音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Mozart Klaviersonate の源泉も Bach ■

2011-10-23 21:39:37 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Mozart ピアノソナタ の源泉も Bach ■
   ~10月26日は、名古屋カワイでインヴェンション講座~

                                      2011.10.23  中村洋子

 

 

10月26日は、名古屋カワイで、第 6回の

「 Invention インヴェンション・アナリーゼ講座 」 を、開催します。

http://shop.kawai.co.jp/nagoya/lecture/nakamura.html


Johann Sebastian Bach  バッハ  ( 1685~1750 ) の音階が、

いかに素晴らしいかは、 2011年 10月 11日 のブログ

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/8774c64fe84349311e67ee2bb173391f

で、ご説明いたしました。


★その E-Dur の音階 「 e - fis - gis - a - h - cis1 - dis1 - e1 」 が、

ちょうど、インヴェンション 6番の 「 主題 」 となっています。

何気なく弾いていますと、見落としてしまいますが、

Bach  は、周到な手順と準備の下に、

このインヴェンション 6番で、やっと、

 e音 ( かたかなホ音 ) を起点に、e1音 ( 1点ホ音 ) に至る、

 E-Dur  ( ホ長調 ) の上行(全)音階 を、

堂々とした 「主題」 にまで、成長させました。


★  「 Suite für Violoncello solo 無伴奏チェロ組曲 」 の、

1番と 3番の関係を、インヴェンションの 1番と 6番においても、

はっきりと、見ることができるのです。

 ≪ インヴェンション 1番は、主和音が主題の核となり、

 6番では、1オクターブの音階が主題となります。 ≫

インヴェンションでは、1番 C-Dur と 6番 E-Dur は、

3度の関係にあります。

(この 3度の関係につきましては、次回の平均律アナリーゼ講座で、

Chopin 幻想ポロネーズを例に、詳しく、解説いたします)

★そして、冒頭 1小節目の、このホ長調の音階テーマに、

ぴったりと寄り添っている 「 対主題 」 は、

 e2  ( 2点ホ音 )を、開始音とする、 「 下行半音階 」 から、

始まるのです。


★どちらが、  「主題 」 は 「 対主題 」 であるか、

判別できないほど、両者は、独立しており、

同時に、全音階と半音階で、一つの世界を、見事に作っています


★つまり、 「 インヴェンション 1番 」 から始まった、

バッハの大きな設計が、ここで、一度完結しているのです。

 

 


★それは、この曲集で、

5番 Es-Dur  ( 変ホ長調 )、 6番  E-Dur  ( ホ長調 ) と、

≪ なぜ唯一、長調が連続しているか ≫ 、

ということに、明白に、結びつくのです


★この全音階と半音階との関係を、見抜き、

作品で、徹底して追及したのが、Wolfgang Amadeus Mozart 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)でした。

ピアノを習った方は、誰でも一度は弾き、知らない人はいない、

「 ピアノソナタ 16番  Klaviersonate  Nr.16 C-Dur K545 」 は、

底知れない魅力と、魔力をもった曲です。

1788年6月に、作曲されています。


★モーツァルトは、同じ頃、三大交響曲

39番 Es-Dur K543 ( 6月 ) 、

40番 g-Moll K550 ( 7月 ) 、

41番 ( Jupiter  ) C-Dur  K551 ( 8月 ) も作曲しています。

その ≪ 全音階、半音階がいかに、Bach 由来であることか! ≫

これは 「 偶然 」 では、ありません。

 

 


★  Klaviersonate Nr.16  K545  第 1楽章 1小節目の、

右手の 「 c2 - e2 - g2 」 。

だれもが口ずさむ、この単純な 「 ド ミ ソ の Fingering 」 を、

なぜ、 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー (1886 ~ 1960) が、

 「 2 - 4 - 5 」 と、したのか?


★Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) 校訂の、 

「 Sonaten für Klavier モーツァルト ソナタ全集 」

Editio Musica Budapest  ( 全 2巻 ) は、

第1巻 第1曲目に、なぜ、

この Klaviersonate  Nr.16 C-Dur K545 を、配置したのか?


★バルトークは、第 1楽章 2小節目の左手 

「 d1 - g1 - f1 - g1     c1 - g1 - e1 - g1 」  の、

単純に見える、伴奏音型の

「  d1 - g1 - f1 - g1   」 の 「 レ  ソ ファ 」 に、 「 4 1 2 」、 

「  c1 - g1 - e1 - g1 」 の 「 ド ソ ミ 」 に、 「 5 1 3 」 と、

当然すぎる Fingering を、なぜ、

わざわざ、書き記したのでしょうか?


★ Fischer フィッシャーと、 Bartók バルトークの校訂版を、

読み解きますと、彼らから、

丁寧な 「 Mozart についてのレッスン 」 を、

直接に、受けているような気持ちになり、

“ ああそうだったのか!!! ” と、得心のいくことばかりです。


★≪ Mozart の真髄を知るためには、Bach を勉強する ≫

という、永遠の真理が、また、見えてきました。

これらの点について、名古屋で詳しくお話いたします。

 

 


             ※copyright © Yoko Nakamura

▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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