いやまあ、ホントに、こんな記者会見は見たことがない。不正疑惑が持ち上がった県会議員の釈明会見ということだったが、とんでもない会見だった。テレビでご覧になった皆さんも、あの会見には、あきれ果てたことだろう。
兵庫県議の野々村竜太郎という47歳の男が、昨年度の「政務活動費」から約300万円の交通費を支出した。年195回の日帰り出張をしたから…ということだが、その報告書には領収書が全く添付されていなかった。日帰り出張の内訳は、東京都11回、福岡県16回、兵庫県(城崎温泉)に105回、同県作用町へ63回ということだが、名目は「要請陳情等活動費」と書かれていただけで、何の目的で、誰に会うためにそこへ行ったのかは何も書かれておらず、「それを書けば相手に迷惑がかかる」などと言っている。さらに野々村議員は、初当選した2011年度と12年度の分の報告書でも、領収証のない他府県への出張が約600万円分あったそうである。
地元の神戸新聞が取り上げたことにより、この情報は全国に一気に広がり、野々村議員自身が記者会見を開くことを決めた…とテレビでは報じていた。
この「政務活動費」というのは、僕が議会事務局に勤務していた時は「政務調査費」という名称だったが、2年前に地方自治法の一部改正で「政務活動費」に変わった。「調査費」より「活動費」のほうが、より使い道が幅広くなるというのが変更理由だそうだ。ま、幅広く…といっても、もちろん何に使ってもいいということではない。
その「政務活動費」は兵庫県では1人の議員に年600万円が支給されているそうだ。むろん日本の各自治体の議員にも、金額はそれぞれ違うが支給されている。これまでもその使途の不明さが何度も新聞等で報道されてきた。かつて「図書購入費」として綾小路きみまろの本を政務調査費で買った滋賀県議会議員の報道には、笑いましたけどね。
しかしねぇ…。今回のこの議員の会見は本当に凄まじかった。ほとんどの方がテレビで見られたと思いますが、何度見てもすごいので動画を掲げておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=Gviufzt7dgk
とてもじゃありませんが、悲しくて泣いたようには見えませんよね。
「泣く」というよりも、意味不明のことを「わめく」みたいな感じでした。
人並み以上の良識を備えるべき議員が、こんな奇人・変人では困りますね。
僕はこの議員の号泣シーンを見て、漫才コンビ、ザ・ぼんちの「おさむちゃん」を思い出しましたよ。急に「ああぁぁぁ!」と泣き崩れるあのギャグを。(ひょっとしてこの野々村議員の会見もギャグ? …そんなアホな)。
ところで、今朝のワイドショーでこの件を詳しく報じていたが、会見の冒頭、野々村議員は記者たちに「最近、野次や暴言などでマスコミが感情的な報道をしているので、皆さん、感情的にならず平常心で質問をしてください。でなければ会見はその場で打ち切ります」という意味のことを言った。それから「皆さんの名刺をいただきます」と記者たちから名刺を受けとって机に並べ、それを見ながら「いまの〇〇記者の質問ですが」と、いちいち記者名を挙げていた。これは、この人物が最初から身構えて挑戦的であったことを示しているように見えた。どうもプライドが高過ぎるのと、自己顕示欲が強すぎるのと、激昂しやすいのが、この人物の特徴のように思える。
また「議員というものの大きさに比べれば、政務活動費のことなどごくごく小さなこと」という会見中の発言は、この議員の本心が出たものだろう。つまり全く反省していないのである。おまけに記者たちに「平常心で質問してください」とエラそうなことを言っておきながら、自分があのていたらくですからねぇ。なんとも、あいた口がふさがらないとはこのことでしょうか。
それにしても先日は東京都議会議員の「セクハラ野次」、今回は兵庫県会議員の「泣きわめき会見」と、都道府県議会の議員の質の悪さが目立ちますねぇ。
この政務活動費については、今朝の新聞にも、大阪維新の会の府議会議員2人に不適切な支出があった、という記事が載っていた。これは程度の差こそあれ、どこの議会でも起こり得る話である。
ただ、今回の野々村議員の場合、本当に出張したのかどうか、ということが大きな問題になる。1年に195回(中でも城崎温泉には100回余り)も行ったと報告書に書かれている。たとえ行ったとしても、本人が具体的な用件も会った相手も明かさないのが、いかにも怪しい。そうなると「実際にそれだけの回数の出張をしたのか?」という疑惑も生じてくる。行ったという証拠もないし、本人も説明しない(新幹線などは自動券売機で領収書も取れるのに)。
さらに野々村議員は自分のブログで「いまお嫁さん募集中」などと書いているが、195回行ったという(つまり政務の活動で行ったはずの)出張については何も書いておらず、さらに城崎温泉へ行ったと報告書に記されている日に、ブログでは別の場所にいたことを書いていたそうで、これでは疑われても仕方がない。
もし、実際には行かずに交通費を着服したとなれば詐欺罪であり、公金横領でもある。泣きわめいて済む問題ではない。そこを明らかにしなければ、県民は納得しまへんで~