Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

手練手管の質やその価値

2014-02-21 | 数学・自然科学
ネーチャー誌に載った小保方式のSTAP細胞に関しての記事を読む。山中式のiPSとの長短についての議論はあるとしながらも、その新方式の質や安全性については目下世界中で鋭意研究中とある。勿論興味を引くのは、そのストレスによる発達生物学的な見解である。

そもそもその切っ掛けは、ヨハネス・ホルトフレターの酸による両生類細胞?の研究があり、シャーレの中で皮膚細胞を神経細胞に変換させていることにあるとされる。1947年のこの論文は、発達生物学に過小評価されて片づけられてしまったようだ。しかし、最近はこのストレスの細胞に与える影響は、物理的なストレスとしての研究が盛んで、浸透圧として若しくは生体膜圧として理解されているようだ。

ここまで説明されると、ただ酸のストレスと聞いていたのとは異なり、とても興味深い。そして、キャリフォルニア・バークレー校のティモシー・ダウニングとソン・リーのネーチャーの論文による、トリミング効果の利用に描かれる幾何学的なリプログラミング機能を考えれば、門外漢にとっても俄然関心が沸き起こる基礎科学的な考察となる。

先月開けたブルゴーニュについて書き忘れていた。当地に赴いた saarweineさんに、20ユーロ以下という条件で購入を依頼したものである。蔵出しもの2006年産オーセイ・デュレスのレ・デュレス一級である。ドメーヌ・ロワ・フレーレは中国にも輸出している様でそれなりの規模であるようだが、ここではなによりも新樽の使用が目立つ。2006年物であるから大分熟れていても、そのタンニンの存在に気が付くことからすれば、敢えて強くかけているのだろう。それでもボーニュ周辺のピノノワールとしては繊細で果実風味もチェリー風ながらあまり嫌味は無かった。

なるほど瓶熟成をさせて蔵出ししている理由は、こうしたところにあり、それはそれで一つのやり方だろう。土壌面では決して関心はしなかったのだが、もう一本持ってきてもらったネゴシアンもののそれとは全く比較できないほど価値があった。やはりドメーヌ物で丁寧な仕事をしていなければブルゴーニュと言えども、ドイツのシュペートブルグンダーと比べて価値がある訳ではないことがこれで明らかになった。さて、シュペートブルグンダーとの直接の比較では、この価格で2006年産と言うことを考えれば、手練手管の分、今回はブルゴーニュの勝ちだろうか。それでも良い年の同じ価格のシュペートブルグンダーと比較すればそれだけの価値があるかどうかは微妙である。



参照:
驕らない、慎み深い主役 2007-11-28 | 生活
克服すべき倫理と回答 2007-06-12 | 数学・自然科学
早落としの村名ピノノワール 2013-08-01 | ワイン
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ニュートン物理に環境を知る

2011-12-24 | 数学・自然科学
ケムブリッジ大学図書館がニュートンの膨大な論文類をネット公開することになった。始まったばかりだが、数ヶ月中に出揃うようで、自然科学に興味ある者には見逃せないサイトとなる。

その四千ページの分量だけでなく、その自然科学における意味合いを考えるだけで、途轍もない資料とも思われる。

姪から子孫へと引き継がれて、古巣であったケムブリッジに寄贈され、その他の錬金術や神学の書物とともに集められているのがこの図書館であるようだ。

特に、ニュートン力学の基礎を形成する過程での数学的な試行錯誤の過程を追うことで、もしくはその思考過程の背後を覗くことで、この天才学者というよりも、我々が日常過ごしている世界のその環境を少しでも分りやすく理解できるようになるかもしれない。

トリニティーカレッジでの幾何の細かく書かれたノートは、丁度ライプニッツの微分のノートを見るような感じで、比較的容易に内容が理解できる。

居ながらにして、こうした恩恵に与れるのも、正しく大きな意味で自然科学のお陰なのである。



参照:
Newton Papers,
College Notebook by Isaac Newton (Cambridge Digital Library)
蜘蛛の巣と云う創造物 2006-04-21 | BLOG研究
序 トロージャンの不思議 2005-03-17 | 数学・自然科学
ゴットフリード・W・ライプニッツ 2004-11-18 | 数学・自然科学
ヨハネス・ケプラーのワイン樽 2004-11-17 | 数学・自然科学
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核廃棄物の無毒化の錬金術

2011-06-24 | 数学・自然科学
核廃棄物を無毒化できないか?もし可能ならば安全な原子力発電のもとでエネルギー政策が解決するかもしれない。無毒で安全な廃棄物ならばそれほど問題もなく、一度大気中にあふれた放射性物質も無毒ならば核は環境に必ずしも悪いものとはならない。

そうした研究に一つとしてEUの「ミラ」プロジェクトで日本や白ロシア、ロシアや米国からの研究者を交えて行われるように昨年決定した内容が報告されている。なるほど無毒化までに至ってはいないが、放射性核種の安定化と半減期の短縮が可能となるかもしれない。たとえば半減期二万四千年の同位体プルトニウム239を処理すると中性子を加え、僅か二年の半減期しか持たない核分裂生成物セシウム134と安定した同位体ルテニウム104が生じるというのである。永遠に放射能を発し続けると思われていた核廃棄物が、二年ごとに半減していくとなるとまるで夢のようだ。原子炉冷却材としても同時に使われるビスマスと鉛の核子に加速された陽子を当てることで、核反応から中性子が飛ぶ出す。使用済み核廃棄物から分けられた処理されるべきアクチノイド核種の核が中性子を受け取ったり核分裂したりして、中性子の放出でより小さな同位体となる。

この工程を核変異工程と呼び既に80年代にイタリアのノーベル賞学者カルロ・ルビアによって確立されたようだが、技術的には今日に至るまで非常に複雑な課題が残っているようである。

たとえば、最初に使用済み核燃料からアクチノイドを分離する作業において現在は99.9%のレヴェルだが99.99%まで高めることが目標だとこのEUプロジェクトの中核であるカールツルーヘの核廃棄研究所のアンドレアス・ガイストは語る。

プルトニウムの変異工程は確立されているのだが、それに性質の似ているアメリシウム、キュリウム、ネプトニウムなどは困難なのだという。全核廃棄物の僅か一パーセントがアクチノイド核種なのだが、またその九割方がプルトニウムということになっている。ウランより重いアルチノイドは、内部被曝すると、細胞増殖異常の骨、腎臓、肝臓、血液系の癌を引き起こすことで猛毒と知られているものである。

またカールツルーエ核研究所の研究者であり、ヘルムホルツ協会の地区長ヨアヒム・クネーベルは、冷却体自体が250度から450度の高熱であり、それを如何に冷やせるかが鍵であると見ていて、材料工学的にも核分裂が起こるその容器の鉄のコーティングなどで劣化を避ける必要があるとしている。

ドレスデンのロッセンドルフ研究所のアルノルト・ユングハンスは、高エネルギーを持つ電子を含む冷却材の問題で、中性子の放射時間と核のエネルギー量からの実験を繰り返しているようだ。

こうした問題が解決されると2014年から試験操業が始められて、2023年には実用化が予定されている。ベルギーのSCK-CEN研究所に設置されたこの装置は十億ユーロの投資で70メガワットの出力規模がある。しかし、そうして処理されるべき核廃棄物は、世界で毎年二十六万トン排出されて、毎年その量は加速されていて、そうした全世界の深刻な社会問題を一挙に解決するものではないようだ。



参照:
Die zauberhafte Entschärfung des Atommülls, Monika Etspüler, FAZ vom 22.6.2011
解体する原子炉が旨いのか 2011-06-23 | テクニック
開かれた議論のない技術大国 2011-06-20 | 文化一般
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前近代の取り込みは医学の発展

2011-03-02 | 数学・自然科学
先日の癌治療におけるその他の医術の使い方は、一般的に関心の強い医療の話であろう。その続きとして、ドイツ癌協会ヴェルナー・ホーヘンベルガー理事長へのインタヴュー記事が載っているので掻い摘んで紹介しておく。要するにエジプト大統領や故ゴルバチョフ夫人だけでなく世界の要人がなぜか合衆国でなくドイツに滞在して癌治療をするその臨床医療機関の大元締めの見解である。

ドイツ癌センターは、ハイデルベルク大学だけでなくケルンに於いても痛止め医療などの専門分野が最新の臨床技術の推進を行っているようだ。今回の西洋医学以外の医術の利用が統合的に癌センターなどの最新の治療方針として組み入れられるのには、フランクフルトなどでの本格的な研究実施の一方、まだ時間が必要であるとされるが、先ずは痛み止め治療として期待されていて、センターの癌治療として積極的に臨床を試みられるのが最も効率的であるとしている。その背景には、やはり如何わしい商売のねたにされる心配があるからで、藁をも掴む状態の患者などをそうした罠から救うことも重要な動機となっている。最悪の例は、訳の分からない医術が本来の癌治療と相互作用して副作用を引き起こすことである。それらの基本方針に関しても、既に紹介した新刊本に書いてある通りだと裏打ちする。

そこで定義されていた統合化された補助的な医療としての新機軸でもあると同時に予防医療であるとしているのも興味深い。質問としても早期発見の医療に関してはここでは触れられていないことを考えれば余計に注目を引く見解であろう。それどころか、癌治療の最先端を代表する立場として場合によっては手術をしないことも患者のためになると考える。知人に肺癌を全く切らない者が複数いる現実がそれを証明している。また、前回も紹介のあった乳癌治療の個別療法は今週末から始まるようで、そうした西洋医学の最先端の動きへの関心と同様にこうした新たな動きが捉えられているのである。

また、癌の治療には半年以上を掛けるべきではないとして、益々複雑化して特殊化する癌治療に一線を引くことを基本理念として、その患者の生活の質の低下や患者の社会的崩壊を招くような治療はすべきではないと、それを癌治療のガイドラインとしている。それ故に長期的な展望としても近代医学以外の医術を部分的にではなく全てを包み込む形で取り入れることが、西洋医学の大きなエポックになるだろうとして、それを欧州の発展とする。

友人のスポーツ医がインドに旅行中であるが、ヨガでも組んでいるのだろうか?禅などは、新旧キリスト教を内包するドイツでは特に盛んであり、こうしたところにもアジア文化の抱え込みには余念が無いのが近代ドイツ文化の特徴であろうか。



参照:
Seriöse Naturheilverfahren sollten salonfähig werden, Werner Hohenberger, FAZ vom 1.3.2011
癌治療に漢方を組み合わせる効用 2011-02-24 | 数学・自然科学
非人間的な近代と優しい新環境 2011-02-26 | アウトドーア・環境
ヒポクラテス『古い医術について』(前編) (壺中山紫庵)
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癌治療に漢方を組み合わせる効用

2011-02-24 | 数学・自然科学
一昨年亡くなった合衆国の遠縁の医師が1980年代前半に訪日した折、医療現場における東洋医学の情報を集めていた。そのときの印象から、近代医学と東洋医学の関係やそのあり方に興味をもっていたのだが、同時にその相関関係については明白なイメージを持てずに来た。しかし、その明快な回答が新聞の文化欄を飾っている。

筆者は、今週出版される新刊本を共著したエッセン東病院の医師で、乳癌などの専門医のようである。要するに癌の化学療法などと両立させるための総合的なオンコロジーとして自然治癒法や針や指圧やヨガ、薬草などの効用を捉えていく臨床医学である。

その基本になっているのは、乳癌などの新しい治療法、特に遺伝子の型に応じてホルモン療法や化学療法の効果や副作用を予め予測する方法やその他患者の各々に応じた最も効果のある療法を目指す医療現場の日常にある。その反面、1971年のリチャード・ニクソン大統領の「癌との戦い」宣言にも拘らず、2006年での癌死亡率は僅か18%低下しただけで、心肺系の64%、肺炎・インフルエンザの58%に比べるほどの成果は上がっておらず、ドイツにおいて女性の60%、男性の53%しか五年以上の癌生存率しか獲得していない事実がある。早期発見や治療への厖大な研究費用などに比べて、一部の患者グループにのみ効用があると限定されているのが癌治療であるとしている。つまり、乳癌においてはなるほど早期発見の効果は幾らかは上がっていても、既に遅いステージにおいては生存率は20%にしか至らない事で、大腸癌や前立腺癌の転移の段階においては過去四十年間治療実績は好転しておらず肺癌における10%においては沈黙せずにはおられないとする ― この一連の考え方は実に大切で、膨大な医療費に対早期発見費用を計算する公的健康保険制度や科学振興という営利ではない事業に対してであるからこそ、最も必要なのはその投資額に見合う経済的効率であるからだ。要するにあまり効果の無い早期発見の医療などは営利的な経済しか考えていないからではないかと疑惑が生じる。

それと平行して、「生存の可能性を高めるのはただ唯一、本人が置かれた厳しい状況に自ら反応できるか」であり、多くの末期癌患者などでも決して余命を楽しむためになにもしないということは無いのである。そうした近代医学では治療効果が疑わしい状況では余計に民間医療的な方策を主治医に隠れて行っている危険な一般例を挙げている。ヴィタミン剤やグレープフルーツなど本来の治療の効果を打ち消してしまう悪例や、誰もが見聞きしている如何わしい法外な価格のまやかし商品などである。同時に、新陳代謝活動においては、医薬よりも瞑想などの方法が効果があり、癌細胞の壊死に関わるコルティソール、免疫導引ツィトキーネなどに影響を与えるMBSR(Mindfulness based stress reduction)法などが心肺系だけでなく消化系の強化などを託しているように、総合的な見識が必要とされる。

それ故に、近代医学以外の療法をどのように組み合わせた治療法が可能であるかというのが今回の新刊であり新聞記事である。そこでは、そうした教科書外の効用を科学的に網羅することが肝要で、実際に中世以来のフォン・ビンゲンで有名な薬草の効果などが厖大なデーターベースとなって利用されていて、飽くまでも科学的な実証がその利用の基本となっている。それは、今世紀のはじめ頃から盛んになったハーヴァードのメディカルスクール、ニューヨークのスローンケッタリング記念センター、マヨー病院などの実践がドイツでのそれのお手本となっており、ハイデルベルクのドイツ癌センターにおいても既に四百種類以上の漢方薬がテストされて、多くは限定的な効果が確認されている。そしてそこから総合的な効用が導き出されるのだが、それにはまだまだ研究が必要となる。治療においては癌細胞のその伝播のメカニズムの方へと関心が移っているので、こうした漢方薬もそうした全体的な効用がより重要になっているというのである。

この記事を、乳癌で治療を行っている妻を持つ友人と手術をしない肺癌を化学治療している友人に知らせてやりたい。医師二人がVIDEOで語るように「近代医学は非人間的で、自然治癒法は人に易しい」という組み合わせであるようだ



参照:
Keine Tabus mehr im Kampf gegen Krebs, Gustav J.Dobos und Sherko Kümmel, FAZ vom 21.2.2011
Gemeinsam gegen Krebs“, Verlag Zabert Sandmann
ビール消費と癌予防効果 2006-06-07 | その他アルコール
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古典的医学研究の知

2007-08-24 | 数学・自然科学
心臓の鼓動が乱れる。心筋に異常をきたす。冠動脈が硬化し、血流に障害をきたし、虚血性の細胞壊死を起す心筋梗塞などが、我々素人には後天性の心臓病の代表格である。

そうした心臓病に対して、カテーテルを血管内に入れ、そこから造影剤を注入して、検査をして、更にその詰まった血管部分を風船で膨らまして、血流を回復させて、部分的な電位差や磁気差を生じさせたり、足場のようなものを設置して、再び梗塞しないようにする処置などがとられるようである。またその足場の中から、梗塞を防ぐ抗がん剤をおき抽出をさせるなどとあり、さらに効果的な特製の薬品がないのかなと詮索する。

大鉈を振るう処置として、閉じた血管にバイパスを通して、処置するバイパス手術が頻繁に行なわれていることも良く耳にする。その手術の意味の大きさは、誰でも判るのだが、その潜在的危険性とは別に、その処置の必要性が限られる事もなんとなく想像出来るのである。

最新の医学誌「THE LANCET」には、そのバイパス手術において、面白い現象が確認されたとする論文が発表されているらしい。ロンドンのロイヤル・ブロンプトン病院のヘンリー・パーセル医師の報告である。それは、手術前に腕の血流を何回も少なくとも30分間遮断することで手術による避けられない心臓の細胞の壊死を和らげることが出来ると言うものである。

ロンドン大学の薬理学者デーレック・イエーロンの報告は、60歳前後の男女の上腕を、手術直前に帯で〆ると、その試験者の半数は数分間の間隔をおいて、三回強くポンピングすることが見られ、その他半数は反応しなかったとされる。

トロピニンTと呼ばれる蛋白質の血液内濃度が、心臓内細胞の崩壊を示すようだが、術前と術後6から72時間のその濃度が測られる。そして、この腕の止血と言う変わった処方の比較研究報告が上記雑誌370号に掲載されていると言う。その処方による数値の上昇は通常の略半数以下とされているが、検査期間が短いので臨床上の経過としての観察結果とはなっていない。

そこでなんらかの反応が、その予め血流の中断と言う危険を知らせる信号から表れると予測されているが、それがどのような物質でどのようなメカニズムで発信されるかは判っていないと言う。恐らく、ホルモンに類したものとされるが、純粋に古典的な医学研究のように聞こえるので面白い。

同時にこうした生反応を聞いて、そのようなことならあり得そうだと思う者も少なくないかもしれない。そうした認識の方法は、グノーシス的かも道教的かも知れないが、「未知の知」はこうした古典的医学研究にもまだまだありそうだ。
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克服すべき倫理と回答

2007-06-12 | 数学・自然科学
生物医学部門の最先端の研究について述べられている。ミュンスターのマックスプランク研究所の分子生医学所ハンス・シェラー所長が最新の成果から研究の必要性を訴えている。

胚性幹(ES)細胞農場は必要無くなった、心配は要らない」と京大山中伸弥教授とMITのラドルフ・ジュニッシュ教授、コンラーロ・ヘックディンガー教授らの各々の最新の成果を紹介して、厳しい規制の中で成果を出し難いドイツの研究者のなすべきことを訴える。

つまり古くなったネズミの皮膚から胚細胞の状態へと戻す技術の驚くべき成果を指している。十ヶ月ほど前の発表が今しがた三種の細胞グループにおいて証明されたと言う。

更にネーチャーやセルステムセルのオンライン公表によれば、倫理的議論はあるものの、その精巧な進化した技術によって、その変遷と増大によって不可能とされる人間の胚細胞のコピーが近く可能となるとされる。

所長は、「これが、胚性幹細胞にとって代わるわけではないが、大変近づいており」、「こうした分化全能性(プラリポテンシー)を所持する細胞はあらゆる臓器の細胞を、その治療において万能となる」として、「現時点ではこうした機能を持った動物の細胞が疾患を和らげたり回復させるかは未知であるとされるが、充分に技術的に可能であるとされている」と発言する。

汚染された全能性細胞による癌の膨大を防ぐための技術的困難は、何れ克服出来ると言うことである。

Oct4、Sox2、c‐Myc、Klf4の遺伝子から皮膚が再生することがテストされて、 培養グラスにおいてさえ胚性幹細胞の遺伝要素を維持出来ることが示された。これで、プラリポテンシーの謎が解けたと言うことになるようだ。

これらは、他の成長に寄与する遺伝子の制御に置ける重要な鍵となっていると知られていたことを、日本の研究者たちは若いマウスの遺伝子を持って実証した。一年ほど前の研究成果では、部分的な胚性幹細胞が扱われていて、本物のコピーとはならなかったのだが、今回の成果によるとかなり目標に迫ったとしてヨアヒム・ミューラー・ユンク記者は記す。それを、iPS(体細胞からの多能性胚性幹細胞)と呼ぶようだが、今回の成果は様々な遺伝子を混合の中で正確に取捨選択していて、この四つの遺伝子が特に安定したものであった事を証明したことにあるようだ。

数日間をおいたあと、三週間で必要な活動域へと至り、再生への流れへと向ったと言う報告から、再プログラム化はゆっくりとした段階をもっていることが知れる。このプロセスは、古い皮膚に置ける遺伝的マーカーが書き換えられる行程であり、遺伝子の化学的な変遷を意味する。それどころか、二つの女性X染色体に一つにおいて、遺伝子全体の遮断がなされて分子生物学的かつ形態発生学的に胚性幹細胞と等しくなったことを言う。

こうした成果を受けて、シェーラー所長は、「人工授精における、90年代からのH1,H7,H9として知られる線維芽の培養が世界中で大きな成果を挙げている」ことをから、それでもドイツでの不安のもとは奇形の可能性に止まらずに、歴史的な背景が不安を強化していると見解を示す。

だからこそ今回の山中教授らの成果は、我々にとってその恐怖心を拭うものとして重要だとする。そして、細胞核が全ての臓器を司り形成して新たに再生させる事は、羊のドリーで見られたものであり、そこからその各々の細胞核での再生プログラムの機能が研究されてきたのであると説明する。そして今回、その中で何が万能細胞となるかが突き止められた。24種類の候補から山中教授が四つを取捨選択したのである。

今回使われたのはウイルスを持った細胞と癌細胞であったので、そのまま治療目的とはならないが、近いうちに他の可能性を持ってiPSが出来ると想像される。そこで、いつ、だれが、使えるものの培養に成功するだろうかとする答えは、少なくとも、法律的に縛られて、充分な線維芽を獲得出来ないドイツ国内では無いとする。

そして、人間の胚細胞を使った研究でこそ、将来的な分化全能性細胞への胚性幹細胞を不用とするような方法が生まれることが認知されるのを希望する。我々には頭脳も人材もあるので、今回の成果が人間の幹細胞での成果となるまで待つべきではないと訴える。



参照:韓国の大スターと子供達 [ テクニック ] / 2005-10-03
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ニタニタ顔のシナの学者

2007-01-07 | 数学・自然科学
中華人民共和国の学術研究投資額は、五年で倍増されて、終に日本を抜いて米国に続いて第二位となった。EUが、米国と中国の真ん中に位置している。ドイツは日本の半分しかない。

月着陸などの予定を計画して、量から質への技術王国を目指している。しかし、自然科学の対象は全域に渡っている事は言うまでも無い。

シナ人研究者数は、其々の分野での論文の数を見れば解るが、十年前の77%増となっている。その多くは欧米からの帰国者であって、2004年現在で92万人の研究者数は米国の103万人に次ぐ。そしてその一部の時代遅れの施設を、グロテスクなマス大学などと共に、質へと転換して行くという。そして多くの80年代のシナ人研究者はお払い箱となって去って行く。その七万人の内ほぼ五万人は既に首となっている。そして今後ますます成果主義の体制を採り、国家プロジェクトは自然科学へとシフトして行く。

そこでは少なくとも「サイエンス」か「ネイチュァー」に採り上げられていない研究者は用無しで、可能性は殆ど無い。つまり世界からシナ人を中心に研究者を呼び寄せたのである。もちろん、報酬は一部の例外を除くと外国と比較が出来ないが、紐育市大から戻ったツオン氏などは、「パトリアズム否シナの遺伝子学的豊富さを信じると理想的な研究地です」と語る。

そこで思い出さなければいけないのは、2011年には世界の有数大学になるとする国家主席フウ・ジンタオの出身校、エリート工科大学清華大の副総長が言うような「マオは昔の事で、今はシリコンヴァレー」の標語ならず、シナ人がこぼす「シナはまだ貧しくしくとも既に先進国よりも豊かである」と言う心情を聞き逃してはいけない。これは、中南米のエリート層が言うモットーと変わらない。つまり、一見消費社会の欲望がシナを今後も牽引するかのようにも見えるが、少なくとも日本やもしくはドイツとはその事情は異なるに違いない。つまり最終的に一国中華共産主義が 未 完 成 する可能性もありえるかもしれない。

もちろん、そこでは大都市の大気汚染も地方の砂漠化も科学将軍にとっては、つまり近代シナにとっては、関係無いと言う無頓着なことを耳にする一方、ドイツ中国共同科学センターでは新型風力発電開発のプロジェクトが大掛かりに進んでいる。

同紙面にその推測に並行するかのように、シナ人の肥満化の話題に触れていて、シナ人研究者が英医学誌で発表した「メタボリック・シンドローム」に、人民の19%が病んでいると言うのである。

そのように考えると五年で五倍に膨れ上がったシナ人による有名科学誌での投稿数は、今後どのような経過で推移して行くかは解らない。技術開発部門における報酬と研究活動は間違いなく何れシナが中心となって世界が回っていく事は間違いない。

すると、ドイツのような古の科学先進国は、研究員と教授の増員を昨年度アピールした様に、精神科学部門を強化して、来る基礎科学と科学理論分野の継承に弾みを付ける必要がある。

さもなければ、先日三人の中国人とフランス人によってお披露目された二頭の中華竜の化石のようなシナの自然科学者の暴走を抑える事が出来なくなる。それは、一つの頭はニタニタ顔の、もう一つは真面目な顔つきのシナの学者の顔なのである。シナ人学者の一般教養を知るものはその怪物の正体が判るだろう。



参照:
FAZ, Joahim Müller-Jung vom 27.12.2006
現況証拠をつき付ける [ マスメディア批評 ] / 2006-12-17
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漲るリビドー感覚

2007-01-02 | 数学・自然科学
承前)明けぬのは、何か?それは、真剣な問題である。

主人公レーファークーンの家庭は、ザクセンの田舎者かシュマルカーディッシュの家系とされる。それが意味するものは、ルターの旗本と考えても良いかもしれない。その生き方は、ルターの記した1537年の文章が基本となっている。その内容は改めて扱うべきだろう。

さて、主人公の父親は、雪の夜など豚の革張りの聖書に挟まれたダヴィット・フォン・シュウァイニッツの格言を読み、自然科学の「研究」を趣味とする。そして、子供や妻を背に腰掛けて海洋動物などの図鑑の色刷りの絵に没頭しつつ、時折その不思議さを子供たちに説明するのである。

蝶などが保護色でもなく警告色をも強調していないのはなぜか?そして四角い大きな天眼鏡を子供たちに渡して、観察させるのである。そしてその自然の妙に父親は、創造主を感じて、貝殻の不思議から人間の骨格によって守られるものに考えが及ぶ。

そして子供たちに語りかける。「君達の肘とか肋とかを触ってみると、その 中 に 肉とか筋肉とかを支える骨格があるよね。それを君達は抱えているのだね。云うなれば、それが君達を抱き支えているのだ。」

そして「それがだね。この生き物はだ、その頑強さを外へと出して、それを骨格としてではなく住処としている。それは外身であって中身でないのだ。それが彼らの美しさなのだ。」と続ける。

子供たちは、この父親のミスティックなもしくは予感に満ちた半ミスティックな思索と洞察に笑いを堪える。実際に中世の媚薬や麻薬は貝殻に入れられて、舎利に纏わる神器はこうした貝殻で出来ている事を語り、錬金術や魔女の厨房も晩餐をも並列して、恩恵や美、毒や魔術、妖術や神技を二項化していく。

物理数学的なカオス・フラクタルの解析や 発 見 もただの構造化された自らの言葉による表現でしかないと悟っている。不思議な文字を発見して暗号を解読しようとして、土柱を研究して、水滴を弄るアドリアンの父親をみて、子供ながら語り手は、それが解った述懐する。

語り手は更に、「宗教改革と云うものは我々の自由な思索へと、スコラ哲学を橋渡ししたのとぐらい同じぐらいに、教会分裂までへと深く溯り、忌々しい教育への情熱をも橋渡ししたのである」と論ずる。

さて、それではややもするとミスティックな観想とそれを導く観察がなぜにまたこのようにエロスに満ち溢れているのか?

それは、あたかも焼き鳥の足に肉がついて、しゃぶりついてもそこがこそげない苛立ちなのである。幾ら求めても見えない創造主。飽くなき自然科学の探求への欲望。ユング流に云えば、リビドーなるもの全ては肉欲と変わらないのである。(終わり)
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サラマンダーに遭遇

2006-03-27 | 数学・自然科学
本日、森を歩いていてサラマンダーを見つけた。脊椎動物の両生類で、これに初めて遭遇。イモリの仲間である。日本のオオサンショウウオが棲息しているのは、子供の頃釣り上げて知っているのだが、欧州でサラマンダーを見るのは初めてである。10人ほどの同行者も初めての様である。30メートルほど離れて同様の二匹目のサラマンダーを発見。詳しくは、調べて見なければいけない。

両生類と言う事で、鱗の無い皮膚は湿って呼吸しているらしい。森の湿った場所に生息する。何よりも有名なのは、ハリー・ポッターでも登場するらしいが、往々にしてマントルピースに籠めた薪から飛び出してくる事から、火との繋がりの神話のようだ。

「全ての物は毒である。毒のない物はない。あるのは適量である。」の名言で有名な毒物学の祖で錬金術のパラセルススは、この「サラマンダーを火の要素」と呼んだ。

昔これの皮で作った不燃の外套を中国で見つけたとあるが、実際は石綿の織物だった様である。因みにドイツでは靴屋の登録商標として有名。
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魔法の方陣を巡って 

2005-12-25 | 数学・自然科学
数独が独逸で流行っている。今年の春ごろからの傾向であるようだ。余り興味が湧かなかったのは、ロウティーンの頃に買った二冊の専門書の内の一冊が魔法陣の本であった個人的な思いがあったからなのである。改めてこれについて話題になったので、その現象や作り方の解説を読んでみた。

何といっても気になるのが、所謂ラテン・ギリシャ等の方陣で、18世紀の大数学者オイラーが提出した仮説である。最も上手に説明しているのが、チェスの駒を色分けして(将棋でも構わない)説明してある米数学協会のサイトである。

nxnのn^2個に分かれた正方形のマス目の中に、n個の列とn個の段にn種類の連隊とn種類の階級を配置する。そして、同じ列と段に同じ連隊が重複しないように、また連合隊の階級が重複しないように並べて行く。6連合国6階級の駒からは、所属や階級が重なる事無しに条件を満たす新たな連隊を構成出来ない事を、この大数学者が発見した。

要するに6x6、10x10や16x16、18x18では不可能で、即ちk=4n+2では条件を満たさないとの仮説を提示した。この仮説は、1901年に初めてその一部条件での不可が証明されて、188年後の1959年になって今度は反対にn=10の場合の存在が確認されて、n=6以外条件での仮説公式が自体が否定された。

オイラーは、所謂グレコ・ラテン方陣を頭の片隅に入れていたようである。1960年当初にフランスで休暇を過ごした米国の数学者が、これを面白く説明している。フランスFとアルジェリアAの三人づつの外交団が其々三組に分かれて、其々一組に一人の仲介役を入れて三人一組が三組、三箇所の目的地に行く計画を立てるというものである。これを組み合わせて、どの外交官も三つの目的地tに其々違った三人の仲介者mと出かける事になる。

    F1    F2      F3
   ----------------------
A1 | t1 m1   t2 m2   t3 m3
A2 | t2 m3   t3 m1   t1 m2
A3 | t3 m2   t1 m3   t2 m1


同じような設定は、n=2とした場合不可能である。違う目的地に同じ仲介者と行かざらなくなるので条件を満たさないからだ。さて、このような条件を満たす、其々の属性が明確に定義されているものをラテン方陣として措こう。y軸とx軸が90度に交わる揺るぎ無い空間を想像しても良い。同様な説明にトランプのカードを使うものがある。キングやクイーンなどと独立して、ダイヤとかハートが存在するのでこれを同じように独立した属性として扱う事が出来る。

ここで、n=10とした時の解法となった基本的な考え方を参考に見よう。其れによると、10^2のマス目に00-99までの番号を以下の規則に従って置いて行くというのである。

1、 其々の列には、十桁の位の数字が各々唯一つになるように置いて行く
2、 其々の段には、十桁の位の数字が各々唯一つになるように置いて行く
3、 其々の列には、一桁の位の数字が各々唯一つになるように置いて行く
4、 其々の段には、一桁の位の数字が各々唯一つになるように置いて行く

こうする事によって、其々の列と段に00-99の数字から唯一の数字しか表れない事が保証される。この方法は、十桁と一桁を其々ギリシャ文字とローマ文字を当てはめていったグレコ・ラテン方陣の名前の由来にも相当する。

さてここでもう一度、オイラーが魔法陣にも興味を持っていた様でなので顧みてみる。最初に少し触れたが、nxnのn^2通りのマス目に埋められた数字がどの列を足してもどの段の数字を加算しても同じ数字になるような方陣を魔方陣と言う。ここまで述べてきた事柄で直感が働くかもしれないが、上の二つの属性に対して其々に違う値を与えて、加算すれば魔方陣となる。具体的にいえば、ダイヤに4、ハートに2、キングに13、クイーンに12などの値を適当に其々に与えて見れば良い。考え方は他にも存在するが最もこれが単純な様だ。

こうして作る事が出来る方陣のシステムが、二つのラテン方陣を合わせた所謂直交するグレコ・ラテン方陣であって、もちろんこれらの考え方はプランニングなどに使われており、そのn=10の可能性の組み合わせが群に別けても未だにクレーコンピュターで20時間!も掛けて計算されているというから驚きである。

個人的に懐かしい魔法陣の作り方に再会する切っ掛けとなった数独も、流行る以前から中国人がそれを算出するソフトを開発していたとして苦情を申し立てている。子供の頃には、その切っ掛けすら摑めなかったのを実に悔しいと思う半面、Recherches sur une nouvelle espèce de quarrés magiquesとして1782年にこの問題を論文に出しているオイラーが若き日に解いたバーゼル問題などを思うと、その数学的直観力には当然の事ながら只驚愕するしかないのである。

レオンハルト・オイラーはバーゼルのリーエンで1707年に生まれ、既に幼少の頃にベルヌーイなどに見出された。この師と共に1727年には女帝エカチェリーナ1世のぺテルスブルクで研究に勤しんでいる。1741年から1766年までは、ベルリンでフリードリッヒ大王のアカデミーに属していたが、その後1783年の死までぺテルスブルクに戻り、失明にも関わらず重要な論文を次々と纏め上げている。
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ノーベルドイツ時計親方賞

2005-10-07 | 数学・自然科学
先日のノーベル賞の発表を見ると、いつもながら上手に授与しているのが分かる。物理学賞なども、一挙にレーザー光線を使った量子光学のトリオに光を当てている。トリオといっても其々が関連した研究で違う分野で成果を挙げているようで、何となく小俯瞰図を見る様になっている。

レーザ光線の黎明期から、その物の技術開発の事情があるにせよ、この分野での基礎作りをしたハーバードのロイ・グローバー教授の半分の受賞に輝く業績もさることながら、緻密な実験によって成果を出していったボールダーのジョン・ホール教授などの業績も四分の一として評価されている。

レーザー光線を使った量子力学で言う光の周波数スペクトルを、半透明の鏡を使って入射光のコピーとを一絡げにして、フェムトセカンド(1fs = 10^ -15s)間の二周期以下の光のパルスの列を見て、量子効果を伴った干渉を得る事が出来る。これを時間を横軸とする光の減衰モデルから周波数を横軸とするような色のスペクトルにフーリエ変換すると、古典的な其れやレーザー光線で得られるスペクトルとは違う不確定で鋭角な稜線が現れる。

こうして分析出来る事で、初めて三人目の同じく四分の一の名誉に輝いたミュンヘンのテオドール・ヘンツュ教授の最も正確な時間の計測が可能になった。その正確さは、原子時計の1000倍の精度になるという。それによって、1983年からは1メートルは、二億九千九百七十九万二千四百五十八分秒に光が通過する長さと定められた。

ヘンツュ教授は、ハイデルベルク大で水素の所謂、単陽子のレーザースペクトル分析からこの畠に入って、現代の時計の巨匠となったようである。それほどの精度の時計が日常の生活には必要ないといえば、間違えで、現実に車のナヴィゲーションなどはこのお陰で可能となっていると言う。ご多分に漏れず16年間ほどはスタンフォードで研究活動をしていたらしいが、ミュンヘンのマックスプランク研究所のディレクターとしてのポストに迎えらて帰国したらしい。

現在63歳の教授は、「米国では短期の研究費しか出ないので、こちらでの研究体制の方が良い」と珍しい発言をする。現在、量子学研究所には189人の研究スタッフが9つの専門分野に従事している。ここで博士号を採ったMITのヴォルフガング・ケッテレ教授は、同じくハイデルベルクからミュンヘン工科大へ移り、後にここからMIT研究スタッフとなって、若干44歳時には「ボーズ・アインシュタイン凝縮」をレーザー光線を使って導いた新説で、2001年のノーベル・物理学賞に輝いた。三分の一の受賞であった。

話題は外れたが、量子物理畠でも理論と実験の乖離が進んでいるのが確認出来て、このような分け合った授与の仕方がスタンダードになって来ている理由が分かる。
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交差する実験予測と命題

2005-08-13 | 数学・自然科学
独日協会へハイデルベルク大学医学部内科から論文作成の為の生体実験協力者を探している旨の連絡があった。実験の内容を詳しく見て行く。

最近比較的話題になっている薬剤代謝の遺伝子別研究を、既に市販されている「カビ防止剤」を使って行うようである。遺伝子により肝臓で供給される酵素に差があるので、薬剤を代謝する能力が人種によって大きく異なる事象を言う。この酵素の種類によっては、人種差が大きい。これを、薬品を投与する事で、代謝されて血液に集積される量や尿への排出を調べると、投薬の効果の差が推測出来るという。その資料をもとに其々の試験者の遺伝子型を詳しく調べる事で、酵素の差の遺伝子別の特性が現れるという研究であるようだ。博士論文のために企画されたようだが、非商業的といっても製薬会社には貴重な資料となるであろう。少なくとも手元の実験計画書抜粋では、この全く違う命題の実験意図が分からなかった。遺伝子調査の結果も知らされないというのも非常に疑問に思われる。

さて酵素と聞くと一般的にはアルコール代謝酵素を思い出し、大酒飲みは必要も無いのに事改めて自分の代謝能力を知りたいと願う。アルコールを飲んで肝臓で、チトクロームP450 (CPY2E1)酵素の助けでアセトアルデビドとなり、更にこれが酵素で酢酸となりクエン酸を経て炭酸ガスと水に分解され代謝されるとなっている。この酵素が十分生成出来ないのは、モンゴロイド系の日本人等の遺伝子に特有の現象であるのは周知の通りである。

さてチトクロームP450 ファミリーのCPY2C19ならびにCPY2C9と云うのが今回重要なスクリーニング要素となっている。つまりこれらの分布特性が顕著に現れるモンゴロイド系は貴重な試体となる。前者などはイタリア人には欠けているなど民族的特長もあるようだ。遺伝子染色体クロモゾモでは10q24と云われるものらしい。更に面白いのは、アルコールを飲みつけたり、飲みすぎると血中のエタノールにこれら酵素が総動員して代謝に働くようになるので、酒飲みには薬が効かないと云うようになるらしい。そうなると、薬物が代謝されないから薬物の血中濃度に現れる。

この薬が効かない、効き過ぎると云うのが投薬上重要な要素で、遺伝子型を簡易に認定する試薬などが開発されて、薬学上の適量滴定が出来るように見込まれている。経済効果は、投薬上の医療ミスを減少させる事にもなる。

さて、上の実験参加への要綱を詳しくなぞると、拘束時間の長さや運転の禁止、グレープフルーツジュースやコーヒーの禁止、日光浴禁止などの制限、最低65回採血に対して、490ユーロと謝礼は低い。学生相手にも見付からなかったのだろうか?倍の報酬ならば考えてみようかと思ったが、飲酒の制限や常習飲酒で事前判定で落とされそうである。

そして薬品自体が、黴の細胞膜形成を抑えるため日和見感染等の免疫系の症状である対カンディオゼ(Candida)などに効用がある。このようなものを摂取すると必要な時に効かなくなる可能性は無いのだろうか?またこれら酵素の働きは、向精神薬の効果などにも影響するという。

健康に留意している方!ハイデルベルクで二泊五食付きで、大学病院で事前健康診断受けれます。ハーブ茶も期間中飲む事が出来ます。協力希望者の女性の方には、影響が不明の妊娠を避けるために期間中に二つの有効な避妊方法も指導して下さるそうです。
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イナゴの大群-FAZを読んで

2005-05-05 | 数学・自然科学
イナゴの記事が、同じ日に三件もフランクフルター・アルゲマイネ新聞に掲載されている。度々ネタやアイデアを頂戴しているが、今回は「新聞を読んでとして」批評としたい。何故ならば構成、視点など遊び精神と批判精神に満ちていて、これに何一つ付け加える必要がないからである。ここ数ヶ月の紙面の傾向から、保守系高級紙として主要読者の経済人に対する配慮も見えて、逆に編集者の 本 気 も伺われる。お題は、「与党社会民主党首ミュンタフェリンクのイナゴ発言」である。氏曰く、


「投資家の幾ばくかは、彼らがその仕事を破壊する労働者についての配慮が無い。彼らは、無名で顔も無く、イナゴの大群のように企業に襲い掛かる。草原を裸に食べ尽くし、移動する。」



こうしてアルフォンス・カイザー記者は、イナゴ・バッタ専門家ペーター・デッツェル氏にインタヴューする。

イナゴとはそれ程の被害を与えているのでしょうか?:「最近は全くですが、戦後の猛暑の時とかはありましたです。ジャガイモ畑を荒らしたりですね。南シベリアや近東などでは、*聖書の通りです。」

聖書の災いは、我々に何らかの意味を持っているのですか?:「いいえ、嘗て孵化の巣だったルーマニアやブルガリアが肥やされてからは、大群が寄せる事はないですね。」

否定的なイメージと言うのは克服していると言う事でしょうか?:「その通りです。寧ろエコの観点から重要な要素です。沢山のイナゴがいれば、それだけの鳥がやって来て自然淘汰します。」

つまり、十分な生育環境があれば蔓延すると言う事ですが:「仰るとおり、餌が減れば、イナゴは何でも食べるようになる。人と一緒でね。菜食が肉食になってですよ。餌食の植物が減るとね、何でも食い尽くして増殖するんですわ。」

何でもと言ってもですよ:「殆んど何でもです。二種類いて、肉食性のものと、菜食性のもの。後者は見境がないですね。木の根まで食い尽くしますがな。想像すれば分かりますが、栄養の少ないものまで食べると自重がついて、それでぶくぶくと。」

去年の北アフリカの被害でも:「そうですよ。これにやられると生態系が崩れて、モノカルチャーになってしまって、昔は草原でも今は単作です。」

通常のイナゴの生態系での役割は?:「たんぱく質豊富ですから、多くの鳥がこれを餌にしてますね。二つ蜘蛛の巣があれば、一つにはこれが引っかかってますわ。哺乳類でも、そらハリネズミなんかはこれをよう食べますよ。逆にコロラド甲虫なんかは彼らがやってくれますです。食物連鎖の重要な要素ですな。」

これがいなくなるとしたら:「それでも何とかなります。代用は簡単ですね。」

それにしては、簡単に食用にされますね。飛ぶでしょ。:「はあ、でもね護らないんですね。攻撃的でないんでね。ただ略奪に生きてまして、それで、よく五センチのバッタに締め付けられてますわね。」

ハリネズミにやられるとは一体?:「ハリネズミは、哺乳動物の常温夜行性でしょ。イナゴは変温動物だから、夜は体温が下がってですね。昆虫は、草の枝に確りと引っ付いて、食べられない事を願っているだけでね。ほら、ハリネズミはそれたんまりです。」

イナゴが経済的なバランスを齎しているとして、イナゴのお陰で事業が成り立っていらっしゃるのでしょうか?:「いいえ、イナゴだけでは食っていけませんが、私どもの事業にとっては重要です。土地利用に関する貴重な情報を与えてくれます。」

農家が土地を肥やさずに草を生やすと、イナゴが押し寄せる:「仰る通り。未耕作地についてイナゴを観察すると農家がどれ程肥やしたか、それどころか遡って分かりますね。」

イナゴは、保護されている:「ドイツの90種類のイナゴで、幾つかは消滅して、幾つかは保護されてます。」

そうする事でどういう効果を齎します?:「土地計画で、土地や気候、動物の生息などを確りと定義出来ます。言うなれば、これが動植物学や生態系の研究の必要性ですよ。」

そのための企業ですか?:「勿論、公共的なですが。道路工事などの鑑定等を事業認可のためにするわけですね。」

イナゴが公共事業を変えたとか?:「ううん、避けられたらですが、新幹線や国道の事業では難しいですね。ただ、それに対して補償の処置はしなければいけません。」

ドイツでは、どこでもっともイナゴが見付かりますか?:「私の仕事机でしょ。虫かご一杯ですよ。それを除けば、食糧の無い所ほど、種類が豊富です。中山の高原など、北ドイツよりも南。スカンジナヴィアには15から20種類しか、ドイツは90種、イタリアは100種、はは、暖かければそっちの方へイナゴは行きますよ。」


愉しんで読めるように意図されているので、特別に正確に全部を訳す必要もあるまい。しかし意訳せずとも、読者が解釈するものだろう。

この記事の直ぐ上に掲載されている本記事は、ザウワーランド出身のカソリックのフランツ・ミンターフェーリンク氏が旧約聖書の言葉や響きや意味を良く理解してこのイナゴを使っていると説明している。つまり*出エジプト記(モーゼの書第二巻)10章の3-20節である。そしてカール・マルクスの 古 い 書 物 を紐解いて聖書仕立てのパロディーに仕上げている。

有名高級紙でも全く詰まらない論評を見かけた中で、開かれた形で問いかける記事の形式など秀逸である。勿論、受け取る読者によっては、真意が良く伝わらないかもしれない。しかし、選挙戦を前に啓示したトップ政治家の挑発としてだけで終わらせていない。このような高尚な話題を本当に問うて行こうと思えば、十分に地均しをする必要があるという事ではないだろうか。

意気盛んなこの政治家の顔写真を見ながら、ベットに行くと、カフカの変転ではないがイナゴになった夢を見そうである。



参照:資本主義再考-モーゼとアロン(3) [ 歴史・時事 ] / 2005-05-04
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序 トロージャンの不思議

2005-03-17 | 数学・自然科学
トロージャンとは、ギリシャ神話に描かれる小アジアの北西部(現在のトルコの位置)にあったトロヤ国の人や有名な戦士を言う。ホメロスのイリアスとオディセイに描かれていたトロヤの遺跡は、1870年に考古学者ハインリッヒ・シュリーマンが発見するまでは実在が疑われていた。神話でも考古学でもコンピューターヴィールスでもない、天体の不思議の話題である。

土星の衛星探査機カッシーニから発射されたホイヘンスが衛星タイタンに着陸した。ホイヘンスから膨大な資料が送られて、二月ほど経つ。ESAのデータ解析は今後を待つとして、土星の謎と言われるのが有名なワッカである。それどころかこの間、更に三つの月状の衛星がリストに加わっている。2004年の10月に見つかった小遊星ポリィデウスがこのトロージャンに当てはまる。この概念は、ハイデルベルクの天文学者マックス・ヴォルフによって使われるようになって、これによって小さな天体を探索することが出来るようになったと言う。写真撮影の比較から1906年に、木星の軌道に見つけた116KM径の小遊星アキレスが太陽を中心に60度の角で存在する事を示した。300年前のケプラーの観測を髣髴させる話である。

天体物理では、これをトリノ出身フランスの数学家ジュセフ・ルイ・ラグランジェ(1736-1813)の名前を付けて五つの点が定められている。こうして万有引力の場も流体や量子の系の様に扱われる。ここでは、なんでもないアイザック・ニュートンの17世紀の有名な物理学が基本となっている。重要なその第二法則をここで確認すると、「物体の運動の変化は、その物体に及ぼされる外力に比例し、その力の方向におこる。」となる。これを批判的に位置と運動を同時に扱えるようにラグランジェ博士がフリードリッヒ大王の命でベルリンで纏めた表記方法を、ラグランジェ・システムと先ずしておく。そしてこれを天体に当てはめると、二つの比較的大きな質量の惑星の軌道から、小さな質量の小遊星が在り得るべき位置が自ずと定まってくる。

さて土星の不思議は、1684年に天文学者カッシーニよって発見された月テティスに始まる。これと土星が独自にトロージャンらしき小遊星を有しており、それが太陽を中心とした土星本体の軌道と関係なく存在しているということが分かった。1981年にそれが発見されてから、昨年その月の小遊星の一つテレストが観測され、これがトロージャンとして確認された。また他の衛星ディオーネには、ヘレナと名付けられたトロージャンが少なくとも一つ存在する事が発見されている。極めつけは月ポリィデウセスで、これには定められた位置を外れて行き来するトロージャンが存在するというのだ。

数学者ラグランジェの天体への興味ではないが、このような天体の不思議は自らが観測しなくとも万人に大きな関心を齎す。天文学者でも物理学者でなくても関心が自然と湧く事象ではないだろうか。さて、これを工学家や経済学者が使うような定式でなくて、17世紀のニュートン物理を基本に18世紀末のラグランジェの発想を追って行くとどうなるだろう。個人的な思考の飛躍を科学史の中で静的に捉えるのではなくて、発想の展開や飛躍を追体験する事で何かが見えてくるのではなかろうか。これを短く簡易に纏めて考察する事は決して容易ではないが、面白いと思うので試してみたい。
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