電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

メレシコフスキー『ダ・ヴィンチ物語』下巻を読む

2011年08月26日 06時02分08秒 | -外国文学
ロシアの作家メレシコフスキーによる『ダ・ヴィンチ物語』下巻を読みました。

第9章:「分身」。ジョヴァンニ・ベルトラッフィオは、サヴォナローラの火刑を経験し、レオナルド・ダ・ヴィンチのもとに戻りますが、レオナルドは経済的に困窮していました。
第10章「波紋」。アルプスを越えて、フランス軍がロンバルディアに侵入し征服します。レオナルドの作品は破壊を受け、モーロ公はミラノから脱出します。
第11章「いずれ翼は」。断片的ですが、レオナルドの半生が描かれます。そして、レオナルドらはフィレンツェを離れ、ロマーニャに向かいます。
第12章「皇帝か無か」。この章では、マキャヴェッリとチェーザレ・ボルジアという登場人物の造型が印象的です。優雅な悪の化身チェーザレ・ボルジアと、口舌の徒マキャヴェッリ。
第13章「赤い獣」。ローマ教皇の枢機卿の間に飾られた様々な絵画は、実は神と獣とを同列に並び描く、異教的な雰囲気のものでした。そして教皇は亡くなります。
第14章「モナ・リザ」。レオナルドは、ジョコンダ夫人の肖像を熱心に描きます。夫人もまた、レオナルドに協力することに喜びを見出しているようですが、期待は実現せず、夫人は旅先で病死してしまいます。
第15章「宗教裁判」。レオナルドは再びミラノに移ります。ジョヴァンニはカッサンドラと親密になりますが、彼女は異端狩りに遭い、宗教裁判所に捕らえられていました。レオナルドの名声に反発するミケランジェロや、レオナルドを尊敬するラファエッロなど、若い世代が登場します。
第16章「イタリアでの最後の年月」。ローマで、レオナルドはアストロと同様に心を病み亡くなったジョヴァンニを葬ります。身の回りの世話をしてくれるフランチェスコの存在が助けです。
第17章「翼をつけた先駆者の死」。フランス王はモナリザを所望しますが、辛うじて手元に残すことができ、あとは洗礼者ヨハネを完成しようと、最後の時を過ごします。



本書で描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチは、早すぎた天才であり、理想を追い、当面の完成として現実に終止符を打てない優柔不断さが特徴的で、なにやら隠者のような抽象的な存在です。待望の本を期待して読了しながら、期待が大きすぎたのか、それとも作家と読者の相性というのか、どうも釈然としない終わり方です。

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