「あー、食いたいなぁ、旨いキムチが・・・」
「トマトのキムチも旨いんだよね」
入院中だったノンフィクション作家の阿奈井文彦さんと生前はそんな電話やメールのやり取りをしていて、一昨年だったか、12月の中ごろに療養先の焼津に、手製のキムチを持ってお見舞いに行ったことがあった。
しかし、駅まで迎えに来てくれた阿奈井さんの弟さんから、病院食以外のものを食べさせてはいけないほどに病状は進んでいたことを知らされ、やむなくそのキムチは弟さんに持ち帰ってもらったが、阿奈井さんは翌年3月に旅立って逝った。
上のイラストは約40年前に阿奈井さんと共に取材で半年間料理学校に通って掲載した一部で、一番手前、左側が阿奈井文彦さん。
*タイトルが韓国料理ではなく朝鮮料理とあるのは、たまたま取材に応じてくれたのが北系の学校だったというだけです。
さて、前置きが長くなったが、この冬もやはり畑の白菜の収穫を待ってキムチをつけることになり、年が明けて2度目のキムチは久々のトマトキムチとなった。
さて、午後8時、昼のうちに買い求めて置いた材料と40数年前のボロボロになった取材ノートを広げ、YouTubeでグレンミラーのスイングジャズをBGMにかけて・・・
万全の用意が整ったと思ったが、なんとしたことか大根がない。
やむなく、懐中電灯を頼りに畑に行く。
自分の畑でも、真っ暗な中で大根を採って来るのは、誰かにとがめられそうで気が引ける。
それぞれの素材を切ったり、すり下ろしたりして、さらにいろいろな調味料をもみ込むように混ぜ合わせる。
*韓国ではこのようにいろいろな材料を合わせて作る調味料をヤンニョムというらしい。
よく混ぜ合わせたヤンニョムを少し口に入れる。
うまい!
ヤンニョムが旨ければ、キムチはもう旨いに決まっている。
白菜キムチはこのヤンニョムを下漬けした白菜に塗り付けるように白菜の葉の一枚一枚に挟み込んで、あとは冷蔵庫で数日寝かせるが・・・ *美味しくできたヤンニョムは右側の四角い容器の写真の中身のような色に仕上がる。
トマトキムチは、出来上がったヤンニョムと一口大にカットした新鮮なトマトを和えるだけですぐ食べられる。
ヤンニョムはそれだけを熱いご飯に乗せるだけで、たまらなくおいしい。
それに大玉トマトの旨みと甘みが加わるのだから・・・
名古屋弁で言うとどえりゃあうみゃあでいかんがねということになる。
トマトキムチなんて見たことがない・・・という人がいる。
そういえば、私も売っているのを見たことはない。
おそらく、水分の多いトマトのキムチは日持ちが良くなくて流通に乗りにくいのかもしれない。