2024年9月5日
前日の4日に、ベラルーシの国営テレビが「日本の情報工作員が拘束された」と伝え、さらに今日詳細を報じる特別番組を放映する予定であり、その番組予告の映像を放映したことを受け、日本の官房長官も今日の記者会見で言及しました。
報道によると分かっていることは、拘束されたのは日本人男性(50代)で、7月9日に身柄拘束されており、ゴメリ国立大学で日本語講師をしていた中西雅俊という氏名の人物だそうです。
まずこのブログに書いておきたいことは、私はこの日本語の先生とは全く面識がなく、今回の報道で初めて存在を知ったということです。
ですので、私に「中西さんはどんな人?」ときかれても答えようがありません。
全く知らない人です。
7月に身柄拘束されていたことも知りませんでした。
中西氏については、東京の民間団体で約20年間勤務し、2018年にゴメリ州でベラルーシ人女性と結婚。(ということは少なくとも6年間はベラルーシに住んでいた日本人ということになりますが、私は会ったことはありません。私がミンスク在住なので、地方都市在住の日本人と会う機会はめったにないです。)
ゴメリ国立大学は日本語教育を2020年から始めたそうですが、同大のサイトによると2021年時点で同氏は日本語講師として勤務していたことが分かっています。2020年の日本語学習スタート時点から教師をしていたのかどうかははっきりしません。
在ベラルーシ日本大使館HPに、日本大使がゴメリ国立大学を公式訪問した際にも、同氏が大学側の教職員として出迎えており、担当していた日本語学生が大使との交流会に出席しています。
今年7月9日に拘束されたためだと思いますが、同氏は現在すでに同大学を解雇されています。
ウクライナとの国境で軍事インフラを撮影している際に捕まったとする報道もあります。
同氏もTさんもベラルーシで日本語の先生をしているから、面識があるはずだと思う方もいるかもしれませんが、ないです。
理由ですが、ます同氏はゴメリ、私はミンスクで教えているので距離が離れています。
次に同氏が教えていたのは大学という教育機関ですが、私が教えているのは公立の児童図書館です。立場も私は教師でも講師でもなく、図書館職員です。
ベラルーシの日本語教師会は会員の減少により、数年前に解散したとも、休会中だとも言われています。この教師会にも私は加入したことがありません。私は教師ではなく図書館職員が半ばボランティアで無料で来館者に日本語を教えているというレベルです。私の元で日本語を4年間勉強したところで、卒業証書がもらえるわけでもありません。このような公式な修業証明書を図書館員が出せるわけではありません。教育施設ではなく、図書館ですから。
(だから卒業証書が出せない代わりに、学習者のみんなは日本語能力試験のレベル認定証をもらえるようにがんばりましょうというのが弊センターの方針なのです。)
同氏はベラルーシ当局に国内法違反で拘束されたということですが、日本外務省からもウクライナ侵攻が始まって以来、ベラルーシ在住邦人と旅行者に対して、ウクライナとの国境から30キロ内の地帯に近づかないようにと勧告のメールが何度も送信されているのです。
同氏も少なくとも2018年からベラルーシ在住で、2023年12月に日本大使と面会していることが大使館HPに記載されているのですから、在留届(ベラルーシでの連絡先)を絶対提出していたはずです。ということは私と同じように日本外務省・日本大使館からの注意喚起・勧告メールを受け取っていたということです。
それなのにそれを無視して国境地帯に近づくなんて日本人なのに、どうしてこんなことをしたのでしょう・・・。
ベラルーシ政府は同氏が日本政府の特別任務機関のスパイであるという見方を示していますが、とにかくベラルーシの夜10時から放映される特別番組を視聴してみます。
この番組のタイトル、日本語に訳すと「東京のサムライの失敗」だそうです。本当に同氏は東京出身のようですね。少なくとも東京で20年間働いていたので、東京のサムライと表現されたようです。ちなみにベラルーシではこのような表現方法としてはサムライというのは日本人男性という意味に過ぎません。もし同氏が女性だったら「東京のゲイシャの失敗」という番組名になっていたのだろうと思います。この「失敗」という表現も
裏を返せば、「外国人のスパイ活動を阻止したベラルーシ当局は優秀」ということと同義であり、つまりベラルーシ国民への「ベラルーシ政府は頼りになる」というメッセージに繋がります。
ベラルーシで逮捕され、起訴された日本人は今まで2人いますが、こんな特別番組まで制作された人はいませんでした。7月の拘束から2ヶ月の間にベラルーシ当局も同氏の違法行為の証拠を相当数抑えたはずです。動かぬ証拠があるので今後起訴され、有罪判決が出る可能性が非常に高いです。
それと、ベラルーシ人にも言いたいですが、ベラルーシで日本語を教えている日本人はみんなスパイだと思わないでほしいです。
純粋に日本語を熱心にベラルーシ人に教えている日本人の先生もいるのに、一つのイメージでまとめられたくないです。
そして日本とベラルーシの関係がこの一人の日本人のせいで悪化してほしくないです。
ベラルーシに住んでいる日本人として、同氏の行動について、腹が立つというかもうあきれていますし、ベラルーシ人に対して申し訳ない気持ちになり恥ずかしいです。同じ日本人だからと同氏を擁護する気持ちも私には全くありません。
ゴメリ大学で日本語をまじめに勉強していた学生さんたちも新学年度が始まったら、先生が逮捕されて解雇されていたと知ってショックでしょうし、日本語教師が不足している今、レベルの高い日本語教育を大学で続けるのも難しくなってしまうのではないでしょうか。(ちなみにゴメリ大学で日本語を教えているのは同氏一人だけではなく、ベラルーシ人の先生もいるそうです。まだ良かったです・・・。)
それでは今晩の特別番組を視聴しましたら、また改めて投稿します。