電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第201回定期演奏会~ポーランドからの俊英~を聴く

2009年12月20日 14時32分39秒 | -オーケストラ
あちこちで大雪警報が出ていた師走の夜、山形市の山形テルサホールにて、山形交響楽団第201回定期演奏会を聴きました。今夜は、ポーランドの指揮者、俊英ミハウ・ドヴォジンスキを迎え、ルトスワフスキ「小組曲」、エルガーの「エニグマ変奏曲」、シベリウスの「交響曲第2番」という魅力的なプログラムです。
朝一番に雪かきを済ませ、午前中から親戚の法事でお昼に喪明けのご馳走を食べ(アルコール抜き)、午後は一休みをして演奏会に備えました。

プレ・コンサート・トークで通訳さんと一緒に登場した指揮者ミハウ・ドヴォジンスキさんは、それほど大柄な人ではありません。若い、俊英という表現がなるほどと思わせる30歳。ポーランドでは雪は珍しくないそうですが、山形の雪が今年初だそうです。ルトスワフスキは、山響からポーランドの曲を、という依頼に応えて選んだものだそうで、短いが甘美な曲。エルガーの「エニグマ変奏曲」は謎に満ちた曲、シベリウスの「交響曲第2番」ではフィナーレがお気に入りだとのこと。さて、どんな演奏になるのかとワクワク。
団員の皆さんが拍手の中で登場、勢ぞろいしたところへ、特別首席コンサートマスターの高木和弘さんが。一段と大きな拍手が起こります。
オーケストラの配置は、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、中央右にチェロ、右側にヴィオラ、その後方にコントラバスという弦楽セクション、ステージ中央奥へ木管、さらに金管と並び、右端のでかいチューバがピカピカで一段と目を引きます。ティンパニとパーカッションは左手奥に陣取ります。

最初の曲、ルトスワフスキ(1913-1994)の小組曲は、ポーランドの古都クラクフの東にある、マコフという村の民謡が使われているものだそうで、作曲されたのは1950年代でしょうか、前衛的なものというよりは親しみやすいものを感じます。以下、パンフレットを参考に、当方の印象を加えて。
第1曲「Fujarka」(横笛)、ピッコロが印象的な始まりです。私の席からは見えませんでしたが、ヴァイオリンとピッコロのリズムを刻んでいるのはティンパニ?それとも小太鼓なのでしょうか?
第2曲「Hurra Porka」(ポルカ)、リズミカルでいて軽くない、同じ音をタンギングするように繰り返すのですが、それが単純でないのです。こういう反復のしかたがあるのだな、と感心してしまいました。
第3曲「Piosenka」(歌)、クラリネットが低音で魅力的に始まります。フルート、オーボエ、ファゴットに弦が加わって、たしかに甘美な雰囲気と言えるかも。
第4曲「Taniec」(踊り)、弱音器をつけた金管から。途中にミステリアスな経過を経て、リズムに乗り盛り上がって早いテンポでフィナーレを迎えます。
若い俊英指揮者のお国もの、聴衆もあたたかい拍手をおくります。当方も、この曲の実演はもちろん初めて。録音でさえ、FM放送などでわずかに耳にしたことがある程度です。でも、すてきな現代曲ですね。ルトスワフスキの「小組曲」を、たいへん気に入りました。ドヴォジンスキさん、いい曲をありがとう!

さて、曲間に金管が増強され、次はエルガーへ。通称「エニグマ変奏曲」とされておりますが、「管弦楽のための創作主題による変奏曲《謎》」作品36というのが正式名称だそうな。名前が長い!ヨーロッパの世界大戦で用いられたドイツ軍の暗号機の名称が、たしか「エニグマ」だったはず。いかにも「黄昏の英国」風、実は金融市場の支配権をしっかりと保持していた大英帝国の矜持を思わせる、渋い名曲です。
当方、表されているという人名などにはとんと興味がありませんで、録音ではおなじみでも実演では初めての、アンダンテで奏される主題が変奏されていくさまを楽しみました。金管が活躍しますが、飛び出さずに全体の響きの中にとけこんで、でも埋没せずに音色を作ります。弦と木管がのどかで美しい音楽を奏でると、金管はお休みで、しっとりしみじみ、いかにも英国風黄昏の音楽。第6変奏のヴィオラや第12変奏のチェロのソロの旋律と音色がすてき。「全力を出し切って熱演しています」風ではなく、余裕を持ちながら実力をしっかりと発揮しているという風なポーズの英国紳士ふうでしょうか。
実は、当方、シンバル奏者の動きに注目しておりました。ジュワワ~というような音をどうやって出しているのか、興味津々。どうも、シンバルの左右を重ねたまま、丸くすりあわせて音を出しているようです。なるほど~。積年の疑問が解決し、これぞ実演の醍醐味です。フィナーレにおける、ジャーンというシンバルの爆発も、よけいに爽快に響きました(^o^)/

さて、15分の休憩の間も、オーボエの調整?練習?の音が聞こえます。次のシベリウスを意識してのことでしょうか。若い奏者の緊張感をピリピリと感じるところかも。

後半のプログラムは、シベリウスの交響曲第2番ニ長調、Op.43です。
第1楽章、アレグレット。弦のさざ波の中に、オーボエとクラリネットのソロがぴたりと決まります。いわゆるシベ2の始まりです。山響のシベリウスの蓄積は、村川千秋さんの「シベリウス・チクルス」時代から、かなりの回数があります。若い指揮者の解釈に応えるオーケストラは、表情にも自信と安定感を感じます。でも、音楽は真剣で集中力に富むものです。
第2楽章、テンポ・アンダンテ、マ・ルバート・バラード。静かなティンパニのトレモロに乗って、コントラバス(時々チェロ)のピツィカートからチェロのピツィカートに受け継がれ、ファゴットが加わります。さらにコルネットやオーボエ、クラリネット、そしてヴァイオリンと受け継がれていくあたりの様子は、いかにもシベリウス!山響の音は決して混濁しない。澄んでいます。こういうサウンドでの北欧の音楽は、北国の雪景色に似て、清冽な印象です。
第3楽章、ヴィヴァーチッシモ。第4楽章、アレグロ・モデラート。第3楽章から第4楽章へは続けて演奏されます。第1ヴァイオリンの速い動きに呼応して、コントラバスも。この音楽的な呼応の適確さ。そういえば今回はコントラバスが活躍する場面が多いような。ファゴット、ホルン等の支えの上で奏でられるオーボエソロが、いいなあ、実にのどかで!フィナーレへ続く息の長いクレッシェンドが次第に盛り上がっていきます。弦楽の旋律の上に、管楽器が色彩的な色を加え、引き潮のように弱まって行ったかと思うと徐々に力を盛り返し、クライマックスへ。もしかしたら、金管部隊は平均年齢が一番若いんじゃないかと思うほど、パワフルなfffの斉奏がかっこいい!

あー、いい演奏会でした。ここしばらく、悔しい野暮用や突発キャンセルなどで涙をのんでいただけに、オーケストラ音楽を満喫いたしました。終演後のファン交流会にも出たいところでしたが、妻が孫と子供たちを監督(?)に出かけて不在の自宅では、老母が一人で留守番をしておりますので、いそいで戻りました。

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4 コメント

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はじめまして (Zion)
2009-12-21 11:49:37
はじめまして。昨日テルサで行われたチャリティーコンサートで歌われた宮下通さんのことをぐぐったらたどり着きました。
山響の演奏会には今年の夏ふとしたきっかけで行かせてもらいそれ以来楽しみにしてます(仕事で行けない場合が多々ですが;;)
これからもちょくちょくのぞかせていただきますのでよろしくお願いします。
Zion さん、 (narkejp)
2009-12-21 19:30:00
はじめまして。コメントありがとうございます。宮下通さん、いいテノールですね。2005年夏の「コシ・ファン・トゥッテ」でも、フェランド役を大いに楽しみました。山響の演奏会は、万難を排して出かける決心でいるのですが、葬儀だけはね~待ったなしですから(^o^)/
このようなブログですが、よろしければまたおいでください(^_^)/
TBさせて頂きました (balaine)
2009-12-22 03:04:44
いつものように、だいぶ切り口が違いますが、TB致しましたのでよろしくお願いします。
balaine さん、 (narkejp)
2009-12-22 06:25:33
コメント、トラックバックをありがとうございます。さっそく拝見します。
>2009-12-22 03:04:44
しかし、すごい時間帯!病院勤務医の時代は夜勤があって、普通のことなのかもしれませんが、頭が下がります。

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