ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

チロ基金の活動「ビタペクト&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第145回」

2013-03-05 |   ビタペクト配布活動
 3月4日にビタペクト3と「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピー無料配布運動として、SOS子ども村への第145回目の配布を実施いたしましたので、ご報告いたします。

 チロ基金がSOS子ども村でビタペクトを配り始めて、ちょうど10年になりました。
 これからも続けられる限りこの活動を続けていきたいです。

 今回はビタペクト3を5個、そして「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーを10部渡しました。
 これで今までに配布したビタペクト2、ビタペクトT、ビタペクト3の合計は1998個、「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーは1840部となりました。
 今回で通算157回目の配布となりました。
 延べ人数ですが、1998人の子どもにビタペクトを、1840家族に「放射能と栄養」のコピーを配布したことになります。

(これまでのビタペクト配布運動について、詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/bitapekt/index.html


http://blog.goo.ne.jp/nbjc/c/e1e67d76a4796f3c95377bb7bdabd215


(またこの活動報告を読むにあたり、「チロ基金の活動『ビタペクト2無料配布』について追加のご説明」も併せてご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/67c3b73ea2f30e880c3d4eb8bedded13


(ビタペクト2とビタペクトTについてはこちらをご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/5cab63b65562dd2f64a820a7e4298a0b


(ビタペクト3についてはこちらをご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/922c333857741c5448f66d4fe00b25e1


(チロ基金は以前ビタペクトに代わり、ペクチン入りセルロースを配ったことがあります。セルロースについてはこちらです。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/43f810eddd1efc451f5171ef3cd35a7a


(「チェルノブイリ:放射能と栄養」について詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/chel/index.html


(SOS子ども村についてはこちらをご覧ください。) 

http://belapakoi.s1.xrea.com/jp/no2/2001/soschild.html


(WBCによる測定、ビタペクトを開発、製造、販売しているベルラド放射能安全研究所の公式サイトはこちらです。)

http://www.belrad-institute.org/


(ベルラド研究所について日本語でご紹介している記事はこちらです。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/c382ef7eca8660531e895c8a646e7f2a


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%89%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80



 今回は2家族がSOS子ども村に保養滞在していました。それぞれの家族にお話を伺いました。

(家族A)

 ストルブツィ市(チェルノブイリ原発から約325キロ)から来た家族。お母さんが3人の子どもと1人の姪を引率していました。この家族には3個のビタペクト3を渡しました。
 それぞれの体重1キロあたりの放射能測定結果はこのとおりです。○印の子どもにビタペクト3を1個ずつ渡しました。

母親(事故発生時18歳)11ベクレル 
女子(12歳)22ベクレル ○
女子(11歳)21ベクレル ○ 
女子( 5歳)26ベクレル ○
姪 (12歳) 0ベクレル

 このお母さんには5人の実子がいますが、そのうち年少の3人を保養に連れてきていました。子ども達の健康状態についてききましたが、子ども達はよく風邪をひく、ということでした。実際12歳の女の子は風邪をひいている最中で咳をしていました。この女の子は風邪だけではなく、よく胃炎も起こしています。原因は分からないそうです。
 お母さんは健康に関心が高く、いろいろ勉強しており、特に
「ときどきデトックスをしていて、そのためにペクチンサプリを使っています。」
ということで、ペクチンのこともよく知っていました。
「ベラルーシ国民の5%しかサプリメントを利用していない、という統計の結果がある。」
とも教えてくれました。ベラルーシはもともとヨウ素欠乏症の人がとても多く、(国民の約8割)ビタミンも全て摂取できている子どもも10%もいないといわれています。
 サプリばかりに頼って食事がおろそかになっては意味がありませんが、サプリを上手に取り入れよう、という考えもベラルーシ人にはあまりないようです。
 理由としてはサプリメントが高価であることや、薬とちがって絶対飲まないといけないものではないということです。

 お母さん自身は5年前に子ども達といっしょにサナトリウムへ行ったときに家族全員が甲状腺の検査を受けたところ、甲状腺種が見つかりました。まだ大きさが小さかったので、投薬治療を受け、一度は小さくなって消えたのですが、また現れたので、再検査を受けて治療しないといけない、と話していました。
 ちなみにこのお母さんはストルブツィ市の生まれですが、事故が起きたときは大学に入学しており、ミンスクに住んでいました。

 この一家が住むストルブツィ市はミンスク州にあり、放射能汚染地域に指定されたことは一度もありません。
 ただストルブツィ地区にはホットスポットになっている村がいくつかある、とお母さんは話していました。
 その後私が2004年作成の汚染地図を確認してみましたが、そこでもストルブツィ地区には汚染地域が全くなかったので、お母さんの話が本当だとすると、ホットスポットがあったのは事故が起きて間もない頃で、その後汚染地域の解除を2004年まで受けたものと考えられます。
 
 お母さんの話によると、ストルブツィ市は甲状腺のほか、ストロンチウムのせいで関節や骨の病気の人が増えたそうです。
 子どもの3人に1人が背骨のゆがみなど異常があり、低年齢の子どもでも慢性胃炎を訴えるなど、普通ではない状況だと語ってくれました。

 汚染地域に指定されたこともないせいか、住民の放射能に対する意識は低く、学校でも被曝の話などほとんどしないそうです。
 お母さんは「もっと情報がほしい。勉強しないといけない。」と話していました。

 
(家族B)

 ミンスクに近いコロディシ(チェルノブイリ原発から約350キロ)から来た家族。お母さんが5人の子どもを引率していました。この家族には3個のビタペクト3を渡しました。
 それぞれの体重1キロあたりの放射能測定結果はこのとおりです。○印の子どもにビタペクト3を1個ずつ渡しました。

母親(事故発生時15歳)18ベクレル 
長女(20歳) 0ベクレル  
長男(17歳)21ベクレル ○
次男(13歳) 0ベクレル
三男 (7歳)25ベクレル ○
次女 (4歳) 0ベクレル 

 子ども達の健康状態について話をうかがいました。 
 お母さんは貧血気味。
 7歳の三男は2歳のころから左の腎臓から膿が出て、7歳まで治療を続けてきましたが、結局切除しました。今は経過を見ているところですが、健康ということでした。
 4歳の次女は扁桃腺がはれるなど、毎月1回は何かの病気になっています。
 17歳の長男は慢性胃炎。背中に黒いあざがあったのですが、腫瘍と診断され、切除する手術を受けました。その後良性だったと分かり、少し安心したそうです。

 このように心配したのはお父さんが3年前にがんのため死亡したからです。お父さんは38歳でした。ほくろだと思っていたのが実は皮膚がんで、切除したのですがすでに体のあちこちに転移が進んでおり、発症が分かってから4ヶ月で亡くなったそうです。

 ベラルーシで最も多いがんは皮膚がんです。皮膚がんそのもので死んでしまう人は少ないのですが、転移のスピードがとても早くて、手遅れになることが多い、とお母さんは話していました。

 お母さんは「最近は水疱瘡に2回かかる子どもが増えている。」と話していました。それは帯状疱疹では・・・と思ったのですが、そうではなく、「免疫力が低下すると水疱瘡に2回か2回以上かかる場合がある。」とリリヤ先生が話していました。
 やっぱり免疫力の低下が問題なんですね。

 お父さんが亡くなってからもお母さんは女手一つで子どもを育て、2部屋のアパートから一軒家に引越ししたそうです。多子家庭向けのローンを組んで家を建てて、ほとんど完成したということでした。
 
 このようにベラルーシでは多子家庭(未成年の子どもが3人以上いる家庭)への支援政策がいろいろとあります。
 家族Aのお母さんはストルブツィ市で多子家庭協会で働いており、とても詳しかったです。
 それによると子どもを5人以上産むと、「母親英雄」の称号と勲章がもらえます。これがあると、50歳で年金生活に入れます。(ちなみにベラルーシでは男性60歳、女性55歳で定年ですが、最近日本と同じで引き上げる話が出ています。)
 子どもの幼稚園代は50%免除、16歳になるまで毎月育児手当がもらえます。(地方自治体によって額は変わります。)学校の給食代は無料。
 大学に入学するとき、多子家庭の子どもは寮に優先して入れます。
 土地を持っている場合、土地税は免除されます。

 日本も少子化が問題になっていますが、ベラルーシの多子家庭支援策が、少子化対策につながっているわけですから、参考にしてほしいところです。

 画像は記念撮影のようすです。子どもたちに折り鶴や折鶴の作り方を説明した紙(千羽鶴プロジェクト)、折り紙用の紙をプレゼントしました。
 この前日はひな祭りで、ベラルーシではもうすぐ国際婦人デー(3月8日)でしたので、笛のついているお面や、お母さんにはエコバッグをプレゼントしました。
 それから日本の絵葉書の裏に子どもたちの名前を書いて渡しました。みんな大喜びで、自分の名前が日本語で書けるよう、早速紙に書いて練習していました。さらにマジックペンで腕に書いて「自分の名前の刺青」をする子どももいました。
 
 最後になりましたが、ビタペクト3の購入費、そして「放射能と栄養」をコピーするために必要な経費を寄付してくださった方々、折り紙や絵葉書、エコバッグなどのプレゼントを寄贈してくださった方、また日本ユーラシア協会大阪府連主催のバザーなどでSOS子ども村への交通費を捻出してくださった多くの日本人の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。
多くの方々に支えられて、この活動が続いています。
ベラルーシの子どもたちもお母さんたちもSOS子ども村の職員の方々も皆様に大変感謝しております。本当にありがとうございました。