ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

要注意! ミンスクの交通(バス・トロリーバス・路面電車)その2

2010-10-04 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 9月15日の午後、私と夫は自宅の近くに用事があり、そこへ徒歩で行きました。用事を済ませたその帰り、私一人だったら、バス停で一駅の距離だったので、おそらく歩いて帰っていたと思いますが、障害者の夫が足が痛いのか
「バスに乗って帰りたい。」
と言い出しました。2人で最寄りのバス停へ行きましたが、ちなみにその次のバス停が終点で、家はその終点の近くにあります。
 しばらくすると99番のバスと51番のバスがほとんどつながるようにやってきました。前の99番のバスは混んでいたのと、コントロリョール2人が乗っていて、いやーな雰囲気だったので、無賃乗車するつもりは全くなかったものの、次の51番のバスに乗りました。こっちのバスはすいていて、他の5、6人の乗客しかいませんでした。

 さて、私が51番のバスに乗ろうとするのを99番の窓から見ていたらしく、一人のコントロリョール(分かりやすくするため、この人のことを「白毛」と呼びます。)が、99番のドアが閉まる直前に飛び降り、51番のバスに飛び乗ってきました。私の後ろには夫が続いて乗車しようとしていたのですが、その夫をお尻で跳ね飛ばしそうな勢いでした。
 そして、他の乗客には一切目もくれず、私に突進し
「切符は?」
とどなりました。そのとき、私はすでにカバンの中に手を入れて、買っておいた切符を取り出そうとしていました。
 夫が自分の身体障害者手帳(障害者はバスなど無料ですが、切符の代わりに手帳を見せないといけない。)を取り出して、見せようとしましたが、白毛は無視。
 ずっと私の横に張り付いて、ありとあらゆる脅し文句(「早く切符を出せ。」とか「タダ乗りできると思ってんのか。」などなど。ちなみに白毛さんは女性で年齢は45歳ぐらいです。)を浴びせ続けました。
 他の乗客が見かねて「私の切符です。どうぞ見てください。」と差し出しても無視。明らかに
「へっへ。外人だわ。わなに落ちたな。さあ、罰金取ってやる。他の客は私の仕事の邪魔すんな。」
という態度でした。
 私が切符をカバンから取り出し、穴あけパンチで穴をあけようとしたところ、突然この白毛は私の手から切符をひったくりました。
 そして自ら穴をあけたうえで、私の切符を返すこともなく
「はい、罰金、7000ルーブル払え。」
と言い出したのです。
 私と夫が
「運賃を支払ったのに、どうして罰金まで払わないといけないんですか?」
と反論すると、白毛はバスの運転手のところへ行きました。すぐそばにいた夫が証言していますが、そのときに白毛と運転手の会話はこうです。
「こんちは。」
「ああ、こんちは。」
 以上です。その後白毛は私のほうに向き直り
「運転手が見たって言ってるわよ。あんたここから2つ前の停留所から乗車したでしょ! 一駅以上切符に穴をあけることなく、バスに乗っていたんだから、罰金払え!」
 どうして現実と違うことまででっち上げるのか?
 大体、私の後ろについてきて、このバスに乗り込んできたくせに、こんな嘘までつくのです。
 私が抗議すると、他の5、6人の乗客も我慢できなくなったらしく、口々に
「それは間違いだ!」「私、見ましたよ、この人はすぐそこのバス停で乗ったんです。」「私も見ていた!」「嘘つくな!」
と援護し始めました。
 バスの中は大騒ぎとなり、それが収まらないうちに次のバス停、つまり終点に到着しました。

 バスが止まってみんな降りたのですが、白毛は私の切符を握ったまま、返そうとせず、さらにバス停のゴミ箱に捨てようとしました。
 私が「私の切符でしょ! 返して! 何の権利があってゴミ箱に捨てるんですか!」と後を追いかけました。
 すると白毛は喧嘩をふっかけるかのように
「警察呼ぶわよ!」
とどなりました。こっちが警察を呼んで、この大馬鹿検札女を逮捕してほしいぐらいなのに、どうして私が警察の世話にならないといけないのか。
 しかし夫が怒って
「返せー!」
とわめいたところ、ようやく白毛は私の切符を返してくれました。
 このように切符を捨てようとしたのは、つまり私がバスの運賃を支払った唯一の証拠品をもみ消そうと思ったからです。
 
 そのときには51番の前を走っていた99番のバスも終点で止まっており、そこから99番のバスの乗客を調べていた、もう1人のコントロリョールもバス停にいました。分かりやすく説明するためにこの白毛とペアで働いていたこの人のことは赤毛と呼びます。

 私と夫は白毛の人権無視の態度をミンスク交通局に訴えるため、白毛に
「あなた、名前は何て言うんですか?」
とききました。普通はコントロリョールは青い制服を着ていて、さらに左胸に名札をつけているものなのです。しかし白毛はその名札をつけていませんでした。(これがすでに規則違反です。)
 しかし白毛は自分の名前を言うのを拒否。それで夫は身分証明者の提示を求めました。
 これも普通は、「この人は本物の検札係です。」と証明するミンスク交通局が発行している公印の押された身分証明書を常に携帯しているはずなのです。
 しかし証明書をポケットから取り出すのも白毛は拒否し、挙句に
「裁判に訴えてやる!」
とわめきました。これに対し私は
「こっちが裁判に訴えるから! 自分がそんなに正しいのなら、どうして身分証明書を見せないのか?」
と抗議しました。
 (どうしてこんなに脅されないといけないのか。私、無賃乗車したわけでもないし、何も悪いことしてないのに、こっちが被害者ですよ・・・。)

 さて、この様子を白毛とペアで働くはずの赤毛さんはすぐ横で眺めていました。
 ちなみに検札係は2人、あるいは3人のペアで働いています。91番のバスと51番のバスと、1人ずつに分かれて検札するのも、規則違反なのです。
 
 白毛が自分の身分を明かさないので、私は赤毛さんなら知っているだろうと思い、赤毛さんに尋ねました。
「あなたとペアを組んでいるこの人(白毛)の名前を教えてください。」
 しかし赤毛は同僚をかばおうと思ったのか、
「私は関係ない!」
と教えてくれません。しかし規則どおり赤毛さんの胸にはちゃんと名札がついていました。そこの苗字欄には「ドゥブロフスカヤ」とありました。しかし赤毛のドゥブロフスカヤさんはびっくりして、名札を手で隠し
「何で私の名前を読むんですか! この人(白毛)との問題でしょ! 私は関係ない!」
「白毛の名前をあなたが教えてくれないからでしょ。」
と再度、赤毛に白毛の名前を言うよう頼みましたが、ドゥブロフスカヤさんは教えてくれませんでした。

・・・というわけで、正義よりも同僚との人間関係を良好に保つほうを選んだドゥブロフスカヤさんは、自分の名前をこのようにブログに書かれ、かえって恥をさらすことになったのです。気の毒だが仕方ありません。ちなみにドゥブロフスカヤという苗字はベラルーシではよくある苗字です。

 私が赤毛と押し問答をしている間もずっと白毛は「警察呼ぶぞ。裁判に訴える。」というフレーズを繰り返していました。そして白毛と赤毛は小走りに終点のバス停にある運転手詰所のある建物のほうへ去っていきました。

 しかしまあ、どうしてこんなにコントロリョールは外国人乗客にむしゃぶりつくのか?
 その理由は簡単です。外国人は言葉が分からない、と思い込んでいる。さらに運賃の払い方も分かっていない、規則も分かってない、だから罰金を吸い上げるのが楽なのです。
 これが相手がベラルーシ人だと、喧嘩が発生します。ああ、今まで何回見てきたとか・・・
「タダ乗りか! 罰金払え!」「嫌だ! 今失業中なんだ!」「金がないなら乗るな!」「たったの一駅だろー。」「だったら歩いて行け!」「急ぐんだ、やだね。」ギャー、ギャー、ギャー、ギャー・・・どちらも負けじと延々怒鳴りあっています。
 こうしてまともに料金を払っている他の乗客の気分も悪くなっていきます。
 朝のすがすがしい天気も台無しです。夕方の家路でこういう怒鳴りあいを道中ずっと聞いていると、仕事の疲れが増していきます。
 自分が無賃乗車をしていなくても、本当に不愉快です!

 さらによくない、と思うのはコントロリョールは不公平、ということです。罰金を取りやすそうな弱い者にむしゃぶりつきます。外国人も明らかに弱者のほうに分類されています。
 以前、こういうことがありました。3人のコントロリョールが前のドア、後ろのドア、中央のドアから、いっせいに乗り込んできました。
 乗客のうち、2人の男性が大男でマッチョ、そしてスキンヘッドでした。いかにもガラが悪い感じでした。その2人組みに検札の1人(女性。おばさん。)が「切符は?」とききました。男のほうは「ない。」とだけ答えました。それで終わり。一切お咎めなしです。
 同じ乗客で赤ちゃんを抱っこした痩せた若い女の人がいました。この人も無賃乗車をしていました。
 バス停でみんな降ろされましたが、3人の太ったおばさんコントロリョールは若いお母さんをぐるっと取り囲み、口々にタダ乗りしたこと、罰金すらすぐに払えないほど財布にお金がなかったことを、罵っていました。そのすぐ横を同じくタダ乗りしたマッチョの2人は、何事もなかったのように通り過ぎていきました。3人のおばさんコントロリョールは男2人組のほうは見ようともしませんでした。

 同じ無賃乗車なのに、片方は全くとがめられず、片方は1対3で小突かれるのか?
 不公平です。それに
「無賃乗車は規則違反だ! だから罰金を払え!」
と叫ぶ検札自身が規則違反を犯している。こういうところが一番おかしいと私は思います。 

 そしてどうして、コントロリョールはこんなに口汚く、強引なのか。それは給料の支払い方が間違っているからです。コントロリョールの給料は歩合制です。つまり最低限の給料はもらえますが、その額はしょぼい。たくさん収入がほしい、と思ったら、タダ乗り客をたくさん捕まえろ! と上からハッパをかけられているのです。そして「今日はこんなにたくさんタダ乗り客から罰金を取りました!」
と報告すれば「よろしい!」とほめられ、検挙数かけるいくら、の賃金が基本給に上乗せした形で、給料になるのです。
 だから、コントロリョールはガツガツしている。そして効率よく収入を上げる手段として、同じタダ乗り客でも「ああ言えばこう言う」ベラルーシ人を相手にするよりも、言葉が分からなくて戸惑っている外国人相手のほうが楽チンです。
 「あ、あれ? 700ルーブルのはずだけど、追加で払わないといけないのかな? それとも桁を勘違いしてたのかな?」
と、向こうからいいように解釈してくれるかもしれません。7000ルーブルぐらい外国人からすれば安いもんだろう、だからそれぐらいさっさと払ってくれるわい、とコントロリョールは思っています。
 はっきり言って、外国人のことを馬鹿にしています。

 ついでなので付け加えて言うなら、人件費の無駄です。こんなコントロリョール1人1人に毎月毎月給料を払うことを考えると、運賃を100ルーブルに抑えて、代わりに運賃箱を運転台の横に設置するほうが、よっぽど安上がりです。現在7割がたいそうな無賃乗車客もいなくなるし。・・・と日本人の私は毎度考えます。 
 とにかくたった700ルーブルとは言え、このうちの何パーセントだかが、コントロリョールの給料に充てられているのか、と考えるだけで、腹が立ってくるので、私は現在ほとんどバスやトロリーバスは利用していません。
 
 さて、今回の事件の余波はまだ続きます。その3をぜひご覧ください。

この記事についてブログを書く
« 要注意! ミンスクの交通(... | トップ | 要注意! ミンスクの交通(... »

ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報」カテゴリの最新記事