厳選!ビジネス書 今年の200冊

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2016年131冊目『働かないアリに意義がある』

2016-07-20 21:53:43 | おすすめビジネス書

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評価 (3点/5点満点)

この本は、真社会性生物の世界を初心者の方にも分かりやすく紹介するのが目的です。真社会性生物とは、繁殖を専門にする個体と労働を専門にこなす個体からなる、コロニーと呼ばれる集団をつくる生物です。

著者の長谷川英祐さんは、進化生物学を専門として、生物が示す様々な性質が「なぜ」「どのようにして」進化してきたのかを明らかにしていきます。

「働かないアリ」について学問的に意味がある部分は、彼らが一義的に長期的存続が重要であり、そのために短期的効率を犠牲にしている点です。ビジネス書でこのようなアリの習性がよく登場しますが、人はムシの生き方から、様々に教わることが多いのです。

【my pick-up】

◎「2:8の法則」は本当か

働くものだけを取り出してもやはり一部は働かなくなる、という現象は、人間における社会学の領域で「2:8の法則」とか「パレートの法則」と呼ばれており、まことしやかな伝説としてはとても有名ですが、少なくともシワクシケアリの世界では実在する現象だったわけです。原因はやはり働きアリのあいだに存在する、仕事への反応性の個性のせいだと考えられます。極端な個体を抜き出したコロニーも、やはりその個体のあいだには仕事に対する反応性の違いが少しではあるけれど残っています。したがって、働くもの、働かないものだけにされてもやはり一部が働き、一部は働かないようになってしまうのです。

◎みんなが疲れると社会は続かない

誰もが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、長期的な存続が可能になり、長い時間を通してみたらそういうシステムが選ばれていた、ということになります。働かない働きアリは、怠けてコロニーの効率をさげる存在ではなく、それがいないとコロニーが存続できない、きわめて重要な存在だといえるのです。重要なのは、ここでいう働かないアリとは、社会の利益にただ乗りし、自分の利益だけを追及する裏切り者ではなく、「働きたいのに働けない」存在であるということです。

コメント
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