厳選!ビジネス書 今年の200冊

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2020年124冊目『ウィニング・アローン』

2020-05-30 18:30:17 | おすすめビジネス書

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評価 (3点/5点満点)

スプリント種目の世界大会で、日本人として初めてメダルを獲得し、3度のオリンピックを経験した為末大さんが、自分を心や身体をつくるもの、勝利をもたらすものについて振り返り、自己理解の重要性、そこからパフォーマンスに繋げる方法を語ります。
 
・引退した選手のオリンピックへのかかわり方として最もわかりやすいのは強化コーチとして、あるいはメディアでの解説者として、というものである。私はできるだけ多くの選手のパフォーマンスの向上に直接かかわりたいと思ったので、この2つの選択肢ではなく、第三の道を選んだ。それは、自らの幼少期から引退までの全競技人生を通じて掴んだことを言語化するということだ。
 
・私は現役時代のほとんどの間、コーチをつけなかったので、ずっと自分の身体で実験をやってきたようなものだった。
 
・自分の競技人生を振り返って感じるのは、自分を知ることの重要さだ。自分を知れば知るほど、短所と思っていたものが、じつは長所と一体であることがわかってきた。また、私は短所と思っていたものが長所として活かされるような場所を選んで戦ってきた。
 
為末さん自身がどうやって試行錯誤をしたか。失敗したことや後悔していることも含めて正直に書いたと言います。
 
新型コロナウイルスの動きはコントロールできないものの最たるものです。となると、じつは選手はそれを気にすることはほとんどないということになります。結局、日々の練習を淡々とするということしか選手にはできないし、それこそがやるべきことなんだと思います。
 
【my pick-up】

◎日本の特徴

継続
継続とは我慢であり、執着でもあり、また決断ができないことでもある。日本人は、それまで続いてきたものを、これからも当たり前のように続けるという性質が強い。この性質が最大にプラスに働くのは、技術系競技だ。また、我慢が必要な長距離系にもプラスに働く。継続するということは、止められないということでもあり、計画し過ぎるということでもあり、変化できないということでもある。いま思いついたことをその場で試してみるということが苦手で、創造性が必要とされるような競技が苦手、思い切った決断などが苦手という印象がある。いざというときの1回で大きな力を出すことが不得意になる傾向にある。継続の力によって成長の段階で平均に寄せられてしまうからだと思う。

マニアック
大きく捉えて、要点を掴むことが苦手なので、シンプルな競技では後れをとっている。ざっくりと全体を捉えて思いっきり力を出す、という動きができない。細かいことにこだわり、ものごとを複雑にし過ぎてしまう。

集団情緒的
モチベーションの理由を外部においたほうが日本人は頑張れる傾向にあると思う。悪く出るのは意思決定の局面だ。データの正しさよりも、人の心情を察した意思決定を行う傾向にある。
私は日本人の特性が最大に活かされるのは、少人数の集団で、細かい技術や意思疎通を必要とし、競技自体に歴史があり、革新的な技術が生まれにくく、漸進的な改善が効くような場面だと考えている。陸上でいえばリレー競技がこれにあたる。
 
◎敗北後の整理について

敗北後の整理は、簡単に言えば以下の3段階にまとめられる。
1.振り返り:事実の把握
2.分析:課題設定
3.対策:具体的な今後の計画
スポーツにおいての学習とは、起きたできごとをどのように捉え直すかであり、それは徹底した事実の把握と、合理的な分析と、具体的かつ端的な対策で決まる。
 
◎目標設定

悪い目標の典型は、「今シーズンは絶対諦めないで走る」といったものだ。これは気持ちの表明でしかない。中学生程度であれば気持ちの表明でもいいが、このような達成されたのかどうかすら評価できない目標はトップを目指す選手には気分を高揚させる効果しかない。目標設定をよく観察していると2種類あることがわかる。1つは、ターゲットとしての目標、もう1つはそのぐらいの意気込みでやりますという願望としての目標だ。ターゲットとしての目標はそれを達成するために設定される。達成できるものを目標にしている以上、できない場合、必ず原因があるはずだと考えなければならない。ここで重要なのは仮にうまくいっても振り返り分析をしておくことだ。目標からずれたという点では、上振れも下振れも変わらない。一方、願望としての目標はほとんど達成されることがない。願望としての目標は達成できなかったとき、原因を探してみても、そもそもの目標が高過ぎたからということにしかならない。願望としての目標は現状から出発しておらずこうであったらいいなというものなので、自分のリソースについても敵についても乖離が大きい。私は日本的根性論とは、この願望の目標とターゲットとしての目標の違いがわからなくなり、空気とノリで戦略が決まってしまった状態から生まれると考えている。

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2020年123冊目『ビジネスデザイン』

2020-05-30 18:20:56 | おすすめビジネス書

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評価 (3点/5点満点)

この本では、ビジョンを起点としたビジネスデザインの方法についてITの観点も含めて説明します。具体的には「ビジョン設計」「プロセス設計」「IT要件定義」という手順で進めていきます。

ビジネスデザインとは「仕事を設計する」こと。問題を設定するには理想が必要になります。では理想は何から導き出されるかというと、ビジョンです。ビジョンとは、「なぜ、私たちはそれを顧客に提供するのか」を明確にすることです。

つまり、ビジネスデザインとは、ビジョンを起点にして各パーツの論理的な一貫性を考えることになります。
 
また本書の狙いは、非ITな人でも、ITが当たり前の時代に、自分の仕事をより良くするというところにもあります。ITの本質は、プロセス・イノベーション。つまり中抜きで、その結果がエンドツーエンド(需要と供給の直結)であり、セルフサービスの推進につながります。中抜きの対象になって自分が「要らん子」になってしまわないようにしなければならないのです。
 
私たちは、ビジョンの実現を目指して仕事をします。
そのビジョンとは●●●●●です。
私たちは、顧客に対してこのような価値を提供します。
●●●●●
これによって、顧客が●●●●●に
なることを支援します。
そのために具体的に提供するものが
●●●●●
です。
 
いつかの未来にこうありたいのだと、それを想像するだけでワクワクする。閉塞感や不安や困りごとや悩みごとを「仕方ないなぁ」と感じながらも、それらと向き合おうとする自分をワクワクして応援できる。
 
本書のビジネスデザインを通じて、幼いころにはあったあったワクワク感をまた取り戻せればいいですね。
 
【my pick-up】

◎自分たちが本当に顧客に提供すべきものは何か

たとえばあなたが、経理部に所属していて、各部署に月次資料を提供しているとして、経理の側では気を使っているつもりでせっかくだからと見目麗しい罫線でお化粧したエクセルのファイルを作っているとしましょう。もし各部署の人たちは最後の1行の数値しか見ていないとか、あるいは実はCSVファイルとして使いたいので受け取ったあとでCSV形式で保存し直しているというような場合は、美しい見た目に仕上げるよりも必要な数値だけを渡すか、はじめからCSVファイルを作るほうが、より相手の困りごとの解決に良い結果をもたらすかもしれません。
 
◎状態が変わるという成果

「検品済シールを貼る」「確認済の印鑑を押す」というのが仕事だと勘違いすることもあります。「〝問題のない状態である〟ことがひと目でわかる状態にする」ために「検品済シールを貼るという活動」を行うのです。大事なのは検品済のシールを貼るのが目的ではなく、「そのシールが貼られているということは問題のない状態の製品なのだ」と自信を持って言い切れることです。それこそが本当に得たい成果です。「状態を変える・状態が変わる」というのは立派な仕事なのですが、状態とは物理的に把握できないためにシールやハンコなどの物理的なもので補完されたりすることも多いのです。しかし手段の目的化・本末転倒とならないためにも、「状態」というものに意識を強く持つことは仕事を考える上で大切なポイントです。
 
◎「ITが当たり前」とは

「ITありき」でプロセスを設計するとはどういうことかというと、ITが当たり前にやってくれることを大前提にするということになります。「一瞬で情報がみんなに伝わる」「欲しい情報は最新のものが常に得られる」ことが当たり前のプロセスにする。基本形を設計するにあたって、「人間ありき」ではなく「システムありき」で考える。ITを導入して楽になりましょうという話になると、「面倒くさくてややこしい例外処理はコンピュータにやらせたい」「人間は単調なことを黙々とやっていれば済むようにしたい」と現場の声の大きな人が言ってプロジェクトがスリップ(空転)しているケースに出会うことがたびたびあります。しかしこれらは本質的にナンセンスで、それぞれが苦手なことをやろうとしているのです。
コンピュータが得意なこと:定型処理を超高速で、正確に、大量に、何時間でも繰り返す
人間が得意なこと    :非定型なことを何とかうまく乗り切る
どうしても事前に想定してシステムに組み込めないような例外処理を人間が助けてあげるというスタンスに立つほうがいろいろと幸せになれるはずです。

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