もーさんのひとりごと

ここでは工作に関する話の他に趣味の家庭菜園の話、時事(爺イ)問題、交友禄など日々の雑感を気まぐれに更新していきます。

根岸の里の侘び住まい

2010年12月04日 | まち歩き

Photo

・・根岸は田舎で空気が澄んでいてうまい。

辰己屋の別宅ニ来たのは二日前だが、まわりには畑と百姓家がぽつりぽつりあるだけで、曲がりくねった畑中の道を歩いて行くと、道は雑木林に入り、その中を小流れが音を立てて横切っていた。

 ―中略― 

 雑木林を抜けると、その先にも武家の隠宅と思われる黒板塀で囲った屋敷があったり、辰己屋の別宅のように、生垣をめぐらした家があったりした。

藤沢周平の「刺客/薄暮の決闘」には主人公の青江又八郎が用心棒として赴いた根岸の景観をこんな風に書いている。

 ところで、前回のブログで書いた根岸社会教育館での工作教室は午後2時からだったが、私は朝から家を出て午前中は根岸の町を2時間も歩き回ってきた。 

根岸は冒頭のように時代小説の舞台ばかりではなく、古典落語「茶の湯」(大店の隠居が根岸に隠居所を作って・・・)、「お若伊之助」(根岸お行の松の狸塚・・・)。

W2 W

御行の松(おぎょうのまつ)とその脇にある狸塚。

狸塚は円朝のフィクションで、狸塚は後世の人がシャレで作ったものという

また、「○○や 根岸の里の 侘び住まい」という俳句の最初の5文字を「春雨や」だの「初雪や」「花植えて」など何に置き換えても俳句になるという話でこれと言った名所はないが、有名な江戸の地名だ。

今では住所の表示、街灯の看板、バス停の名前などのほかに風景から当時を偲ぶ姿はかけらもなかった。

 しかし、無理やり江戸の面影を探してみると、円光寺の山門の前の車一台も通れないくねくねと曲がりくねった狭い道などは、コンクリートの道ながら小川に沿って作られた畑地の道がそのまま生活道路として今に名残をとどめているようだし、神社の空の部分だけをこれまた無理やり切り取ってみると、「青江又八郎が見たであろう空」と同じ風景に見えないこともない。

W_3

W_2