電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブルックナー「交響曲第9番」を聴く

2020年01月13日 06時01分56秒 | -オーケストラ
若い頃は、ブルックナーの交響曲に接する機会はあまりありませんでした。大学時代の恩師がブルックナーのファンで、オイゲン・ヨッフム指揮のLPを好んで聴いていたのは知っていたけれど、なにせ懐具合のモンダイで、LPで二枚組の曲なんて、そうそう買えませんでしたから(^o^;)>poripori

したがって、ブルックナーの音楽に開眼したのは少し後、結婚してUターンしてからでした。2枚組のLPが5,000円なのにCDなら1枚3,800円で買え、ひっくり返す手間もいらないというアホな理由で購入したのがブロムシュテット指揮ドレスデン・シュターツカペレによる第7番のDENON盤でした。これが良かった。その後、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管による第8番のCDもお気に入りとなり、近年は飯森範親指揮の山形交響楽団の定期演奏会で、初期から第7番までの交響曲だけでなく「詩篇」などの実演にも接することができ、CDも既出のものはみな揃えているほどで、当ブログの記事としても、第1番、第2番、第3番〜第8番までを取り上げています。

ただし、なぜか第9番はやや敬遠気味でした。とくに深い理由があったわけではなく、LPの時代にも1978年録音のヨッフム盤を所有し聴いてはいたのですが、雑誌等の紹介記事も「生への告別」とか「死への予感」とか辛気臭いものが多くて、あまり熱心にはなれませんでした。それでもブルックナーに開眼して40年、中高年世代になると少しずつ趣味嗜好も変化し、今はあまり抵抗なくこの曲を受け入れることができるようです。幸いなことに、LPのヨッフム盤だけでなく、簡易な PC-audio を通じて、パブリック・ドメインとして公開されているカラヤンとベルリン・フィルの録音(1966年)やカール・シューリヒト指揮ウィーン・フィルによる録音(1961年)なども聴くことができるようになりました。

第1楽章:荘重に、神秘的に。弦楽器のピアニシモから始まる出だしはカーステレオにはまるで不向きですが、自室のステレオ装置で少々音量を上げれば大丈夫。むしろ、来客の音が聞こえるように総奏時の音量に注意しなければなりません(^o^)/
第2楽章:スケルツォ、活発に、いきいきと〜速く。弦のピツィカートで奏されるリズムは、やがて驀進するようなエネルギーと力強さを示します。総休止をはさんでトリオへ。
第3楽章:アダージョ、ゆるやかに、荘重に。格調高いラジオドラマの背景に使いたくなるような、不思議な雰囲気を持った始まりです。様々な楽器で主題が取り上げられ、盛り上がって行きますが、最後はゆるやかな静けさの中に終わります。

いいですね〜。亡くなった恩師を思い出しながらヨッフム盤を聴くのも懐かしいものですし、60年代のカラヤンとベルリン・フィルのスタイリッシュな演奏も思わず聞き惚れてしまいます。個人的にはシューリヒト盤の演奏も味があり、好ましいと感じます。この曲が作曲されたのは、新潮文庫の土田英三郎著『ブルックナー』によれば1894年から95年にかけて、作曲家70歳の頃だとのことです。X線が発見され、無線電信が発明される頃です。なんだか、時代の背景をのりこえて鳴り響く音楽のように聞こえます。

YouTube にもありました。ミスターSことスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮フランクフルト放送交響楽団による演奏(2014年)です。
Bruckner: 9. Sinfonie ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Stanisław Skrowaczewski

コメント (6)