音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■佐川泰正さんの漆器 と 湯島・つる瀬の雛霰(ひなあられ)■

2010-02-23 01:48:42 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■
■佐川泰正さんの漆器 と 湯島・つる瀬の雛霰(ひなあられ)■
                 10.2.23  中村洋子


★先日、肌寒い風にもめげず、

新宿御苑前の 「 龍雲庵 」まで出掛け、

「 漆宝堂 」さん主宰の、佐川泰正さんの漆器で、

ミニ懐石を味わう会に、出席して参りました。


★そのお人柄のように、佐川さんの漆器は、

“ 威張った ” ところが、微塵もなく、

しっとりと手に馴染み、とても使いやすく、

それでいて素朴な美しさがあり、私は毎日、愛用しております。


★特に、普通より小ぶりに作られた、檜のお椀は、

すっぽりと、やさしく掌に納まります。

炊きたてのご飯を、少し盛りますと、

真っ黒な漆の表面に、湯気がさっとさし、

お米の白さが、一層際立ちます。

墨絵の世界のようです。


★懐石のお料理は、味わってしまうが惜しいような、

色彩り豊かな料理でした。

「 雲子ポン酢 」 の味わいに、特に感動しました。

塩で揉み洗いした真鱈の白子を、

昆布だしのおつゆで茹でる、のだそうです。


★やや線が細く単調ともいえる、白子の美味しさに、

昆布の旨みをかぶせることにより、

奥行きのある、深い “ 重奏的 ” な味が、生まれて出ていました。

添え物の黄金色の雲丹を合わせますと、さらに円熟。


★「聖護院大根、鱈の子、巻湯葉揚げ煮、菜の葉、蕨の炊き合わせ」

も、懐石の王道を行く味わいでした。

冬の味覚と、春の先駆けとの美しい出会い。


★「もずく と なめこの雑炊」も、

洗練と繊細さの極みのような、一品でした。

出汁は一瞬、味が付いていないかと、思うほどでした。

しかし、出汁を意識させないかのように、軽く抑えてありました。

その出汁の軽い旨みの上で、もずくとなめこ、さらにお米が、

それぞれの味わい、持ち味を存分に出して踊り、

舌を、楽しませてくれます。


★最後の「甘酒」は、麹の香りがゆったりと漂ってきます。

酒粕も、合わせてあり、

その味わいは、濃密、豊潤、大人の甘酒でした。


★「もずく と なめこの雑炊」が盛られたお椀は、

佐川さんの、新作です。

普通のお椀より、高さが少々高く、

さらに、口を付けるところが、薄手にしてあり、

外側に少し、湾曲しています。

これが、佐川さんの見事な創意です。


★その結果、片手でお椀を持ちますと、薄手のところが、

エッジが張るといいますか、

親指に軽く食い込むように、当たります。

それが、実に心地好く、手で持っていることが楽しくなります。


★料理の説明をしていただきました「 龍雲庵 」の後藤紘一良先生も、

この新作椀を「とても素晴らしい」と、お褒めになっていました。

ご自身も、これを求められたそうです。


★写真のお椀が、その新作椀です。

もうすぐ、雛祭りです。

湯島「つる瀬」の雛霰(ひなあられ)を、盛りました。

もち米を煎って爆ぜさせた「はぜ」という、フカフカのお米や、

とりどりの豆に、赤、白、黄、緑色のお砂糖が、まぶしてあります。

色彩感、やさしい上品な甘さ、

江戸の香りが、伝わってきます。


                (佐川さんのお椀と、つる瀬の雛霰)
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1 コメント

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御質問 (まさみ)
2010-02-23 11:24:54
始めまして。
つい最近中村先生のブログをインターネットで見つけ非常に味わいのあるバッハの分析をされていたのに感動し、非常に先生の考え方に触発を受けました。ところで先生の著作物がもし出版されるとしたら、いつ頃になるのでしょうか?
具体的に分かりましたら教えて頂けないでしょうか?お忙しい中とは思いますが宜しくお願い致します。
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