評価 (3点/5点満点)
この本はまったくの初心者でもわかるように、決算書の読み方を解説するものです。
著者は国税局に10年間、主に法人税担当調査官として勤務されていた方です。税務署員目線で決算書を読むというのは、「素早く決算書の内容を掴む」「本当に儲かっている企業を探す」ということ。
税務署の調査官は、決算書の隅々まで見たり、細かい分析をしたりはしません。3か所のポイントをさっと見るだけなのです。
それは、ズバリ「売上」「利益」「現金・預金」です。
決算書が読めるようになれば、企業の経営状況がわかるようになるだけではなく、世の中の見方も変わると思います。
たとえば、日本は先進国の中で唯一、この20年間で平均賃金が下がっています。企業業績は決して悪くなく、外貨準備も世界最高レベルで積上げているにも関わらず、です。
日本経済全体では、たくさんお金を稼ぎ、たくさん蓄えているのに、それが国民に還元されていない。だから日本がやらなくてはならないことは「経済成長」ではなく、賃上げなのです。賃上げをすれば消費も増えます。消費は増えれば景気も良くなるのです。
私も現在経理の仕事をしていますが、会計の上級者にとっても重要な知識がかなり含まれた1冊です。
【my pick-up】
◎「基本的な勘定科目を数年で見比べること」が、正確にその企業の異常値を示してくれる
いくつかの勘定科目を数年分比較してみると、企業会計の矛盾があぶり出されるのです。企業が決算書に何らかの細工をした場合、どこかの勘定科目が異常に増減するのです。たとえば、売上を水増しして粉飾している場合は、売掛金が急に膨れ上がることがあります。また、経費を誤魔化した粉飾をしているときには、在庫が急に増えることがあります。ですから、数年分の決算書を比較し、急に増減している勘定科目がないかどうかをチェックするのが、税務署員の決算書の基本的な見方なのです。決算書の真偽を確かめるときには、それがもっとも手っ取り早く実践的な方法なのです。
◎あと5つだけ勘定科目を覚えてください
「売上」「利益」「現金・預金」を追うことでつかんだその決算書の本質について、もう少し詳しく分析するために、あと5つばかり勘定科目を覚えていただきたいと思います。その5つとは「原価」「一般管理費」「人件費」「売掛金」「利益剰余金」です。この8つの勘定科目を覚えておけば、決算書の内容はほぼ理解できると言っていいでしょう。
◎四半期決算を見比べてみよう
四半期決算書で、もっとも重要な見方は、最終期の収益の動きです。事業年度の途中で、あらかじめ粉飾や脱税を行うというような手回しのいい企業は、多くはありません。ほとんどの粉飾企業は、決算期に近くなってから、業績の趨勢がわかってきて、不正工作を始めるのです。だから、必然的に、不正工作は期末に集中することになります。粉飾決算をしている企業の多くは、第3四半期までは赤字で、第4四半期に急に黒字になるというパターンをたどっています。
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