『人生を遊ぶ』

毎日、「今・ここ」を味わいながら、「あぁ、面白かった~ッ!!」と言いながら、いつか死んでいきたい。

  

震災短編『母燃ゆ』1

2022-11-22 08:40:01 | 創作

 

 理不尽な天災・天変地異による「愛別離苦」は、当人や遺族には悲劇としか言いようがないが、それを聞かされた者にも強烈なトラウマ(心的外傷)を残すものである。
 これは、6,400人もの犠牲者を出した『阪神大震災』の折、実際にあった傷ましい悲劇である。

 その悲劇を実際に、TVのライヴ映像で見せられたので、何日も、そのイメージが脳裏から離れず、間接的なPTSDを負った。

 なので、それをフィクションとしてノベライズし、表現療法としての創作により、自己治療を図ったものである。

『3・11』でも、あるいは同様の悲劇が繰り返されたやもしれぬが、犠牲になられた御霊様には哀悼の誠を捧げ、遺族の方々にも改めてお悔やみを申し上げたい。
 

 ***
 

 午後二時四十六分。

 かつて経験した事のないような激しい大地の揺れに、舞衣は悲鳴をあげた。 

 郊外の大型文房具店に、この春からの大学生活に向けて、真新しい筆記用具を揃えようと来店していた最中だった。
 とても立っていられないほどの大きな揺れで、商品棚から、ペンやら紙の束やらがガラガラと床に振れ落ちた。
 尋常じゃない地震の来襲に、居合わせた客は、我先にと、店外へ飛び出た。 

 店前の広い駐車場に立っていても、依然として揺れは収まらず、うねる波のようにその激しさが増して、舞衣は恐怖を感じ、思わず手を組んで天を仰いだ。

「神様ぁ!!!  どうぞ、早く、この揺れを収めてください。
 どうぞ…。どうか、お願いします」

 そう祈りながらも、舞衣の鼓動は激しく打ち、完治したはずのパニック障害の発作が、再び襲ってきたような感覚に捉われた。

 店内から一緒に避難した青年が、恐々(こわごわ)とした表情で、ケータイに見入っていた。 

 小学時代に、宮城県沖地震による震度5を一度だけ体験したことのある舞衣は、咄嗟に
(これは、6だッ!)
 と直感した。 

 すると、ケータイ青年が
「うわぁーッ! ロクだぁ…」
 と、唸った。

(やっぱり…)
 と、思うや否や、またもや、その〈6なるもの〉が襲ってきた。

 時間の感覚を失うほどの恐怖だが、それでも、裕に2分以上も続いている。

(怖い…。こわい…。
なんで、こんなに長く続くの…)

 舞衣は、つい先々週、高校を卒業したばかりの乙女である。 

 人類がかつて体験したことのない、未曾有の【マグニチュード9】もの超巨大地震が、今ここで、起こっていた。

 国道では、すべての車がストップしており、あまりの揺れで乗っていられないのか、女性ドライバーたちが次々と降車して、抱き合うようにして悲鳴をあげていた。

 3分経っても、依然として、震度6で大地は恐ろしい唸りを上げて揺れていた。 

 目のコンクリート電柱が、まるで、〈振り子メトロノーム〉のように左右に均等に振れていた。
 その振れ角は、三十度もあるだろうか。 

 舞衣は、その光景に、肝を潰し、喉から何かが込み上げてきそうになった。

 

 

     


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