ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

チロ基金の活動 「WBC集団測定・SOS子ども村 第1回」 (1)

2013-03-22 | チロ基金
 今年チロ基金はベルラド研究所の協力の元、集団のWBC測定を行い、成人体重1キロ当たりセシウム137が70ベクレル以上、子どもで20ベクレル以上だった被験者にビタペクト3を無料で配布し、1日2個の摂取を勧め、再測定をして内部被ばくの変化を調査することになりました。
 その第1回目の測定がSOS子ども村で行われることになり、3月21日に移動式WBCがベルラド研究所からSOS子ども村の中にあるホールに運び込まれ、測定が実施されました。

 今回73名の測定を行いましたが、このうち13名はSOS子ども村内の保養施設に短期間の保養に来ていた子どもなので、再測定ができません。この13名については集団測定の被験者としては数に入れません。
 この保養滞在グループについては、チロ基金の活動「ビタペクト&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第146回」をご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/4d3a71f9c65dca57fdf1baf4cbfdec18


 また残り60名のうち1名は私です。
 今回の測定の結果は・・・0ベクレル(不検出)でした! 去年8月下旬に測定して以来だったので、どきどきしていましたが、前回に続き、0ベクレルだったので、とても嬉しいです。ちなみに最近はビタペクト3も全く飲んでいません。しかし、食生活によって、ペクチンサプリを飲むことなく、内部被ばくを抑えることに成功していることが分かりました。これからもこの調子でいこうと思っています。

 さて、今回のSOS子ども村での測定ですが、いろいろ考えさせられることが多かったです。
 まず59人の内訳ですが、SOS子ども村で生活しているいわゆる孤児が35人、SOS子ども村で働いている大人が16人、療養グループの子ども2人、その母親2人、近所の学校の生徒4人でした。
 療養グループの子供は腫瘍などの病気治療のため、SOS子ども村内の宿泊施設に滞在して専門的な通院治療を受けている子供たちです。
 
 SOS子ども村内には68人の子ども(孤児)が母親役の女性のもと、複数の家に分散して暮らしています。各家にはお手伝い役の女性8人も1人ずつついています。
 しかしそのうち35人しか測定に来ませんでした。半分しか来なかったということです。さらにお母さん役のうち測定に来たのはわずかでした。
 これでは被験者が少なすぎるので、SOS子ども村から、近所にある学校に電話をして、「無料で測定しているので、よかったら来てください。」とお知らせしたのですが、4人しか来ませんでした。

 がっかりしたのは、SOS子ども村の職員のうち10名ほどの研修にこの日が当たっていて、希望していた職員さんが10名不在だったことです。この日を設定したSOS子ども村側担当者は「研修のことを知らなかった。」と言っているのですが、要領が悪い感じがしました。
 さらに研修には行っていない職員さんに声をかけると、
「いえ、けっこうです。測定したくないんです。」
と頑なに拒否する人がけっこういたことです。しかも全員20代の女性。
 職員さんで逆に積極的に「測定してくれ。」とやってきたのは40代、50代の男性ばかりだったので驚きました。

 この年代の人はチェルノブイリ事故当時の記憶があるので、真剣なのだろうか、と思いましたが、50代ぐらいの女性(お手伝いさん)は、ベルラド研究所の測定員さんの目の前で
「私は測定しません。理由は(測定器を)信じていないからです。」
と発言しました。
 測定員さんに「こういう人はどうしたらいいのですか?」と質問すると
「(今でも)こういう考えの人はいることはいる。」
とあきらめ顔でした。

 拒否した20代の女性たちは「どんな結果が出るのか怖いから知りたくない。」「知らぬが仏って言うでしょ。」「私は健康体だから測定しなくていいんです。」といった理由を口にしていました。
 測定の結果「被曝してました。」ということが分かったとしても、ビタペクト3を飲めばいいだけの話なのですが・・・
 しかも測定費用もビタペクト代も全てチロ基金が負担しているので、無料なのです。

 SOS子ども村の孤児や職員を対象とした測定は、毎年1年に1回SOS子ども村の予算から出して行っています。しかし再測定はしていないし、ビタペクトの配布は予算がないので、行ったことがありません。
 今回はチロ基金から予算が出て、2回の測定もビタペクト代もSOS子ども村側は出さなくていいのですが、このようなチャンスを拒否する人が予想以上にいて、がっかりしました。
 お母さん役もお手伝いさん役も子どもも1人も顔を見せない一家も5家族ありました。WBC測定に全く関心がないのでしょうか? お母さんが測定に行きなさい、と言わないから、この一家の子供は誰一人来なかったのは当然です。
 あるお母さんなどは「今まで一度も測定したことはないし、今回も測定しないだろうし、将来も測定しないだろうと思われる」人なんだそうです。嫌がっているのか、信用していないのかよく分かりません。もちろんこのお母さんに引き取られた子どもも測定を一度もしていません。
 お母さん役の人は子どもを大勢引き取るようなものですから、毎日の食事の世話だけで頭がいっぱいで、放射能のことなど考える余裕がないのかもしれません。

 あくまで私の意見ですが、こういうお母さんの元に引き取られた子どもは運が悪いと思います。
 被曝に関心を持ち、積極的に測定をして、健康のこと、放射能のことを話し合える家庭で育つ子どものほうが被曝による発病リスクが減るのは当然です。

 SOS子ども村側は
「毎年SOS子ども村側の予算で測定しているが、毎回『被曝量は少しでした。大丈夫です。』と言われ続けていると、感覚が慣れてしまって、『今年も大丈夫だろうから、無料であっても測定なんか行かなくてもいいや。』と思うようになってくる。」
と説明していました。
 そうなのかもしれません。
 
 SOS子ども村で働いている人すらこのように意識が低い(被曝のことを心配していない、向き合おうとしていない)ということは、一般のベラルーシ人ではなおさら意識が低くなっていると予想されます。
 やはり事故発生から27年という月日がそうさせているのでしょうか。
 どちらにせよ、測定しない、と言っている人の首に縄をくくりつけて、連れてくるわけにはいきません。

 この現状を見て、がっかりしました。ベルラド研究所の測定員さんと
「ペクチンサプリよりも心理カウンセラーのほうが、ああいう人たちには必要なのではないか。」
と話し合いました。
 しかしよくよく考えると、これが25年後の日本人の姿になるのかもしれません。
 ある意味SOS子ども村は小さな社会の縮図です。その中にいる人たちの間で「WBC測定したくない。」と言う人の割合が増えていること、無関心な母親もいるということを考えると、日本もこうなるのかもしれません。

 もっとも今回の測定に費用を出してくださった日本人の方々のことを思い、また現在の日本では希望者も多いのにWBCの内部被ばくの測定が思うように進んでおらず、また高額な費用がかかるケースもあることを考えると、今回の測定を拒否するベラルーシ人の姿に大きく落胆しました。

 日本人の皆さん、機会があればWBCで内部被ばくの測定を行ってください。無料であればなおさらです。
 汚染地域に居住している人は1年に4回(季節ごと)の測定が望ましいです。
 
 放射性物質の半減期について考えてください。
 27年経過しても、測定、つまり自分の内部被ばくの実情を知ることは必要です。
 事故の後生まれた子どもでも同じです。家族そろってWBC測定を受けましょう。
 現在のベラルーシ人のように、25年後の日本人がなってしまってはいけないのです。

(画像は測定中の子供たちのようす。手に持っている紙は千羽鶴プロジェクトの紙です。)
 

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