ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ジャン・マリー・ギュファンスの白ワインづくり【前編】

2012-01-11 10:16:01 | ワイン&酒
1980年、フランスのブルゴーニュに登場したベルギー出身ジャン・マリー・ギュファンス氏が立ち上げたネゴシアン 「VERGET」 (ヴェルジェ) は、今や確固たるブランドを築き上げ、フランスワインファンなら誰もが知る存在となっています。


Jean-Marie Guffens

ジャン・マリー・ギュファンス氏が手がけるのは白ワインです。

現在、ジャン・マリー・ギュファンス氏は、仏ブルゴーニュ(シャブリ、コート・ドール、マコネ)「Maison Verget」を運営する他、南仏コート・デュ・ローヌでネゴシアン「Verget du Sud」(ヴェルジェ・デュ・スッド)と自社畑のブドウから生産する「Chateau des Tourettes」(シャトー・デ・トゥレット)、さらにマコネで自身のドメーヌ「Domaine Guffens-Heyne」(ギュファン・エナン)と、3つの事業を展開しています。


Saint-Veran 2008  Domaine Guffens-Heyne

彼は非常に個性的な人物として知られ、ワインづくりに対して独自の考えを持ち、時として変人扱いされることもあります。
私も初めて会った時(十数年前)には、え?と驚いたこともありますが、彼のワインを口にすると、その素晴らしさの方に驚かされました。

その彼が昨年来日した際、改めて彼のワインづくりへの思いを聞き、その内容が非常に素晴らしいものでしたので、遅ればせながら、ここで紹介したいと思います。

今回は、彼が語った言葉を中心に書き、ポイントとなる部分は強調して記載します。



ブルゴーニュには、北から、シャブリ、コート・ドール、マコネ、という3つのテロワールがある。
ジャン・マリー・ギュファンス氏は、シャブリとマコネはワインにミネラリティがあるから好き、と言い、ミネラリティは白ワインにとって重要 と言う。

地理的に南に位置するマコネでは、気を抜くといとも簡単にブドウが過熟してしまう。
地球温暖化で、どこでもブドウがよく熟すようになってきたからである。

30年前は、よく熟す場所を探すことが重要だった
しかし、昔よく熟した場所は、今は過熟が問題になっている、と彼は言う。

よって、彼は標高の高い畑を選択している。

昔は畑に石垣があり、雨で表土が流れるのを防いでいた。
しかし、機械化をするために邪魔な石垣を取り除いたことで、雨で表土が流れ、畑の組成が50年前と変わってきてしまったのである。
つまり、表土が薄くやせている畑は標高が高い場所しかないからである。

雨で流されて下に溜まった土、粘土は、高いアルコールと低い酸をもたらす
ワインの酸化熟成が早くなってくる原因はポリフェノールの多さ、と彼は言う。

以前に良かったテロワールも、何世紀かのうちに動いてしまう
だから、人が手がけるワインづくりも動いていかねばならない、と彼は考える。



ワインづくりのファクターには
1)テロワール、2)セパージュ、3)気候、4)ワインメイキング、 がある。

ブルゴーニュでは、1)テロワールと2)セパージュは決まっている。
よって、考えるべきは、3)気候に対応して、どのような4)ワインメイキングを行なうか? 

ブドウが熟した中で酸がしっかりあることが重要
プレスするとPHが高く(酸度が低く)なってしまうので、フリーランジュースのみを使う。

酸を高く保つことはミネラリティと関係がある
シャンパーニュと同じような垂直型のプレスを使い、酸の低下を防いでいる。

銅を使うとワインの酸が下がる
土中に窒素が増えるとダメなので、牛糞を発酵させたコンポストのみを使う。

ジュースの質が良ければ白ワインの醸造過程でバトナージュが少なくてもOK
バトナージュの回数を少なくしている。

嫌いなバタースカッチの味はさせたくない
樽発酵はさせるが、樽熟成はさせず、酸素の入らないタンクで熟成させる。




伝統芸術と文明は違う
コック帽を被っているからといって、シェフではない。

かつての伝統は正しい選択ではない
自分自身で考えて、正しいと思う方向に進むことができた。



【後編】では、個々のテロワールにおける彼の考えおよびワインの紹介をしたいと思います。


コメント
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