チリワインの話題をもうひとつ
日本市場でチリワインというと、カベルネ・ソーヴィニヨンがチリカベと呼ばれてよく知られるように、国際品種のブドウのワインが品質がいいのに安く、コスパで選ぶならチリワイン!という認識でしょうか。
チリには、もちろん本当に素晴らしいカベルネのワインがあり、これまでに何度もフランスワインとのブラインド対決で勝利を収めていたりします。
そうしたトップオブトップのワインを追求するのも当然アリですが、今は肩の力を抜いた土地の伝統ワイン、地場品種ワインが世界のトレンドです。
「多様化の時代」ですからね。
そこで、昨日はチリの伝統品種「パイス」のワインを紹介しました。
本日は、まず、カリニャンの古木ワインプロジェクトを取り上げたいと思います。
カリニャンといえば、フランス南部やスペインで多く見られる品種で、フランスでは最も多く栽培されている品種だと思います。質より量の日常消費用のワインでよく使われています。
他の品種とブレンドされることが多いですよね。
チリでも、パイスのワインを造る際のブレンド用にカリニャンが栽培されていました。
しかし、パイスが廃れたことで、その相棒だったカリニャンの需要が減少することに…
元々地元消費用ワインの原料だったこともあり、1970年代末までに構築されたチリの農地改革の際には見捨てられる存在となってしまったのです。
そんなカリニャンを救おうと、マウレ・ヴァレーの生産者が2009年に集まって始めたのが、「ヴィーニョーVIGNO」プロジェクト。
樹齢30年以上のカリニャンを65%以上使用し、残り35%も樹齢30年以上のブドウを使うこと、すべての品種は灌漑不可で、株仕立て、原産地呼称はDOマウレれあること、が、VIGNOの主な栽培醸造基準です。
この「プロジェクトに賛同した生産者は、同じ「VIGNO」のロゴをラベルに付けています。
2019年時点で16ワイナリーがメンバーになっていますので、今は少し増えているかもしれません。
昨日のパイスワインで紹介したブション・ファミリー・ワインズもVIGNOワインを造っています。
Vigno Carignan Maure Valley 2018 Bouchon Family Wines
花崗岩の多い土壌の畑で有機栽培で作られたブドウを手摘み収穫し、天然酵母にてコンクリートタンクで発酵。フードル樽で1年熟成させたカリニャン100%の赤ワインです。
カリニャンらしいあたたかみ、ふくよかさがあり、ジューシーでほっこり。ナチュラルで落ち着いたテイストが楽しめます。
輸入元希望小売価格は3,800円(税別)と、1000円少々でリゼルバクラスのワインがあるチリにおいて、価格面では決して安いとはいえないかもしれませんが、貴重な古木のワインであることを考えると、世界市場の中では決して高いワインではないのではないでしょうか。
チリのワイナリーで初めてデメターの認証を受けた「エミリアーナ」もVINGOプロジェクトに参加しています。
左)Vigno Organic Carignan Valle del Maure 2015 Emiliana
1950年に植樹した自根の株仕立てのカリニャンで、オーガニック認証を取得しています。
手摘みで収穫後、天然酵母にてステンレスタンク発酵。熟成はフレンチ&アメリカンの樽で12カ月。
こちらの希望小売価格は3,200円(税別)
各ワイナリーの「VIGNO」ワインを並べて飲み比べるのも面白そうですね。
輸入元:WINE IN STYLE
古木カリニャンのVINGOプロジェクトとはまた違いますが、以前取材したコルチャグアのワイナリー「Koyleーコイレ」で、サンソー種100%の赤ワインを見つけました。
右)Koyle Don Cande Cinsault 2018
※左はサンソー100%のロゼワイン
花崗岩に石英が混じる土壌のイタタ・ヴァレーの畑で、灌漑はしていません。
サンソーの樹齢は50年以上!
自生の酵母で発酵させています。
サンソーも南仏でブレンドによく使われるブドウ品種で、わざわざサンソー単一で取り上げることなどあまりないかもしれません。
でも、わざわざ造っています。
一般的なカベルネのワインと比べると、あっさりとした控えめな味わいながら、キリリとメリハリのある酸と、シュッとキレイなタンニンとミネラル、透明感のある果実味が美しいピュアなワインに仕上がっています。
ほっこりおいしく、これが2,000円(税別)
こういうワインこそ、もっとスポットライトが当たっていいと思うのですが。
輸入元:ヴィレッジ・セラーズ
チリのカベルネはたしかにコスパ良くておいしいけれど、このサンソーや、VINGOプロジェクトのカリニャンなどは、マイナーだけど秘められたお宝かもしれません。
大衆が向かう方向と逆に、実は掘り出し物ワインがある、そんな例だと思います。