手を握り会うこと,それにまつわる爪(拷問に使われるだけでなく)の表現というのが非常に細かい。 ビールを注文する、注ぐ、飲むといった日常的な行為が非常に不穏な感じが出すように描かれている。
接見する場面が非常に長いのだが 黒澤明の「天国と地獄」以来といっていい、間を隔てるガラスに相手の顔が写ってダブって見え、一種二人が鏡像関係にあるという基本的なことは当然やっている。
がそれ以上に その仕切りがふっと消えてなくなったり 舞台劇風に被害者のイメージが背後の壁に投影されたりといった リアリズムを超えた象徴的な演出がなされている。
照明やアングルの選択など、すごい細かい工夫をしているのだろうな。
接見の最中に一種の謎解きみたいなことを勝手にされて警察としては余計なことをするなと思うのではないかと思ったりもしたが、その間ひたすら聞いているだけのような刑務官が 一種の存在感を感じさせてきて、 実際終盤になると突然渡辺さんっていう名前が呼ばれたりする。
「役割」だけだった人間が急に名前とおそらく意思のある人間になる瞬間。
裁判傍聴芸人こと阿曽山大噴火が二度までも法廷場面で写っているのが楽屋落ち(というのか)。
回想シーンがかなり多いのでちょっと絵解き的になるのと、ラストがホラー映画のルーティンみたいになるのはちょっと残念。
阿部サダヲをローマ字で表記するとSADAWOなのね、当たり前ながら。
連続殺人鬼の手紙の手書きの文字(ワープロ使えないよね)が綺麗なのが不気味。