名古屋から発するブログつぶて・凡人のひとりごと

身の回り、世間のできごとをを日記風に記す(紙つぶてならぬブログつぶて)。

再び陽子線がん治療施設について

2009-11-22 19:00:52 | Weblog
2009.11.22
 名古屋市が北区の複合医療施設「クオリティライフ21城北」に計画している「陽子線がん治療施設」は、2012年に開設する予定で既に日立製作所に総額245億円で契約が済んでおり、今月には着工予定だった。大都市とはいえ、名古屋市にとって大きなプロジェクトである。
 ところが、先のブログ(9月19日付け)でも書いたように、河村市長がこの施設の再検討を打ち出したために、この施設の関係者はその是非をめぐって、てんやわんやの大騒ぎである。
 そこで中日新聞は、その是非について今月10日から20日にかけて10人の識者の意見を掲載した。10人の内訳は、医師5人、行政2人、市会議員2人、患者代表1人というものである。
 医師5人のうち、今回中日新聞が取り上げたのは賛成派1人、どちらかといえば反対派が4人である。これは中日新聞の意図なのか、結果としてそうなったのか、医師として単純に賛成だけとは言いにくかったからなのか不明である。
 名古屋市立大学准教授で放射線医の荻野浩幸氏は、狙い撃ちで患部に効き、副作用がおきにくい治療であり、治療の選択肢をひろげるという理由などから賛成の立場である。負担の問題は言及していない。
 一方、県がんセンター総長の二村雄次氏、名古屋大准教授でがん薬物療法専門医の安藤雄一氏、愛知学院大教授で日本医学歯学情報機構事務局長の夏目長門氏、名古屋学芸大栄養科学科長で公衆衛生医の山中克巳氏らは、陽子線がん治療についての過大評価であり、適用患者も少ない、救急医療など優先すべき医療がある、採算性は全く期待できない、名古屋市だけが負担してつくるべきものかなどの疑問が次々となげかけられている。
 腎臓がんの手術体験のある伊藤和直さんは手術の苦痛から解放される機器が地元にあることを訴え、自民党市議で北区選出の渡辺義郎氏は命を救えるなら赤字など問題にすべきでないとする一方、共産党市議の江上博之氏は負担を考えなければ誰しも欲しい施設であるが、245億円の投資と毎年20億円の事実上の赤字負担を考えると名古屋市が単独で建設すべきかどうかと疑問符を投げかける。
 行政側の愛知県健康対策課課長補佐で重粒子線施設誘致担当の稲葉明穂氏は、陽子線より重粒子線の長所を掲げてその実現を強調する。いまさら陽子線施設は迷惑だと言わんばかりである。一方、名古屋市病院局長の上田龍三氏は、当事者の一人として推進の立場から年6~7億円の赤字なら市民の理解は得られるとしている。
 10人による紙上討論は終えたが、こうしてみると「陽子線がん治療」の医療としての効果は必ずしも高いとは思えなくなった。先端医療であることは理解できるが、大都市とはいえ地方の一都市に過ぎない名古屋市が巨費を投じてまでつくるべきものかどうかは確かに疑問である。街おこしのような気分で取り上げるような問題では決してない。
 この問題はさらに議論を深めるべきである。

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