2021年7月13日、また逮捕者が出ましたが、反政府派活動をしていた人ではありません。
今日、日本でも報道されましたが、今月10日にベラルーシのアレクサンドリア(大統領の故郷。実際は少し離れた村の生まれ。大統領の名前はアレクサンドルで似ているけれど無関係です。)で地元のフェスティバル「アレクサンドリヤは友達を呼んでいる」が行われた際に強風でエアー遊具が空中に飛ばされ、7人が負傷するという事故が起きました。
日本語で報道を詳しく読みたい人は
こちら。 動画もあります。YouTubeでも見られます。
今日、この動画をスマホで撮影していた男性が逮捕されました。
ブレスト在住の42歳の男性で、本名も報道されています。
動画を見た限りでは親子連れでこのフェスティバルに来て、偶然事故を目撃して、スマホで撮影し、「事故だ。」と話しながら、そばにいるであろう自分の子どもにも話しかけて、慰めています。
ベラルーシには、以前からこのような法律があるのです。
事故が発生している過程を撮影することは禁止。
なぜならば、その場に居合わせた人、事故や事件の目撃者は、人命救助を努力すべし、という法律があるので、動画撮影をしていたということは人命救助をしていなかった、スマホつまり携帯電話を使って、救急車をすぐに呼ばないといけないのに、動画の撮影を優先していた、つまり救急車を電話で呼ばなった・・・という証拠になる。証拠があるから逮捕される、ということです。
他にも複数が動画撮影していましたが、他の人たちは事故が終わった後、「急に風が吹いて遊具が飛んで行ったの!」と目撃証言している人たちを撮影していたので、これは法にい触れなかったようです。
事故の様子を撮影していたから、事故の経過や原因が解明される材料になるから、動画撮影してもいいでしょ、と思う日本人が多いのではないでしょうか。
しかし、ベラルーシでは、のんびり動画撮影していないで、怪我人を助けないといけません、国民の義務です、という法律があります。
(このような法律があるのを私は知っていたので、あるとき、目の前で転んで骨折した人に助けを求められたときに、すぐ救急車を呼びましたよ。動画撮影しなくても、何もせず通りすぎるのも禁止なのです。ちなみにこのとき、救急電話をしたら、対応した人との会話がこんな感じ。「もしもし! 骨折した人がいるんですが!」「あなたは誰ですか。」「通りすがりの者です。」「怪我した人の性別と年齢は?」「女性です。年齢? 50歳ぐらいかな。私は知り合いじゃないから年齢は分かりません。」「その人にきいてー。」「(怪我人に向かって)あの、何歳ですか?」「痛いー痛いー!! よ、四十七歳よ・・・うううー!あ、足がアアアーーーー!」「(電話に向かって)47歳だそうです。」「けが人のいるところは?」「ええ? えーと、ここは・・・○○通りの路上で・・・ええーと、この目の前にある家の番地は・・・(番地の表示を探しまくる。)あ、あった! 16番地・・・」ブチ! ツーツーツー・・・・・・。
ええ、そうです。ベラルーシの法律では、目の前に怪我している人がいたら、通り過ぎず、救助せよ、助け合え、なのですが、救急の電話番号に電話しても、応対する係の人がこんな態度なんですよ。
自分の携帯電話に向かってバカヤローと叫びたくなりましたが、もう一度救急電話番号にかけ直すとうまい具合に他の人が出ました。
「もしもし! 足を骨折した人がいるんですが、これいたずら電話じゃないですよ。だから切らないで! 私の話を聞いて! 女性47歳! ○○通り16番地の路上です! 今から本人に代わるから!」
と携帯をその人に渡すと、「な、名前は・・・○○です。道を歩いていたら転んで・・・右足が・・・・お、折れた音がして・・・うううー。救急車・・・早く・・・。」
と説明したので、その後ちゃんと救急車が来ました。平均的なベラルーシ人は親切ですが、救急電話を受け取る人の仕事へ態度が、人によるけど、救助する気ゼロ、やる気ゼロです。)
2008年に、秋葉原通り魔事件が起きた時、事件の様子や容疑者逮捕の瞬間を動画撮影して、それをマスコミに提供して、ニュースでも視聴者提供として放映していましたが、それを見ながら、ベラルーシに住んでいる私は「ベラルーシだと、この動画撮影していた人、全員逮捕だわ・・・。」と思っていました。
もちろん動画撮影せずに、警察に通報した人、救急車を呼んだ人もたくさんいます。
怪我をした人に救急処置をしようとしていて、刺された人もいます。
2011年にミンスクの地下鉄で爆発物事件が起きたとき、もちろんけが人を助けようとした人も大勢いるのですが、やっぱり地下鉄入口で怪我をして座り込んでいる女性を動画撮影した人がいて、その動画は国営テレビのニュースで使われたのですが、その後、撮影者は、女性に対する救助をしようとしなかったので、逮捕されました。
そして、今回アレクサンドリヤでのエアー遊具が強風で吹き飛ばされた事故もスマホで動画撮影していた人が逮捕されました。
逮捕されたのは事故当日、逮捕したのはKGBで、今日裁判が開かれ、7日間の禁固刑の判決でした。
ちなみに、国営テレビ局は事故当日、このフェスティバルについてニュースで報道しましたが、みんな楽しく歌ったり踊ったり、屋台がたくさん出て賑わっている様子などの映像ばかりでした。事故のことは報道しませんでした。
ネットではニュースになっており、撮影者は逮捕されましたが、その動画はYouTubeで今も視聴することができます。
そしてフェスティバル2日目の11日も、何事もなかったかのようにお祭りは続き、野外コンサートには大統領が三男を連れて登場。
出演した人気ラッパーは大統領と握手をしてニュースになり、今日、そのラッパーは「スターリンは偉大なヒューマニストだ」と発言し、またニュースになっています。
ちなみに上記のベラルーシの法律ですが、もし、学校で暴力的ないじめをしている現場を動画撮影していたら、撮影した子どもは、いじめられている子どもの救急措置(救急車を呼ぶ、包帯を巻くなど)をしなかったことになるので、上記の法律により、年齢にもよりますが逮捕されます。(成人年齢に達していたら7日間の禁固刑か・・・)
未成年の場合は、刑務所ではなく更生施設に送られますね。
もっとも、いじめ現場を動画撮影しても内輪だけで見ていたら動画の存在を知られませんが、外部に漏れたり、誰かがネット上に投稿したりすると、撮影者は上記の法律に触れたということになります。
いじめていた子ども(暴力を振るっていた子ども)は別の法律に触れるので、更生施設送りですね。
次のニュース。突然ベラルーシ大統領はペテルブルグへ出発。ロシア大統領と(緊急と思われる)会談を行いました。
会談は5時間に及び、何を話し合っているのかと思っていたのですが、結局2022年度のロシアがベラルーシに輸出する天然ガスの価格について話し合い、決着も着いたと発表されました。