08年9月のはじめこのブログに「秋風」というタイトルで掲載した記事に、野坂昭如さんの唄「新古今集・春夏秋冬」の<秋>ことを書いた。
作曲/桜井順・作詞/能吉利人・歌/野坂昭如の「新古今集・春夏秋冬」は洋楽器プラス琴の旋律という和のテ-ストを持った曲に乗せて、歌う歌詞は「黒の舟歌」をもっともっとビターにした怨念ソングの野坂節だ。
40年くらい前に神田の共立講堂(だったと思うが、記憶違いかも知れない)のライブで聴いて以来、私の中には現在に至るもこの野坂節が染み込んで消えない。
この新古今集のうち<夏>の♪・・・・・手の中に消えた、暑い暑い夏の日 冷たい冷たいホタル♪ という一節は、野坂さんの直木賞受賞作「火垂るの墓」を彷佛させ、口ずさむだけで不覚にも涙が滲んでくる。
春・夏・秋・冬を通して巧みなかけ言葉の妙と、強烈なまでにビターな味わいで人間の本質と生死感を語る歌は聴く人のハートに直に語りかけて来る。
その怨念の過激さ故にかTV、ラジオの電波に乗ることも無かった歌はライブ版が「野坂昭如不浄理の唄」としてLPレコード化されているのみで、仮にそのレコードを見つけてもCD時代の今ではほとんどそれを聴く手段も無い。
もしあなたが何かの縁でその歌を聴くことができたら、あなたの人生観が変わるとまでは言わないが、薄っぺらな歌をカラオケなんかで歌うのが嫌になるかも知れない。
野坂さんには私の*2冊目の処女出版「わるの本」の出版に際しその序文を書いてもらい、面白半分時代は野坂編集長のもとにカリカチュアを描かせてもらい、野坂さんの小説に挿し絵を描いた他に、四畳半裁判(野坂さんが被告人だった)のイラストルポを描く(今で言う法廷画家の走り)などなどのご縁があった。
*野坂さんに書いてもらった序文とその生原稿の一部。
*2冊目の処女出版と言うのは、牛坂浩二のペンネームでのはじめての出版と言うことで、それに先立つこと2年くらい前に35才の時にゴト-孟の名前で保育社から出した「手づくり遊び」が私の本当の処女出版。
野坂昭如さんの訃報に接し、ご冥福をお祈りしつつこの一文を捧げます。
合掌
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます