電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第261回定期演奏会でモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスを聴く

2017年05月15日 06時00分45秒 | -オーケストラ
ようやく雨が上がった日曜日、午前中に少し離れた園地で少しだけ桃の摘花というか摘果をしてから、早めに昼食を済ませて山形市のテルサホールに向かいました。山響こと山形交響楽団の第261回定期演奏会を聴くためです。

今回のプログラムは、「探求が生み出すケミストリー~巨匠カツァリス&鈴木秀美初共演!」と題して、

  1. モーツァルト:交響曲第34番 ハ長調 K.338
  2. ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37
  3. ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
    ピアノ:シプリアン・カツァリス、指揮:鈴木秀美、山形交響楽団

という内容です。



駐車場が混雑するので、早めに到着したのが正解で、ロビーコンサートもちゃんと聴くことができました。今回は、ジャン・クラの弦楽三重奏曲より、丸川倫代(Vn)、井戸健治(Vla)、渡邊研太郎(Vc)の3人の演奏です。ジャン・クラという人はフランスの軍人さんで、仕事の合間に作曲をしていた人らしい。ボロディンみたいなものでしょうか、曲はおもしろく聴きました。

恒例のプレトークは、鈴木秀美さんと西濱事務局長とのお話です。鈴木秀美さんは、古典派以前の音楽を古楽のスタイルで追求するという経歴から、実はプロ・オーケストラでブラームスの交響曲を指揮するのは今回の山響定期が初めてなのだそうです。でも、ブラームスの第4番の交響曲は、第4楽章でバッハのカンタータからコラールを取り入れるなどしていますので、古楽の立場からのアプローチは興味深いところです。そうそう、西濱事務局長の話では、山響のモーツァルト交響曲全集CDは、先月の定期演奏会で先行発売したときの売上が160セットもあったそうな。好調で何よりです。



さて、プログラムの始まりはモーツァルトの交響曲第34番です。楽器編成は、1st-Vn(8),2nd-Vn(7),Vla(5),Vc(5),Cb(3)の弦楽5部に、木管がOb(2),Fg(2)、金管はHrn(2),Tp(2)、それにバロック・ティンパニというもので、コントラバスを正面最後部に置いた対向配置です。
モーツァルト24歳、ザルツブルグ時代最後のシンフォニーは、指揮者が楽員に対し、それぞれ10代の頃を思いだして演奏してほしいと依頼したとのこと。輝かしさを保ちながら、内面のゆらぎを感じさせるものがありました。

続いて、ステージ上の配置が一部変更され、中央にピアノが引き出されてきます。聴衆の大きな拍手に迎えられて登場したのは、シプリアン・カツァリスさんです。シプリアンという名前は「キプロス人の」というギリシャ語が語源なのだそうです。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番は、8-7-5-5-3の弦楽五部にFl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(2),Tp(2),Timpという楽器編成です。
第1楽章が始まると、技巧のすごさを感じさせない自然で伸びやかな演奏に、思わず引き込まれました。でも、カデンツァはすごかった。なんだか妙なところに気づいてしまったのですが、カツァリスさん、イスがピアノと向き合う角度が妙に斜めになっています。左手(低音)側は鍵盤から離れ、右手(高音)側は逆に鍵盤に近づいていて、ちょっと斜に構えているような感じです。おそらくは、あの低音を響かせるために最も弾きやすい体の向きなのでしょう。
第2楽章の、夢見るような美しい主題にため息をつき、第3楽章の自由で軽快な演奏を堪能した後に、まさかああいうアンコールを聴けるとは思いませんでした。
アンコールは、なんと「ラ・マルセイエーズによるパラフレーズ」。新大統領の就任にちなんで、フランス国歌にしてフランス革命の歌でもある「ラ・マルセイエーズ」を主題に即興演奏を繰り広げます。いつのまにか、どこかでききなじんだ古いシャンソンになり、ああ、これは「枯葉」だな、こっちはジョルジュ・ムスタキだったろうか、若い頃にラジオで「午後のシャンソン」という番組があったっけ、などと思いだしておりました。思わずこのまま帰ってワインでも飲みたくなりました(^o^)/

休憩の後は、ブラームスの交響曲第4番。鈴木秀美さん、指揮台の少し手前でおじぎをして指揮台に登ります。いつもと違う雰囲気に、「ブラ4」演奏前の緊張が高まります。第1楽章と第2楽章は、指揮棒なしで優しくやわらかく、孤独や悲しみを感じるような表現です。第3楽章からは指揮棒を持ち、生き生きとしたリズムや澄んだ響き、それから特に第4楽章ではがっちりとした構成感を重視した音楽となっていました。なるほど、ブラームスへの古楽からのアプローチというのはあり得るなあと感じました。





終演後のファン交流会にも、大勢のファンがつめかけ、大人気でした。ピアノを習っている若い人たちはカツァリスさんへ、鈴木秀美さんのファンは「まだ東京でも発売されていない」という新しい著書『通奏低音弾きの言葉では、』を購入してサインをねだりに、つめかけておりました。当然、ワタクシも著者の署名本コレクションを充実させるべく、列に並びましたですよ(^o^)/



会場の出口に、SAY(さくらんぼテレビ)のドキュメンタリー番組の予告が出ていました。

6月2日(金) 19:00~20:00

これは「山響の活動を長期にわたり追った番組」とのことで、どんな番組になっているか、ぜひぜひ観たいものです。

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