
■マタイ受難曲と、インヴェンション&シンフォニア9番との密接な関係■
09.4.16 中村洋子
★4月24日のアナリーゼ講座「インヴェンション9番」に向け、
「マタイ受難曲」と「ロ短調ミサ」を、じっくり勉強しております。
★「マタイ受難曲」の初演は、「1727年4月11日」ですから、
インヴェンション序文の日付「1723年」から、
4年後、ということになります。
ただし、両曲とも、一気に書かれてはいませんので、
どちらが、先に作曲されたかは、分かりませんが、
ほぼ、同時期に完成された、といえましょう。
★バッハの死後に、マタイ受難曲が全曲、
演奏されたのは、「1829年3月21日」です。
初演から102年後、没後79年目の、バッハの誕生日です。
それを指揮したのは、その時、20歳だった
フェリックス・メンデルスゾーンです。
★しかし、二男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハが、
バッハの死後も、マタイ受難曲を部分的に、再演していますから、
決して、完全に忘れ去られていたわけではなく、
聴くべく人は、聴いていたことでしょう。
楽譜を見て、研究した人も、人知れずいたかもしれません。
★メンデルスゾーンの再演を、契機に、
マタイ受難曲は、19世紀になってから、
活火山のように一気に、あるべき位置、即ち、
音楽史上の最高傑作の一つ、に据えられ、
いまに至るまで、すべての優れた作曲家に、
影響を、与え続けています。
★優れた作品の例に漏れず、マタイ受難曲でも、
第一曲目が、全曲を支配しています。
音楽的なモティーフや、調性、リズムなどの点について、
それが、当てはまりますが、
詩の「語句」も、全曲を構成する、
重要な要素と、なっています。
★その「aus Liebe」 と 「Erbarme dich」 という語句が、
要の役割を、果たしています。
Erbarme dich, Mein Gott・・・ は、
「わが神よ、憐れんでください・・・」という意味ですが、
この重要な語句は、受難曲全体の、ほぼ中間に位置する
アリアの、冒頭でも、歌われます。
重要な語句です。
★aus Liebe は、「愛のゆえに」という意味で、
この語は、受難曲のほぼ、3分の2のところにある、
Aus Liebe will Heiland sterben
「愛ゆえに、イエスは死のうとしています」
というアリアでまた、出てきます。
このアリアは、マタイ受難曲の頂点、と
いえるかもしれません。
★マタイ受難曲は、劇的な場面も多く、そちらに、
つい、気を奪われてしまいがちですが、
バッハが、最も表現したかったのは、
この深く、静かな2つのアリアであり、
そのために、2分の1、3分の2、という、
構造的に、最も重要な位置に、設計して据えた、
と、私は考えます。
★Erbarm dich の旋律は、
「ヴァオリンとオブリガートチェンバロのためのソナタ4番」の、
1楽章にも、使われています。
バッハが、大変に愛した旋律だったのでしょう。
★バッハは、鍵盤作品には、あまり、
アーティキュレーションを、記入していません。
しかし、アリア「aus Liebe」 の器楽による伴奏パートには、
バッハ自身が、アーティキュレーションを、
とても細かく、書き込んでいます。
★「aus Liebe」で、アーティキュレーションが、
記入されている音形を、
アーティキュレーションが、記入されていない、
バッハの鍵盤作品の音形に、当て嵌めますと、
ピアノで、バッハ作品を演奏される場合、
とても、参考になります。
★この 「aus Liebe」 のアリアや、
ロ短調ミサ曲に使われている半音階と、
シンフォニア9番との関連、さらに、
「aus Liebe」 の3度下行、2度上行の音形の意味と、
シンフォニア9番との関連についても、
4月24日に、お話するつもりです。
★ピアニストとって、マタイ受難曲や、ロ短調ミサの、
アリアを聴き、その器楽伴奏部分を、研究することにより、
バッハへの理解が、より深まり、
ピアノに、向かっているだけでは、
見えないバッハの世界が、眼前に、
広々と、展開してくることでしょう。
(写真は、牡丹の花です)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
09.4.16 中村洋子
★4月24日のアナリーゼ講座「インヴェンション9番」に向け、
「マタイ受難曲」と「ロ短調ミサ」を、じっくり勉強しております。
★「マタイ受難曲」の初演は、「1727年4月11日」ですから、
インヴェンション序文の日付「1723年」から、
4年後、ということになります。
ただし、両曲とも、一気に書かれてはいませんので、
どちらが、先に作曲されたかは、分かりませんが、
ほぼ、同時期に完成された、といえましょう。
★バッハの死後に、マタイ受難曲が全曲、
演奏されたのは、「1829年3月21日」です。
初演から102年後、没後79年目の、バッハの誕生日です。
それを指揮したのは、その時、20歳だった
フェリックス・メンデルスゾーンです。
★しかし、二男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハが、
バッハの死後も、マタイ受難曲を部分的に、再演していますから、
決して、完全に忘れ去られていたわけではなく、
聴くべく人は、聴いていたことでしょう。
楽譜を見て、研究した人も、人知れずいたかもしれません。
★メンデルスゾーンの再演を、契機に、
マタイ受難曲は、19世紀になってから、
活火山のように一気に、あるべき位置、即ち、
音楽史上の最高傑作の一つ、に据えられ、
いまに至るまで、すべての優れた作曲家に、
影響を、与え続けています。
★優れた作品の例に漏れず、マタイ受難曲でも、
第一曲目が、全曲を支配しています。
音楽的なモティーフや、調性、リズムなどの点について、
それが、当てはまりますが、
詩の「語句」も、全曲を構成する、
重要な要素と、なっています。
★その「aus Liebe」 と 「Erbarme dich」 という語句が、
要の役割を、果たしています。
Erbarme dich, Mein Gott・・・ は、
「わが神よ、憐れんでください・・・」という意味ですが、
この重要な語句は、受難曲全体の、ほぼ中間に位置する
アリアの、冒頭でも、歌われます。
重要な語句です。
★aus Liebe は、「愛のゆえに」という意味で、
この語は、受難曲のほぼ、3分の2のところにある、
Aus Liebe will Heiland sterben
「愛ゆえに、イエスは死のうとしています」
というアリアでまた、出てきます。
このアリアは、マタイ受難曲の頂点、と
いえるかもしれません。
★マタイ受難曲は、劇的な場面も多く、そちらに、
つい、気を奪われてしまいがちですが、
バッハが、最も表現したかったのは、
この深く、静かな2つのアリアであり、
そのために、2分の1、3分の2、という、
構造的に、最も重要な位置に、設計して据えた、
と、私は考えます。
★Erbarm dich の旋律は、
「ヴァオリンとオブリガートチェンバロのためのソナタ4番」の、
1楽章にも、使われています。
バッハが、大変に愛した旋律だったのでしょう。
★バッハは、鍵盤作品には、あまり、
アーティキュレーションを、記入していません。
しかし、アリア「aus Liebe」 の器楽による伴奏パートには、
バッハ自身が、アーティキュレーションを、
とても細かく、書き込んでいます。
★「aus Liebe」で、アーティキュレーションが、
記入されている音形を、
アーティキュレーションが、記入されていない、
バッハの鍵盤作品の音形に、当て嵌めますと、
ピアノで、バッハ作品を演奏される場合、
とても、参考になります。
★この 「aus Liebe」 のアリアや、
ロ短調ミサ曲に使われている半音階と、
シンフォニア9番との関連、さらに、
「aus Liebe」 の3度下行、2度上行の音形の意味と、
シンフォニア9番との関連についても、
4月24日に、お話するつもりです。
★ピアニストとって、マタイ受難曲や、ロ短調ミサの、
アリアを聴き、その器楽伴奏部分を、研究することにより、
バッハへの理解が、より深まり、
ピアノに、向かっているだけでは、
見えないバッハの世界が、眼前に、
広々と、展開してくることでしょう。
(写真は、牡丹の花です)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲