『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

震災短編『贖罪』11

2022-11-17 08:42:55 | 創作

 

 初診から一月ほど経ち、ようやく安眠がコンスタントにとれるようになり、食欲もぼちぼち出てきはじめた。 

 ただ、ナイトメア(悪夢)とフラッシュバックには、しばしば悩まされた。 

 あの老婆の断末魔の顔。目。そして木っ端のように流されていく様。それが、何度も何度も、圭子の脳裏に浮かんでは消えるのだった。

 良心の呵責。
 自責の念。 

 その二つが、彼女を際限なく攻め立てた。

 場合によっては、自分もあの場で死んでしまった方が良かったのか…。
 その方が、こんなに苦しまずに楽だったかもしれない…とも思った。

 それは、大災害時に頻出する「サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)」でもあった。

 時間が解決するより仕方がなかった。 

 しかし、その間、心身の平衡を崩さないように、クスリとカウンセリングのサポートが必要であった。  

 そして、あの非道な自らの振る舞いは、守秘義務のまもられる相手でなくば、とてもカミングアウト出来るものではなかった。

 

       

 

 

 

 


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