電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

エルガー「愛の挨拶」を聞く

2006年12月05日 19時10分35秒 | -室内楽
年末は何かと気ぜわしくあわただしいのですが、こういうときに室内楽の小品を聞くとほっとします。たとえばエルガーの「愛の挨拶」など。

1888年に作曲されたこの曲は、もともとピアノ曲だったそうですが、ピアノ伴奏つきのものや、オーケストラにも編曲されているとのこと。私がよく聞くのは、「ヴォカリーズ~ヴァイオリン名曲集」(*)というタイトルのチー・ユン(Vn)と江口玲(Pf)の演奏(DENON COCO-70458)と、最近入手したグラモフォンのパノラマシリーズから、エルガー作品集です。こちらはギル・シャハム(Vn)とオルフェウス室内管弦楽団の演奏(UCCG-3807/8)。

解説によれば、なんともチャーミングなこの曲、結婚を前にアリス・ロバーツ嬢に捧げるために書かれたのだとか。ところが献呈はキャリス嬢になっているそうで、実はキャロライン・アリス・ロバーツ嬢の愛称が「キャリス」だった、というおちがついていました。

音楽は、若者らしい愛と善意にあふれたもので、聞いているあいだはしばしの幸福な時間となります。チー・ユンが速めのテンポで演奏する「キャリス嬢」は、さしずめ美しいが気も強く、喧嘩するとこわそうなお嬢さんでしょうか。室内オーケストラをバックにしたギル・シャハムの演奏を「キャリス嬢」にたとえれば、相対的には遅いテンポで、育ちがよく気分の安定したお嬢さん、といった感じです。

田舎の貧乏なヴァイオリン教師だったエルガーは、この作品をわずかな金額でショット社に売ってしまいましたが、同年に出版されたこの小品は実によく売れたのだそうです。チャップリンの映画みたいですが、世の中はえてしてそんなものですね。でも、大金持ちになるだけが幸せではないと思いますです、ハイ(^_^;)>poripori

■チー・ユン盤 2'23"
■ギル・シャハム盤 3'03"

そういえば、チー・ユン盤については、以前に取り上げたことがあります。演奏している曲目などは、こちらのとおり。
(*):チー・ユンの「ヴォカリーズ」を聞く
コメント (2)