ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

チリワインの原点回帰ーパイス種のワイン

2021-11-10 22:37:56 | ワイン&酒

新型ウイルス感染者数の激減&緊急事態宣言解除、ということから、ワインの試飲会もどんどん増えてきました。

国単位の大きな試飲会もあり、スケジュールが重なったり、体調不如意で行けなかったり、なのですが、できるだけ参加したいと思っています。

 

今回取り上げるのは、先週開催されたチリワインの試飲会です。

チリワインに関しては、皆さん、それぞれイメージを持っているかと思いますが、国際ブドウ品種のワインはちょっと横に置いといて、今日はぜひこちらを覚えてください。

 

それは、Pais -パイス種

 

スペインのキリスト教宣教師が、キリスト教布教のために16世紀にチリに持ち込んだブドウ品種です。

生命力が強く、収穫量も多いことから、どこでも繁殖し、チリ全土に広がりました。

当時のことですから、質より量が重要なわけです。

時代が新しくなるにつれ、国際市場で求められるワインを造らねば、となった時に、旧来のパイスのワインでは太刀打ちできません。

そうした時代背景から、パイス種はだんだんと廃れていきます。

 

しかし、現代は、その土地らしい地場品種に注目が集まっています。

チリはカベルネ・ソーヴィニヨンで成功しましたが、今こそ原点に戻るべきでは?と考えた生産者も出てきました。

その原点のひとつが伝統品種「パイス」を使ったワインです。

 

実は、試飲会場に入ってすぐに目に飛び込んできたのが、こちらのパイスのワインでした。

 

Pais Salvaje / Viejo  Bouchon Family Wines(Chile)

 

生産者は、フランスからチリに1887年に入植したブションファミリーの3代目。

1970年にマウレ・ヴァレーに畑を購入し、ワイン造りを始めました。

 

左の2本が「Pais Salvaje」(パイス・サルヴァヘ)、右が「Pais Viejo」(パイス・ヴィエホ)

 

まずは、Pais Salvaje

「Salvaje」(サルヴァヘ)は「野生」という意味で、その名前の通り、森の中に野生の状態でワサワサと生えています。

 

 

高さ5m。収穫はハシゴを使い、当然ながら手摘み。

写真を見ると、ブドウを収穫しているようには見えないですよね?

 

 

左)Pais Salvaje White Maule Valley 2019

右)Pais Salvaje Maule Valley 2018 / Bouchon Family Wines

 

パイスは赤ワインだけだと思っていましたが、左のパイスは白ワイン

突然変異で、色が付かないパイスができたようです。不思議~

野生状態なので、100%有機栽培。

天然酵母でステンレス発酵させ、無濾過、無清澄。

人の手をかけていないだろうなぁと感じさせる、ピュアで無垢な、素朴な野性味を感じさせる白ワインでした。

 

右の赤ワインの方は、30%を全房、70%を除梗し、天然酵母でコンクリートタンクで発酵させています。

こちらも100%有機栽培、無濾過、無清澄。

赤の色調は淡めで、濃厚タイプではありませんが、国際品種にはない素朴な個性があり、滋味深く、興味深い味わいです。

 

白も赤も、希望価格2,500円(税別)

チリは1000円台でも優秀なワインがたくさんありますけれど、あえての原点回帰ワインで、世界で唯一無二の存在、それが2,500円なら、試してみたくなりませんか?

 

 

もうひとつのパイスが、Viejo-古樹

 

Pais Viejo Maule Valley Bouchon Family Wines(Chile)

 

Salvajeが野生樹なのに対し、Viejoは人間が植樹した畑の100年超の古木のブドウの赤ワインです。

こちらも天然酵母でコンクリートタンクで発酵、軽く濾過して瓶詰しています。

サルヴァヘよりもピュアな感じがあり、重心が上で軽快なスタイル。

スクリューキャップで扱いやすく(上のサルヴァヘの2本はコルク栓)、希望小売価格も1,500円(税別)とライト。

パイスの入門編として選ぶにはもってこいだと思います。

 

 

チリはお手頃価格のカベルネやシャルドネなどがたくさんあり、もちろん、それらを飲んでもいいですが、いま選ぶなら、地理の原点回帰の「パイス」でしょう!

 

※輸入元:WINE IN STYLE

 

[参考]

2021年の注目ワインはローカル品種ーチリワインの例

https://blog.goo.ne.jp/may_w/e/8f5f0e1b6c94bbc6c589377aaf95adbc

(パイス種のワインを色々と紹介しています)

 


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