東海橋の交差点を左折した先の右側に位置します。歩いて10分弱ほどです。


「TERRADA Art Complex」 山本現代

京急線の新馬場駅も同様に徒歩圏内です。山手通りを下って同じく10分弱ほど。信号待ちなどを考慮すると天王洲アイル駅からのルートより早く辿り着くかもしれません。

私はこの日、原美術館から歩きました。御殿山から北品川を抜け、旧東海道を南に進み、山手通りから海岸通りへと下るルートです。ゆっくり歩いて20分強。思いの外に近く感じました。



「建築倉庫ミュージアム」 寺田倉庫(はろるど)

建築倉庫やTERRADA Art Complexしかり、天王洲アイル周辺はこのところかなり変貌しつつあります。界隈の散策を兼ねて出かけるのも面白そうです。

「天王洲アイルで過ごすアートな1日。品川駅から巡るおすすめコースを紹介!」(Tokyo Art Beat)

ほぼ目の前にバス停、天王洲橋があります。ここから品93系統を利用し、品川駅高輪口へ出ることも出来ます。本数も豊富です。帰りはそちらを利用するのも良いかもしれません。


「TERRADA Art Complex」エレベーター

なおエレベーターがかつての清澄のギャラリーコンプレックスと同じ仕様です。降りた後、閉ボタンを押さないと、扉が開きっ放しになり、エレベーターが動きません。降りた際は外部の閉ボタンを押し忘れなきようご注意ください。

TERRADA Art Complexは2016年9月10日にオープンしました。

「TERRADA Art Complex」 
所在地:〒140-0002 品川区東品川1-33-10 *ギャラリースペースは3階
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約10分。京急線新馬場駅北口より徒歩約10分。
概要:寺田倉庫(本社:東京都品川区、代表取締役 中野善壽)は、アート事業の一環として2016年9月10日、東京・天王洲に「TERRADA Art Complex」をオープンいたします。これに伴い、ギャラリースペースには児玉画廊、URANO、 山本現代、ユカ・ツルノ・ギャラリーの入居が決定いたしました。*リリースより(PDF
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