■ Boettcher ベッチャー先生来日、順調に進む録音準備 ■
2011.12.11 中村洋子
★Wolfgang Boettcher ベッチャー先生が、9日夕、
チェロを背に無事、成田空港に到着されました。
長旅にもかかわらず、お元気一杯の様子、安心いたしました。
★先生は、 “ いい音楽を創りたい ” 、それ以外、全く眼中になく、
翌朝から、早速、私の無伴奏チェロ組曲 4、5、6番について、
真剣勝負のような、ディスカッションが始まりました。
★来日前、ベルリンから送られてきました Fax には、
「 I will show you the result of my study for your Suites 」 と、
書かれていました。
意気込みが、伝わってくるお手紙でした。
★やはり、驚くほど、弾き込まれていました。
自負されたとおりです。
知人の、誕生祝いハウスコンサートで、
もう既に、一部を演奏されてきたそうです。
★昨日は、リハーサルといっていいほどの、
素晴らしい演奏を聴きながら、細部の解釈について、
順調に、詰めが進みました。
目の前で、世界最高の名器 Goffriller ゴフリラ-が奏でられ、
豊かで奥深く、どこか慎み深い趣があるその響きに、
体が、包み込まれました。
至福の時間です。
★無伴奏チェロ組曲 4番の、2曲目に、
「 con brio 」 と、指定した部分が、あります。
私は、 ♩ = 100 を、想定していましたが、
ベッチャー先生は、 「 It's MaestroTempo ! !!」 と、おっしゃり、
見事に、 ♩ = 120 で演奏されました。
♩ = 100 は、1分間に ♩ が、100回演奏される早さです。
♩ = 120 は、それよりかなり、速くなります
★さらに、ベートーヴェンのある 1節をさっと、弾かれました。
非常に、説得力のある ♩ = 120 のテンポでした。
★先生の解説によりますと、
Maestro ヨーロッパの本物の奏者にとって、
「 con brio 」 という記号は、日本の楽典の教科書に、
書かれてあるように、「 活き活きとした表情で 」 という 、
「 発想記号 」 の意味だけでなく、ある 「 テンポ 」 が、
密接不可分なものとして、刻み込まれている、そうです。
その 「 テンポ 」 は、奏者にとって異なりますが、
Boettcher ベッチャー先生の場合は、120のようです。
★このような解説は、ヨーロッパ音楽の本流を体現されている、
先生のような方からしか、学べません。
★さらに、無伴奏チェロ組曲 4番の 3曲目、
3拍子部分の 3拍目に記した、 「 tenuto 」 の 4分音符について、
Wagnerの 「 Rheingold ラインの黄金 」 に、
同じ 「 tenuto 」 の用例がありますと、チェロで弾き、
声を出して、歌ってくださいました。
音楽史の大きな流れに、身を浸しているような、心地よさでした。
★途中で弓を、 Kittel キッテル に替えて演奏なさいました。
この Kittel は、メニューインやハイフェッツも、使っていた弓です。
力強く,お腹の底から響く音でした。
弓による音質の違いも、体験できました。
Kittel はドイツ人ですが、ロシア・ペテルブルクで製作していたそうです。
チェロは Goffriller ゴフリラー、すべて世界最高の、
音楽家、楽器、弓の組み合わせ。
★このように、録音前のディスカッションは、私にとって、
最高の授業でもあり、順調に進んでいます。
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