■ J. S. Bach バッハ の隠れた先生は、パッヘルベル ■
2011.10.19 中村洋子
( 椿 )
★21日の、カワイ表参道 「 平均律アナリーゼ講座 」 では、
Georg Friedrich Händel ヘンデル (1685~1759) の
「 シャコンヌ Chaconne G- Dur HWV 435 」 と J. S. Bach バッハ の
「 Wohltemperirte Clavier 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 17番 」
との関係を、お話いたします。
ヘンデルのこの名曲は、8小節のシャコンヌを主題とした
「 20の変奏曲 」 で、よく、知られています。
★ Chaconne については、あまり専門的にはならず、
毎日のレッスンで、いかに、楽しみながら、
取り入れていくことができるのか、それを、
お話したいと、思います。
★日本でのピアノレッスンは、まず、
J. S. Bach バッハ の小品を、数曲勉強したのち、
直ぐに、 「 Inventionen und Sinfonien
インヴェンションとシンフォニア 」 に、入る傾向が強いようです。
しかし、インヴェンションの内容の深さを考えますと、
少々、厳しい面が、あります。
★その意味で、ヘンデルの 「 シャコンヌの変奏曲 」 は、
親しみやすく、曲想も力強く、明るくおおらかです。
変奏曲の全 20曲を、まとめて弾かなくても、
興味のある変奏曲を、取り出し、
それを、弾いてもいいかもしれません。
この ヘンデルを弾く前に、もう一人、
素晴らしい作曲家が、います。
★Johann Pachelbel ヨハン・パッヘルベル(1653~1706)です。
パッヘルベルは、ニュルンベルクで生まれた、作曲家・オルガニストです。
1677年 アイゼナハの宮廷オルガニスト ( Org. am Hof zu Eisenach ) 、
翌1678年からはエアフルトの伝道者教会
Predigerkirche zu Erfurt のオルガニストとなり、
1690年まで、その地位にありました。
★「 アイゼナハ 」 や 「 エアフルト 」 という地名を見て、
ハッとされた方が、いらっしゃることでしょう。
そうです、彼は、J. S. Bach バッハ の父の Johann Ambrosius Bach
ヨハン・アンブロジウス・バッハ (1645~1695) と親しく、
J. S. Bach バッハ の姉の Johanna Juditha Bach (1680~1886)の
Taufpate ( 名付け親 代父 ) となり、バッハの長兄の、
Johann Christoph Bach ヨハン・クリストフ・バッハ (1671-1721) を、
教えた人です。
★J. S. Bach バッハ は、10歳で父と死別しました。
その後、オールドルフに住んでいた長兄に、引きとられます。
幼少時は、父や一族に育まれたJ. S. Bach バッハ でしたが、
長兄と同居後は、その兄が先生となりました。
その兄の師が、パッヘルベルなのです。
( 菊 )
★パッヘルベルといえば、
「 カノン Canon e Gigue für 3 violinen und Bass 」 が、
有名ですが、膨大な素晴らしいオルガン作品も、
残しています。
★パッヘルベルの 「 Ciacona con variazioni C-Dur 」 は、
4小節のシャコンヌ主題に、やさしい 「 24の変奏曲 」 が続きます。
原曲はオルガン曲ですが、Schott社から ピアノリダクションが、
発刊されています ( ED 09877 )。
ほとんど、原曲どおりで、音も変わらず損ねていません。
★曲想は、やわらかく、デリケートで、どこか懐かしく、
そう、あの 「 カノン 」 と、よく似ています。
J. S. Bach バッハ は、このような曲を勉強して育ったのです。
★是非、小さいお子さんに、
「 バッハの先生 」 が作曲した曲を、弾かせてあげてください。
ヘンデルのシャコンヌと共に、
インヴェンションの前段に、ふさわしい曲です。
講座で、実際に、そのどこか懐かしい音楽をお聴きください。
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