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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

DVDで「腕におぼえあり」を観る(2)

2014年02月02日 06時09分19秒 | -藤沢周平
藤沢周平著『用心棒日月抄』を原作とする時代劇「腕におぼえあり」を、DVDの第2巻で観ました。当方は今ごろになって観ていますが、NHK-TVで1992年に放送された番組だそうです。

第5回「夜の老中」
第6回「内儀の腕」
第7回「愛ふたたび」
第8回「代稽古」

このうち、第5回の「夜の老中」は、BS-2で再放送されたとき(*)に、一度観ていますが、他の回はまったく初めてです。
用心棒仲間の細谷源太夫が負傷することとなった、小笠原佐渡守の警護役を引き受けたことから、浅野の刃傷事件に対する柳沢吉保の裁定をこころよく思わない幕閣内部の対立の象徴として小笠原佐渡守を当てていますが、このあたりはおもしろくしようとする番組なりの工夫でしょう。
例の、「少々、夜遊びが過ぎはいたしませんでしょうか」「今夜のことは、天下のご老中がなさることとは思えませぬ」という又八郎の名台詞をはじめ、このあたりはかなり原作に忠実な展開になっておりますが、視聴率を気にするテレビの宿命を感じさせる改変もありました。

具体的には、第7回「愛ふたたび」などは、原作にそんな章はないですし、又八郎の婚約者由亀の弟・麟之丞については、原作にこんな登場人物がいただろうかと不思議に思いました。役者のほうも、たしかこの頃に人気者だったアイドルを起用しており、演技はあまりうまくない。正直に言って、アイドルの出番を作るためのストーリー改変は、結果的に物語の緊張感が水増しされた味になってしまっていると感じます。

たしかに、父親を斬った婚約者を信じ、慕いつづける娘心には無理があるのではないか、という点を、原作の問題点として指摘することは可能かもしれません。それを、番組の脚本では、弟を登場させ家督を継がせることで、当然起こるべき仇討ちの話を具体化し、姉・由亀へ横恋慕するサディスティックな剣客という形で大富静馬を絡ませています。このあたり、理屈の上では合っていますが、どうも説明的で通俗に感じます。その結果、逆に由亀が娘一人で江戸から国元へ帰るという無理な想定(*2)を引き起こしてしまっており、必ずしも成功しているとはいえないでしょう。

そこへいくと、原作にほぼ忠実な回の緊張感と密度感は格別です。骨組みがしっかりしていると感じます。

(*):BS-2で「腕におぼえあり」を見る~「電網郊外散歩道」2007年9月
(*2):たしか、江戸時代は「入り鉄砲に出おんな」を特に警戒したのではなかったか。

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