とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「かもめのジョナサン完成版」リチャード バック (著)/ 五木 寛之 (創訳)

2014-08-15 07:37:20 | 読書
かもめのジョナサン完成版
クリエーター情報なし
新潮社


40年前、世界的な大ベストセラーになったという「かもめのジョナサン完成版」を読んだ。この本の事は知っていたが、読んだことはなかった。この作品には人間は登場せず、カモメの世界で如何に速く飛ぶかということに全てを掛けたジョナサンというカモメのお話だ。

大まかなあらすじ(ウィキペディアより)
主人公のカモメ、ジョナサン・リヴィングストンは、他のカモメたちが餌をとるために飛ぶことに対して、飛ぶという行為自体に価値を見出してしまう。ジョナサンは食事をするのも忘れ、速く飛ぶことだけのために危険な練習を重ねる。そしてその奇行ゆえに仲間から異端扱いされ、群れを追放されてしまう。それでも速く飛ぶ訓練をやめないジョナサンの前に、2匹の光り輝くカモメが現れ、より高次の世界へと導かれる。「目覚めたカモメたち」の世界のなかでジョナサンはより高度な飛行術を身につけ、長老チャンから「瞬間移動」を伝授される。そしてある日、弟子を連れて下界に降り、カモメの人生は飛ぶことにあるという「思想」を広めようと試みるが、下界のカモメからは悪魔と恐れられるようになる。

40年前は、3部で終了しており、より高度な飛行能力を身につけたジョナサンが世界から消え去って終わっている。宗教的な世界に入り込んだようなお話で、確かに違和感を覚える終わり方であった。40年前、そんな終わり方でありながら何故大ベストセラーになったのだろうか?3部まで読んだ時点では、あまりにも抽象的なお話すぎて、どこがいいのか良く分からなかった。40年前の人々の感じ方と現代の人々の感じるところは違っていたのかもしれない。

この作品は、もともと4部作で構成されていたのだが、作者が何らかの理由で第4部を封印していたそうだ。ところが、数年前、作者が小型飛行機の操縦中に事故で瀕死の重傷に遭い、その際いろいろ想う所があって、今年第4部を含めた完全版を発表したのだという。40年ぶりに完成版が出たわけで、そういった意味で読んでみたい作品になった。

完成版を読んでみた結果は、間違いなくスッキリした終わり方になっていたといえる。偶像化され神として祀り上げられた者は、後の者たちからは、その姿や言動だけを捉え崇拝するだけとなり、その思いがどうだったかについては関係なくなってしまうのだ。まるで、今世界で起こっている宗教的な対立を皮肉っているようにも思える。第4部では、そんな皮肉っぽい描写も交えながら、結局は第1部の「楽しく自由に空を飛びたい」というお話に戻っていく。第3部で、消化不良のままだった感覚が、第4部でしっかり消化できたようである。五木寛之は翻訳ではなく、創訳となっている。直訳ではなく判りやすいように創作した部分もあるようだが、初めて読む者にとっては、読みやすかった。40年前に読んだ人も、完成版を読んで未消化の部分をスッキリさせてほしいものだ。