2016.5.31(火)
参院選をあと1か月余りに迎えて、いよいよ安倍首相の政治的思惑が表に出てきた。来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを安倍首相がどうするかはメディアも疑心暗鬼であった。
それは民主党政権から自民党政権への移行に際しての安倍氏と野田氏との固い約束(2015年10月に10%に引き上げること)であったからである。しかし、それを実行することが不利と判断するや、2014年12月、突然衆議院を解散し、自公議員の絶対多数を獲得して、来年(2017年4月)まで増税を延期した経緯がある。
そのとき安倍首相は、今度こそは何があろうと絶対10%への引き上げを行う。首相である自分が言っているのだから絶対間違いない、という趣旨のことを言って大見得を切っていたことはだれもが記憶していることだ。
しかし、アベノミクスに迷いが出来たのか、一時大幅な円安も一転円高に振れ始め、株価も低下傾向にぶれてきた。賃上げも鈍り、円安の副作用で上がった食品などの物価は上がったままで、上がるはずの消費は伸びていない。ここに至って税率の引き上げはマイナス成長に陥るという懸念が大きくなった。アベノミクスの破たんである。
こうした事態を予想してか、いつともなく10%への引き上げに条件が付き始めた。それは、リーマンショックのような世界規模の経済危機、あるいは東日本大震災級の災害があれば引き上げの延期はありうるに変わってきた。
ここで安倍首相の政治的思惑が首をもたげた。この時期を逃しては参院選挙に勝てない。ひいては念願の憲法改定も困難になる。そして5月26日~27日に開催された主要国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を利用して、「世界経済はリーマンショック前に似ている」との現状判断を理由にして、増税延期を決意・表明した。
これに対して海外メディアなどは一斉に批判的な論調で報じている。フランスのル・モンド紙などは、「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」との専門家の分析を紹介したうえ、首相が提唱した財政出動での協調については、「メンバー国全ての同意は得られなかった」と強調している、という。
しかし、自民党内の麻生財務大臣も延期なら解散すべしといっていたのに安倍氏に口説かれ、谷垣禎一幹事長などは、党内を安倍氏の考えでまとめるのが自分の役目だとさえ言っている。そして公明党も同調している。
国民の見方はどうかというと、税金は安い方がいいという感覚は誰しもが抱く願いである。野党の民進党も共産党その他の党も、引き上げに延期あるいはそもそも消費税などない方がよいと言っている。民進党は2か年の延期法案を提出しているほどである。
安倍首相はまさにここに目を付けた。消費者だけでなく、中小企業者などは税率が上がることに伴う手間暇のことも、(さらに公明党が言っている制限税率というややこしいシステムのことも)考えるだけで気が重いものである。
来年春に迫っていた税率の変更が2年半も伸びることは多くの国民にとっては歓迎すべきことなのであろう。安倍首相の人気はG7を無事終えたことや、オバマ米大統領の広島訪問を実現させるなどで一気に上がっている。そのうえ、いやな消費税引き上げの延期までやってくれるのだからこんなうれしいことはない。
しかしこの陰には、9条の改定を究極の狙いとする憲法改定、安全保障法制の実効ある運用、原発再稼働などわれら一般庶民をおびやかす闇が潜んでいることに国民が気づくときが来るのであろうか。
国の財政基盤の一つである税制を政党の我田引水に利用するなど本来あってはならないことである。国の借金がGDPの倍以上、一千兆円を超えている国などどこにもない。消費税も本来は、将来に禍根を残さないよう、財政のプライマリーバランス維持のために使われなければならないものである。福祉を充実するためとか子育て支援のために消費税を充当するからと聞こえの良いことに騙されて税率の引き上げにも納得してきたのに、一政党の思惑に使うなどもってのほかである。
参院選をあと1か月余りに迎えて、いよいよ安倍首相の政治的思惑が表に出てきた。来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを安倍首相がどうするかはメディアも疑心暗鬼であった。
それは民主党政権から自民党政権への移行に際しての安倍氏と野田氏との固い約束(2015年10月に10%に引き上げること)であったからである。しかし、それを実行することが不利と判断するや、2014年12月、突然衆議院を解散し、自公議員の絶対多数を獲得して、来年(2017年4月)まで増税を延期した経緯がある。
そのとき安倍首相は、今度こそは何があろうと絶対10%への引き上げを行う。首相である自分が言っているのだから絶対間違いない、という趣旨のことを言って大見得を切っていたことはだれもが記憶していることだ。
しかし、アベノミクスに迷いが出来たのか、一時大幅な円安も一転円高に振れ始め、株価も低下傾向にぶれてきた。賃上げも鈍り、円安の副作用で上がった食品などの物価は上がったままで、上がるはずの消費は伸びていない。ここに至って税率の引き上げはマイナス成長に陥るという懸念が大きくなった。アベノミクスの破たんである。
こうした事態を予想してか、いつともなく10%への引き上げに条件が付き始めた。それは、リーマンショックのような世界規模の経済危機、あるいは東日本大震災級の災害があれば引き上げの延期はありうるに変わってきた。
ここで安倍首相の政治的思惑が首をもたげた。この時期を逃しては参院選挙に勝てない。ひいては念願の憲法改定も困難になる。そして5月26日~27日に開催された主要国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を利用して、「世界経済はリーマンショック前に似ている」との現状判断を理由にして、増税延期を決意・表明した。
これに対して海外メディアなどは一斉に批判的な論調で報じている。フランスのル・モンド紙などは、「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」との専門家の分析を紹介したうえ、首相が提唱した財政出動での協調については、「メンバー国全ての同意は得られなかった」と強調している、という。
しかし、自民党内の麻生財務大臣も延期なら解散すべしといっていたのに安倍氏に口説かれ、谷垣禎一幹事長などは、党内を安倍氏の考えでまとめるのが自分の役目だとさえ言っている。そして公明党も同調している。
国民の見方はどうかというと、税金は安い方がいいという感覚は誰しもが抱く願いである。野党の民進党も共産党その他の党も、引き上げに延期あるいはそもそも消費税などない方がよいと言っている。民進党は2か年の延期法案を提出しているほどである。
安倍首相はまさにここに目を付けた。消費者だけでなく、中小企業者などは税率が上がることに伴う手間暇のことも、(さらに公明党が言っている制限税率というややこしいシステムのことも)考えるだけで気が重いものである。
来年春に迫っていた税率の変更が2年半も伸びることは多くの国民にとっては歓迎すべきことなのであろう。安倍首相の人気はG7を無事終えたことや、オバマ米大統領の広島訪問を実現させるなどで一気に上がっている。そのうえ、いやな消費税引き上げの延期までやってくれるのだからこんなうれしいことはない。
しかしこの陰には、9条の改定を究極の狙いとする憲法改定、安全保障法制の実効ある運用、原発再稼働などわれら一般庶民をおびやかす闇が潜んでいることに国民が気づくときが来るのであろうか。
国の財政基盤の一つである税制を政党の我田引水に利用するなど本来あってはならないことである。国の借金がGDPの倍以上、一千兆円を超えている国などどこにもない。消費税も本来は、将来に禍根を残さないよう、財政のプライマリーバランス維持のために使われなければならないものである。福祉を充実するためとか子育て支援のために消費税を充当するからと聞こえの良いことに騙されて税率の引き上げにも納得してきたのに、一政党の思惑に使うなどもってのほかである。