6
ちがう、先生の声がいつもの声とちがう。
暗い。
低く暗い。
しわがれて男の声のように太い。
ちがう。
これは先生の声じゃない。
わたしのことなんかすこしも恐がっていない。
後ろを振り向こうとしたが動けなかった。
眩暈がした。
暗いのは先生の声だけではない。
暗く陰湿な声に保健室まで光を失っていく。
それなのに薄闇が鏡になった。
うしろにいる先生の表情まで鮮明に映している。
おかしい。
闇の中で背後の先生が見えるなんてどう考えてもおかしいのだ。
秀子はじぶんが、意識の目でみているのだとわからない。
上半身が震えだした。
「そうよ。そうよ。もっと恐がって」
ちがう。
わたしのよく知っている先生とちがう。
いままでの先生とはちがうものになっている。
いままでの先生とはまったくちがう。
「そうよ。そうなのよ。先生が怖い存在だってことが……ようやくわかってもらえたようね。うれしいわ。うれしいわ」
けっして聞いてはいけない。
これは悪魔の声だ。
秀子は恐怖のために意識が混乱した。
じぶんのおかれている状況がようやくわかった。
口をふさがれた。
息がつまる。
苦しい。
息ができない。
耳がきんきんする。
必死で抵抗した。
立ち上がるんだ。
なにかヤバイ感じ。
動けない。
苦しい。
顔が恐怖と窒息感でゆがんでいる。
苦しい。
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低く暗い。
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けっして聞いてはいけない。
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秀子は恐怖のために意識が混乱した。
じぶんのおかれている状況がようやくわかった。
口をふさがれた。
息がつまる。
苦しい。
息ができない。
耳がきんきんする。
必死で抵抗した。
立ち上がるんだ。
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動けない。
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