■「ゴルトベルク変奏曲」の白眉「第25変奏」は、同じg-Mollの第15、21変奏で準備されている■
~5月13日、第8回「ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」~
2017.5.11 中村洋子
★≪ちりてのち おもかげにたつ 牡丹かな≫
与謝蕪村の名句です。
★満開だった牡丹の花が、花びらを一枚一枚
散らしていきます。
結実した雌蕊が盛り上がっています。
★あの豪華だった花が、幻影のように、
浮かんでいます。
★「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」は、
主題である「Aria」の後、30の変奏曲が繰り広げられます。
一抹の淋しさを漂わせた最後の第30変奏「Quodlibet」の後に、
静かにもう一度、「Aria」が奏されます。
★私は、この「Aria」が終わりますと、
静寂の中に、幻のように、
「Aria」と30の変奏曲の全体像が、浮かんできます。
ちょうど、蕪村のこの句のように。
★5月13日の「ゴルトベルク変奏曲・アナリーゼ講座」は、
第22、23、24変奏です。
この第24変奏で、遂に1オクターブのカノンに辿り着きました。
★ゴルトベルク変奏曲では、曲の番号が3の倍数に当たる変奏は、
すべて「カノン」です。
★それも、
第3変奏は、1度(同度)のカノン、
第6変奏は、2度のカノン、
第9変奏は、3度のカノン、
第12変奏は、4度のカノン、
第15変奏は、5度、ト短調g-Mollの反行カノン、
第18変奏は、6度のカノン、第22変奏と相関関係にあります、
第21変奏は、7度のカノン、2回目のト短調、
第24変奏は、8度(1オクターブ)のカノン、
第27変奏は、9度のカノンです。
★第30変奏は「Quodlibet」は、二つの民謡を基にした、
二重対位法ですから、第6~27変奏の厳格なカノンとは、
性格を異にしています。
★第12と21変奏は、1段鍵盤か2段鍵盤か、
指定されていませんが、1段鍵盤が妥当でしょう。
はっきりと「a 2 Clav. 2段鍵盤で」と書かれているのは、
第27変奏だけです。
★それ以外の第6、9、15、18、24変奏の5曲は、
「a 1 Clav. 1段鍵盤で」と指定されています。
★第27変奏以外は、1段鍵盤で演奏する、ということは、
どういう意味でしょうか?
★それは、音色の異なる2段鍵盤での、豊かな色彩感を
Bachは要求したのではない、ということです。
言い換えますと、音色に頼らず、カノンを弾き分けなさい、
ということでしょう。
★第24変奏を例にとりますと、
ソプラノと内声のカノンに、バス声部がプラスされている・・・
というとらえ方では、Bachの意図に迫ることはできないでしょう。
★ソプラノだけの1声部に見えます上声を、
本当にソプラノ1声部なのか?・・・と、
考えることから、本当の演奏は始まります。
この点につきましては、講座で詳しくお話いたします。
★ゴルトベルク変奏曲の中で、
その三分の一を占める「カノン」が、大きな柱であることは、
間違いありません。
★また、ト長調(G-Dur)の曲集でありますが、
ト短調(g-Moll)が、3曲あります。
それは、第15、21、25変奏ですが、
そのうちの2曲、第15、21変奏がカノンであることも、
見逃せません。
★詰まるところ、
このゴルトベルク変奏曲の白眉である
「第25変奏 ト短調(g-Moll)」を、
第15、21変奏で準備しているとも、言えましょう。
★アナリーゼ講座は、
http://www.academia-music.com/new/2017-02-21-142146.html
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