電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋義夫『眠る鬼~鬼悠市風信帖』を読む

2011年12月26日 06時03分37秒 | 読書
以前、高橋義夫著『かげろう飛脚』という時代小説を面白く読みましたが、これと同じ「鬼悠市風信帖」シリーズの『眠る鬼』を読みました。どうやらこちらの方がシリーズの始まりらしく、北国の松ヶ岡藩の藩主の菩提寺の竹林に住む足軽目付、実は竹籠を編んでは当代一流の名人であるだけでなく、戦国時代より伝わる古流奥山流を受け継ぐ六尺豊かな大男、鬼悠市の説明もかなりていねいです。

中公文庫版『眠る鬼』は、九編の連作短篇からなる体裁を取っています。
第1話:「鬼の鳥籠」。いきなり暗殺の話です。松ヶ岡藩も、海坂藩と同様に、お家騒動や内紛の火種が尽きないところらしいです(^o^)/
第2話:「笛を吹く鬼」。組頭の竹熊与一郎は、とかく殺伐としがちな話の中で、ユーモラスな味わいを出す役割でしょうか。鬼に直々に命令する奏者番の加納正右衛門は、どうやら忍びの者たちからなる「黒鍬組」を動かす立場らしい。
第3話:「鬼の化粧」。竹林に尼さんが鬼を迎えにやってきます。これだけで、もう作者の年配者らしいユーモアが見え隠れしますが、元藩主の側室だったお由良が招いたものでした。鬼が女装して尼さんを守る図はユーモラスなものですが、実際には命を狙ってくる相手がわからない不安と緊張感が漂います。
第4話:「闇を走る鬼」。組頭の竹熊と奏者番の加納が二人とも出番があり、江戸からの刺客との争闘が闇の中で展開されます。鬼の強さを初めて知った組頭の竹熊さんは、さぞや驚いたことでしょう。
第5話:「鬼の相場」。ろうそく作りの茂兵衛が米相場に手を出したあげく、多額の借金を抱えてしまいます。なんだか最近もどこかで聞いたような話ですが、算法に弱いはずの鬼が差金の使い道というカラクリを見抜くことができたのは、やっぱり鬼の眼力でしょうか。でも、二百両で笛を買うと言われても、相場という言葉に反発してつむじを曲げるとは、鬼さんの器量もあまり大きくはなさそうなのですが(^o^)/
第6話:「子を誉める鬼」。柿太郎クン、偉い!鬼でなくても、思わず賞賛してしまいます。浜田ひろすけの「泣いた赤鬼」を思わず連想してしまいました。
第7話:「迷い鬼」。元藩主の側室のお由良さん、必死の色仕掛けです。子を思う母は強いと言うべきでしょう。でも、お子はそのまま育てられたほうが幸せでしょうなあ。
第8話:「鬼の檻」。鬼悠市も思わず不覚を取ることもある。そんな章でしょう。槍の岡崎。でもたしかにリベンジを果たしました。ところで、三昧堂とは、鶴岡市の致道博物館のわきにあった三昧庵から取った名前ではなかろうか。あそこの麦切りはうまかった(^o^)/
第9話:「鬼の見る夢」。藩主の養子縁組はととのいますが、残党の動きは残ります。奏者番の加納正右衛門の制止は、後に禍根を残さないのか。それはともかく、鬼さんも近頃は悪い夢を見ないそうで、やっぱり平和がなによりです。

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