■ Mozart ピアノソナタ の源泉も Bach ■
~10月26日は、名古屋カワイでインヴェンション講座~
2011.10.23 中村洋子
★10月26日は、名古屋カワイで、第 6回の
「 Invention インヴェンション・アナリーゼ講座 」 を、開催します。
http://shop.kawai.co.jp/nagoya/lecture/nakamura.html
★Johann Sebastian Bach バッハ ( 1685~1750 ) の音階が、
いかに素晴らしいかは、 2011年 10月 11日 のブログ
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/8774c64fe84349311e67ee2bb173391f
で、ご説明いたしました。
★その E-Dur の音階 「 e - fis - gis - a - h - cis1 - dis1 - e1 」 が、
ちょうど、インヴェンション 6番の 「 主題 」 となっています。
何気なく弾いていますと、見落としてしまいますが、
Bach は、周到な手順と準備の下に、
このインヴェンション 6番で、やっと、
e音 ( かたかなホ音 ) を起点に、e1音 ( 1点ホ音 ) に至る、
E-Dur ( ホ長調 ) の上行(全)音階 を、
堂々とした 「主題」 にまで、成長させました。
★ 「 Suite für Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 」 の、
1番と 3番の関係を、インヴェンションの 1番と 6番においても、
はっきりと、見ることができるのです。
≪ インヴェンション 1番は、主和音が主題の核となり、
6番では、1オクターブの音階が主題となります。 ≫
インヴェンションでは、1番 C-Dur と 6番 E-Dur は、
3度の関係にあります。
(この 3度の関係につきましては、次回の平均律アナリーゼ講座で、
Chopin 幻想ポロネーズを例に、詳しく、解説いたします)
★そして、冒頭 1小節目の、このホ長調の音階テーマに、
ぴったりと寄り添っている 「 対主題 」 は、
e2 ( 2点ホ音 )を、開始音とする、 「 下行半音階 」 から、
始まるのです。
★どちらが、 「主題 」 は 「 対主題 」 であるか、
判別できないほど、両者は、独立しており、
同時に、全音階と半音階で、一つの世界を、見事に作っています。
★つまり、 「 インヴェンション 1番 」 から始まった、
バッハの大きな設計が、ここで、一度完結しているのです。
★それは、この曲集で、
5番 Es-Dur ( 変ホ長調 )、 6番 E-Dur ( ホ長調 ) と、
≪ なぜ唯一、長調が連続しているか ≫ 、
ということに、明白に、結びつくのです。
★この全音階と半音階との関係を、見抜き、
作品で、徹底して追及したのが、Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)でした。
ピアノを習った方は、誰でも一度は弾き、知らない人はいない、
「 ピアノソナタ 16番 Klaviersonate Nr.16 C-Dur K545 」 は、
底知れない魅力と、魔力をもった曲です。
1788年6月に、作曲されています。
★モーツァルトは、同じ頃、三大交響曲 の
39番 Es-Dur K543 ( 6月 ) 、
40番 g-Moll K550 ( 7月 ) 、
41番 ( Jupiter ) C-Dur K551 ( 8月 ) も作曲しています。
その ≪ 全音階、半音階がいかに、Bach 由来であることか! ≫ 、
これは 「 偶然 」 では、ありません。
★ Klaviersonate Nr.16 K545 第 1楽章 1小節目の、
右手の 「 c2 - e2 - g2 」 。
だれもが口ずさむ、この単純な 「 ド ミ ソ の Fingering 」 を、
なぜ、 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー (1886 ~ 1960) が、
「 2 - 4 - 5 」 と、したのか?
★Bartók Béla バルトーク (1881~1945) 校訂の、
「 Sonaten für Klavier モーツァルト ソナタ全集 」
Editio Musica Budapest ( 全 2巻 ) は、
第1巻 第1曲目に、なぜ、
この Klaviersonate Nr.16 C-Dur K545 を、配置したのか?
★バルトークは、第 1楽章 2小節目の左手
「 d1 - g1 - f1 - g1 c1 - g1 - e1 - g1 」 の、
単純に見える、伴奏音型の
「 d1 - g1 - f1 - g1 」 の 「 レ ソ ファ 」 に、 「 4 1 2 」、
「 c1 - g1 - e1 - g1 」 の 「 ド ソ ミ 」 に、 「 5 1 3 」 と、
当然すぎる Fingering を、なぜ、
わざわざ、書き記したのでしょうか?
★ Fischer フィッシャーと、 Bartók バルトークの校訂版を、
読み解きますと、彼らから、
丁寧な 「 Mozart についてのレッスン 」 を、
直接に、受けているような気持ちになり、
“ ああそうだったのか!!! ” と、得心のいくことばかりです。
★≪ Mozart の真髄を知るためには、Bach を勉強する ≫
という、永遠の真理が、また、見えてきました。
これらの点について、名古屋で詳しくお話いたします。
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