ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

11月14日、追悼、テント、人形

2020-11-14 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報

 11月14日、今日も亡くなったボンダレンコさんの追悼集会が続いています。

 ボンダレンコさんが拘束された団地の広場は「変化広場」と呼ばれています。

 ソ連時代の人気ロックグループ、キノーのヒット曲「変化」を大統領選挙前にチハノフスカヤ候補(当時)を応援するコンサート会場で流したDJ二人が、その後逮捕され、選挙当日も刑務所の中にいたのですが、そのときからこの二人は反政府活動のアイコンになっていたのです。釈放された後、二人とも身の危険を感じて、リトアニアに出国しました。

 しかし、団地の住人と思われる誰かが壁に二人のDJの肖像画を描いたのです。その後、その団地内には連日住人や噂を聞きつけた人が集まって、団地デモやミニコンサートを開いたり、みんなで「変化」をがっしょうしたりするようになっていました。そしてこの場所は「変化広場」と呼ばれるようになりましたが、すぐに政府から指示された団地管理局が、DJの肖像画を上からペンキで塗りつぶして消してしまいました。しかし、肖像画のテンプレートでもあるのか、翌日にはその上から肖像画が書き直されました。

 管理局がまた消すと、またその上に肖像画を描く・・・の繰り返しをもう3ヶ月延々繰り返しています。

 その変化広場の近くのフェンスには白と赤のリボンがたくさん結ばれていたのですが、それを外すために身元不明の男性グループ(おそらく政府支持派グループ。赤と白のリボンを取り外す作業を夜にしており、今ミンスク各地で出没している。)が11日夜にやってきたようすを住民がスマホで動画撮影し拡散。

 それを見た数名の住民が、グループに外さないでくださいと文句を言いに行きました。そのうちの一人がだったボンダレンコさんをグループは強制的に拘束。近くに停めてあったマイクロバス(護送車)で警察署へ。その後取調室で激しい暴行があったらしく、頭蓋骨損傷などの怪我を負い、警察は救急車を呼び、警察署から市内の救急病院へ運ばれました。しかし、医師は「助かる可能性は千に一つです。」と家族に告げました。数時間に渡る手術の甲斐もなく、翌日ボンダレンコさんは31歳の若さで亡くなりました。

 ボンダレンコさんは国立芸術アカデミーの卒業生で、子ども向けの絵画教室で絵を教えていたのですが、今は全国展開されている大手日曜用雑貨チェーン店の店長をしていました。(よくある「絵だけでは食べていけない」・・・でしょうか。)

 今は変化広場に絵筆を持ったボンダレンコさんの肖像画が描かれ、献花の山ができています。

 ところが今日はそれを消そうとする治安部隊が来るのではないかと、団地住民は心配して、順番に時間を決めて、見張りを立て始めました。

 夜間も見張りをするために、テントを張って中に見張り役の人がいます。

 今日はミンスクは雪が積もりました。(昼ごろ溶けましたが。)11月も半ば、気温も下がっているのに、こんなテントの中で見張りをする人の健康状態が気がかりです。

 

 変化広場だけではなく、ベラルーシの内外で、ボンダレンコさん追悼のろうそくが並べられました。しかし、今日、ミンスク市内で20代?の女性が、その追悼用のろうそく台を何十個の足で蹴散らかしていました。死者への冒涜行為ですよ・・・。このろうそく台は、墓参りのときなどに使うもので、日本でいうと線香を立てる専用の台と同じ意味を持つものです。

 しかし、その行為を誰かがスマホで撮影。動画がネット上で拡散。すぐに身柄がばれて住民によって、その女性が近くにいたところを捕まえました。おそらく動画を本人に見せて、

「これ、あんたがやったんでしょ。これが証拠だ。警察に電話しようか?」

と言ったと思います。しかし私の予想ですが、警察に連絡しても、

「この女性は死者追悼用ろうそく台を蹴散らかした。その死者とは反政府派で、公務執行妨害をしたボンダレンコ。だったら、この女性は善行をした。」・・・という発想になり、お咎めなしで、逆にほめられていたかもしれません。

 だからなのかどうなのか、捕まえた住民はその女性にゴミ袋をもたせ、蹴散らかしたろうそく台を片付けさせました。

 そして女性が黙々と片付けているようすをまたスマホで動画撮影し、それをネット上で拡散。「悪者は成敗しましたよ。」といったところでしょうか。

 日本でも自主警察なんていう新語が生まれましたが、ベラルーシでも一般人がそれをするようになりました。(ベラルーシではコロナが理由ではないですが。)ネットの力が大きいですが、やはり本当の警察への信用度が下がっているのも理由の一つでしょう。

 

 以前、反政府デモ集会をしていた女性グループを支援していたとして、ベラルーシの著名な心臓外科医、ムロチェク氏が強制的に病院を退職させられましたが、そのムロチェク氏の別荘が何者かによって放火されました。

 別荘は無人で、誰も怪我などせず幸いでしたが、焼け跡をムロチェク氏は写真撮影し、メディアに提供しました。延焼がひどく、とても住めそうにないぐらい燃えていました。

 しかし問題なのは次です。別荘のすぐそばに、水色の髪の毛の女の子の人形が置かれており、人形の目の下は血の涙を流しているように赤い絵の具(?)が塗られていました。胸のあたりにも赤い絵の具のしみが・・・

 その人形は1枚の紙を持っているように置かれており、その紙を開くと、ムロチェク氏に宛てたと思われる文面が並んでいました。

「もう誰もお前を守ってくれない。私はお前が責任を取るこのときを長い間待っていたのよ。・・・私一人だけではない、多くの人生がお前のせいで心を引き裂かれた。・・・お前がポケットにいくらの金を入れたのか、公表しろ。・・・これは神も知っていることだ。公表すればお前の財産とお前のそのちっぽけな命は守れるかもしれない。家は単なる手始めだ。」

 この文中の家というのは別荘のことだと思います。

 ムロチェク氏はベラルーシ一の心臓外科医で、手術を受けて命が助かった患者さんも大勢いるのです。無理やり解雇される前は病院長をしていましたし、ベラルーシ科学アカデミーの会員で、スカルィナ勲章まで受賞しているという医学界の大功労者なのです。

 メディアは「呪いのブードゥー人形」と形容していましたが、針などは刺さっていません。(髪の毛が水色の女の子の人形なので、「初音ミクのぬいぐるみだったらどうしよう?」とドキドキしながらニュース画像を二度見してしまった日本人の私・・・汗)

 この手紙の文面を読んでも、もう一つ要領を得ない書き方で、「意味はムロチェク本人なら、すぐ分かるだろう。他の奴らには分からんでもいい。」と思いながら書いたのかなあ、と思いました。水色の髪の女の子の人形、という人形の選び方にも何か隠された意味があるのかもしれません。これも「ムロチェクなら分かるだろう・・・なぜ女の子の人形なのか・・・。」と言いたいのかもしれません。

 文面では書いた人(放火犯)は女性らしいのですが、女性のふりをした男性である可能性もあります。

 「過去に娘の手術をムロチェク医師がしたが、失敗して死んでしまったのでその母親が積年の恨みを晴らすため、『お前、賄賂も患者から受け取っていただろう、それを公表しろ、ヤブ医者め! 他にもお前のせいで死んだ人がいっぱいいるんだよ。』と脅すために別荘に放火。そして人形と手紙(脅迫文)を置いていった。ムロチェク氏が公表しなかったら、今度は他の財産(自宅とか車とか)にも放火すると脅しているところ。死んだ娘は髪の毛を水色に染めていたか、あるいは娘が入院中も大事に持っていた人形に赤の絵の具を塗ってみた。」・・・というシナリオが私の頭に浮かんだのですが・・・実際にはどうでしょう?

 ムロチェク氏が神の手を持つ天才外科医であっても、手術を失敗することはあったでしょう。その線で過去の手術の記録を調べたら、放火犯にたどり着くかもしれません。

 でも脅迫文の中で犯人が一番訴えたいのは、手術の失敗の責任を取れ、ではなく、金銭譲受の事実を公表しろ、ですよ。

 ムロチェク氏の別荘ですが、成金趣味の広くて派手な別荘ではなく、ベラルーシによくある「田舎風」の質素なタイプです。賄賂をいっぱいもらった人が建てた感じの家屋ではないです。

 脅迫文について、ムロチェク氏は「全く心当たりはない。」としています。今まで脅迫されたこともないそうです。

 別荘に放火されただけではなく、こんな気持ち悪い人形まで置いていかれて、気の毒です。

 脅迫文を別解釈すると「お前は金をもらって反政府派に回ったな。多くの政府支持者が心を引き裂かれた。誰からどれだけの金をもらったのか公表しろ。」とも読めます。

 今の政治状況、ムロチェク氏が突然解雇された経緯も考え合わせると、実はベラルーシ政府の熱烈支持者がしたことかもしれません。反政府派が誰(あるいは外国)から反政府活動の資金援助を受けているのか聞き出したくて、ムロチェク氏をターゲットにしたのかもしれません。

 この推察が正しいとすると、どうして女の子の人形を置いていったのかが、よく分かりません。脅迫文だけでいいのに、人形に絵の具を塗って血の涙を流しているように細工するなんて手が込んでいます。悪意をわざと丸出しにして見せつけているようです。もし反政府活動資金を誰からもらったのか知りたいだけだったら、わざわざこんな人形を置いていかないと思いますが・・・

 犯人は「自主警察」気取りなのかもしれませんね。

 

 ベラルーシ大統領はメディアのインタビューで、「反政府デモはいつ終わりますか。」と質問され、

「いつまで経っても終わらない。なぜなら反政府デモ参加者は、バイト代をもらっている。だからデモをしているからだ。」と答えました。

 

 結局、反政府デモも政府支持デモもお金が全て、ということでしょうか。

 今日も政府支持者による国旗をつけた車の行進がビテプスク州で行われました。

 治安部隊員の給与、つまり1回の出動に対して与えられる報酬は900ドルだそうです。(私の月給よりずっと多い。)だから、反政府デモ参加者を警棒で殴るのは心が痛むけど、900ドルの報酬がほしいから治安部隊をやめません。やめたら支援団体から生活資金が支援されるけど、900ドルほど多くないからね、と考えている治安部隊員も大勢いることでしょう。

 この治安部隊に対する多額報酬ですが、これはロシアから借りたお金で賄っているのです。この借金をいつかベラルーシ国民は納税という形で返していかないといけません。

 しかし経済学者の中には、今ロシアから借りたお金も、反政府デモ活動が長く続くと、その分当然治安部隊の出動回数も増え、当然報酬を払い続けないといけない、そうすればいつか借りたお金も底をつく。それでも反政府デモが続いていたら、治安部隊に渡す報酬をまたロシアから借りないといけなくなる。しかし、ロシアが2回目の借金申し出をすんなり受け入れるとは思えない・・・という予想を立てている人もいます。

 もしデモ活動が長期に渡ると、いつか治安部隊員も報酬もらえないんなら、もう出動しない・・・になるでしょう。

 ベラルーシ政府は今回ロシアに借金をしたときに、だいたい◯ヶ月以内に反政府デモを鎮圧しますよ、それまで必要な治安部隊員への報酬は1回あたり900ドルで計算して、これぐらいになるから、その分貸してください、と見積もりを出したと思います。この◯ヶ月がどれぐらいの期間なのか、ベラルーシ政府が算出した数字なので、私には分かりません。

 


ベラルーシのコロナウイルス感染者11万2870人。死者数1039人。新規感染者数1200人台

2020-11-14 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報

 11月14日の書き込みです。

 ベラルーシのコロナウイルス感染者数は112870人になりました。1日の感染者数は1248人になりました。1200人台です。もちろん今までの最多記録更新です。

 死者数は1039人です。

 94337人が回復しました。

 

 ベラルーシではマスク着用が義務化され、店によっては入店もできませんが、あるスーパーでは入店はできるけれどマスクをしていないと、レジ精算受け付けません、という注意の張り紙がレジに近くに貼ってあります。

 それでもマスクなしでレジに並んでいると、レジ係から「マスクをしてないのでお会計できません。」と断られます。そして

「スーパーの中でマスクを売っているから、それをカゴに入れてレジに並んだら包装から出してマスクをしてそれから会計してください。」

と言われます。それでもマスクを買わないと、レジのそばに1枚20コペイカの使い切りマスク(もちろんペラペラの薄いタイプ)をレジ係が出してきて、売りつけます。買ってマスクを客がしたら他の商品の精算が始まる・・・という流れになっています。

 店や企業によって対応が違います。

 マスクなしでも入店はできますよ、の店では、マスクなしで入店する人も3割ぐらいおり、マスクなしで店内をうろうろ。レジに並ぶときにポケットからマスクを引っ張り出してあわててつける人も多いです。

 この人たちが店内でうろうろしているときに、くしゃみやせきをしたら、レジの前だけマスクをしても感染防止の意味がないですね。