電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第241回定期演奏会でチャイコフスキーとドヴォルザークを聴く

2014年12月15日 06時02分04秒 | -オーケストラ
衆議院議員選挙の投票日となった雪の日曜日、せっせと雪かきをして汗をかいた後で、山形交響楽団第241回定期演奏会(2日目)を聴くために、山形テルサホールに出かけました。本日のプログラムは、

(1) チャイコフスキー/歌劇「エウゲニ・オネーギン」作品24より「ポロネーズ」
(2) チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
(3) ドヴォルザーク/交響曲 第5番 ヘ長調 作品76
 イジー・シュトルンツ指揮、山形交響楽団
 ヴァイオリン:二村英仁

というものです。

選挙運動の期間中は、ホテルや料亭、飲食店も閑古鳥が鳴くのだそうですが、演奏会の方も多少影響を受けているのでしょうか、自由席のあたりに空席が目立ちます。それでも指定席のほうはいつも固定客が確保しているらしく、充分とは言えないがまずまずといったところでしょうか。

1曲目:チャイコフスキーの歌劇「エウゲニ・オネーギン」Op.24より「ポロネーズ」。華やかで、よく鳴る音楽ですが、ごく短い曲です。今回の曲目が、協奏曲といい交響曲といい、いずれもけっこうな長さを持っている音楽ですので、こういう短い曲を持ってきたということでしょうか。指揮のイジー・シュトルンツさんは、チェコ生まれ、長身でしなやかな指揮姿と、「大きな音を重ねるよりも、引き算していって声を浮かび上がらせる」歌劇場での指揮の特徴がうかがえる音楽作りが印象的(*1)でした。楽器編成・配置は、ステージ左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、右後方にコントラバス(3)という通常配置です。正面奥に、フルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)、その奥にホルン(4)とトランペット(2)、最奥部にはティンパニとトロンボーン(3:うち1はバス・トロンボーン)というものです。コンサートマスターは高橋和貴さんで、犬伏亜里さんは今回はお休みのようです。

2曲目:チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。独奏者の二村英仁さんは、スラリとした長身で、イジー・シュトルンツさんにも負けていません。ステージに並ぶと、私など思わずうらやましくなりそうな(^o^;)二人です。第1楽章:アレグロ・モデラート~モデラート・アッサイという指示ですが、ややゆっくりめのテンポで、堂々と始まります。そして、なんとも見事な独奏ヴァイオリン! 第2楽章:カンツォネッタ、アンダンテ。オーボエとクラリネットとファゴットにホルンが加わり、独奏ヴァイオリンが molto espressivo に入ってきます。クラリネットが低く太い音を聴かせるあたりは、ぞくぞくするほどステキです。独奏ヴァイオリンと各パートのトップとが織りなす緻密で繊細な響きのところなどは、この緩徐楽章の醍醐味でしょう。第3楽章:フィナーレは、一転してアレグロ・ヴィヴァチッシモで。二村さんにもオーケストラにも、勢いと活力があります。シュトルンツさんの指揮も、リズムが明快でとてもわかりやすく感じました。

聴衆の拍手に応えて、二村英仁さんのアンコール。パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番から、第3楽章だそうですが、いや~、唖然呆然、呆気にとられるほどの見事さでした。



15分の休憩の後は、3曲目のドヴォルザーク「交響曲第5番 ヘ長調Op.76」です。この曲は、だいぶ前から当方お気に入りの音楽となっており、すでに記事にもしております(*2)が、もちろん実演は初めてです。楽器編成が少し追加され、まだ若そうなクラリネット奏者がバス・クラリネット持ち替えで加わるとともに、ティンパニの左にトライアングルが座ります。もしかしたらチェロも増えていたのかな?
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。おなじみの出だし、明るく前向きで希望にあふれた音楽。こういう音楽は、長距離通勤の友として好ましいというだけでなく、実際の演奏会でも実に魅力的に響きます。第2楽章:弦と木管による実に美しい、優しくやわらかい音楽を聴くことができます。こういうノスタルジックな世界は、まさにドヴォルザークの魅力です。第3楽章:アンダンテ・コン・モト・クアジ・リステッソ・テンポ~アレグロ・スケルツァンド。トライアングルが活躍します。劇場で場面が転換するように、沸き立つような活力がふきだす、印象的なスケルツォです。第4楽章:フィナーレ、アレグロ・モルト。短調で劇的に始まります。喩えが変ですが、騎馬軍団が救援に駆けつける場面に使ったらかっこいいだろうと思える始まりです。さらに演奏が進んで、途中のオーボエからバス・クラリネットが受けるところは、すごく印象的です。そして田舎風ののどかさの後に、再び冒頭の主題をうまく再現して高らかに高揚し、終わります。わーお!ブラーヴォ!

イジー・シュトルンツさん、アンコールに第3楽章のアレグロ・スケルツァンドを選びました。沸き立つような舞踊のリズム。良かった~(^o^)/

終演後のファン交流会では、二村さんが東日本大震災の復興には十年はかかることから、経験を風化させないよう、息長く支援することの大切さを訴えました。



今回で4回目(演奏会は3回目)の来県となる指揮者のイジー・シュトルンツさんは、山響とファンクラブの忘年会に参加した話で笑わせてくれました。たしかに、日本風の忘年会は、チェコ出身のシュトルンツさんには思わずカルチャーショックだったかもしれません(^o^)/



本当は、二村さんのCDが欲しかったのですが、すでに売り切れてしまったらしく、残念でした。帰路はまだ雪もさほどではなく、運転もあまり恐い思いをしないで帰宅することができました。

(*1):山響第223回定期演奏会でスメタナ、ベートーヴェン、ドヴォルザークを聴く~「電網郊外散歩道」2012年8月
(*2):ドヴォルザークの「交響曲第5番」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年5月

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