北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

サイクルツーリズムから見る遠州遺産とは ~ コンテンツを支えるサイクリストインフラ

2020-09-25 22:51:00 | Weblog

 

 今夜は友人のサトーさんが登壇する「遠州遺産100プロジェクト連続オンライン講演会~サイクルツーリズムから見えてくる遠州遺産」がありました。

 もともとの切り口は、静岡理工科大学で今の静岡県西部にあたる"遠州(=かつての遠江(とおとうみ)のくに)"の建築遺産を勉強しはじめたことに端を発しているのだそう。

 それが、「地域の誇りは建築だけでなく、川や動物や樹木やひとの営みなど、さまざまで、そういった広がりの採集を目標にしているはず」ということから、それに合った名前として「遠州遺産100プロジェクト」に変えたとのこと。

 今日はその講座の第4回として、長年にわたって掛川で「遠州ゆるゆるガイドライド」を主宰しているサトーさんから、自転車目線の遠州の魅力・遺産が語られたのでした。

 最近はサイクリング大会というとロングライドが主流になりました。

 それもまた距離が長くなったり坂を上るヒルクライムなどハードルが高いほど人が集まるというすごいことになっているのですが、自転車をただ瞬間的人集めの企画にするのではなく、地域の魅力と人の魅力を伝えるツールとしてガイドライドをおこなっているのが掛川で行われている「遠州ゆるゆるガイドライド」です。

 よくサイクリングコースを設定するとなると、道路管理者が名を上げたくてモデルコースを定めるということが行われますが、掛川でのポイントは、そんなハードの量ではありません。

 それよりは、地元に普段から自転車に乗るサイクリング愛好家がいて、そんな人たちが月に一度集まって、各自自慢のコースを互いに巡りながらコースの魅力紹介、危険ポイントの察知、難易度のチェック、コース時間のイメージ確認などを繰り返して、網の目のようなコースバリエーションがあること。

 そしていざガイドライドとなると、140名募集で二日間にわたる大会規模で、参加者20名に対して5名の割合で地元サイクリストがガイドできる体制があること、これこそが掛川のサイクリングを支える大きな魅力になっているのです。

 そこでは、お城や美術館などの建物は言うまでもなく、さらにサイクリングをしながら頭だけが見える茶畑の中や、先人たちが苦労して作った手彫りのトンネル、病気を治してくれたお地蔵さん、斜めになった地層が良く見える斜面などが、短い距離のなかに次々に登場するという濃いコースが目白押し。

 これらは作られたコンテンツではなく、まさに魅力が再発見されたコンテンツ。これこそ「わが地域とはなんだ」という視点で発見される「地域学」「生涯学習」の一つのすがたなのではないか、というのが私の理解です。

 この姿って、全国のサイクリングで地域おこしをしようと思う自治体には見て欲しいのですが、ではこれを手本にしてわが町でもやろうと思っても、さてできるかどうか。

 目に見えるコンテンツ(=モノ)だけではなく、目に見えないガイド集団の存在やそれぞれのガイドの力量など、かけがわでやられているコトにも着目しないと真似ができなさそうです。

 私も少しだけ参加しましたが、実は画面のこちらではもうお酒をいただきながらたのしませてもらいました。

 静岡と北海道、さらには金沢や他の地域の方たちまでが同じ時間を共有できるリモート講演会って、ポストコロナ時代の果実ですねえ。

 主催また参加されたみなさま、ご苦労様でした。


     ◆
 

 さて、そんな講演でしたが、終わってからお酒を飲みながらつらつら考えるに、実は「遠州」という名前すらも面白い遺産の一つだと気がつきました。

 そう思って(確か昔にそんなブログを書いたはず)と検索してみると、ありました、2011-6-6のわがブログ記事「エンメンタール、信州、そして"道東"」という記事です。

https://blog.goo.ne.jp/komamasa24goo/e/5a8bd7318a7eee7b366943a3c4be1dbe

 現在の自治体の名前としては存在していないのに、その地域のことが一定のイメージとともに伝わる地名ってあるものです。

 海外ではチーズに名の残るスイスの"エンメンタール"地域であり、日本の代表は"信州(=ほぼ長野県)"なのじゃあないか。

 で、実は北海道をひとくくりにするのではなく、"道東(釧路が含まれる)"を東北海道なのではなく、"DOUTOU"というブランド地名にするべきではないか、という趣旨でした。

 遠州も同じで、これを「静岡県西部」と言ってしまうと、「静岡?ああ伊豆に行ったことがありますよ」で、静岡県の一部をつまみ食いされただけで静岡はもう行ったことがある土地にされてしまうのではないでしょうか。

 今回の連続講演もゆるゆるガイドライドも、"遠州"という、一聴して分かるような分からないような地名をつけていることにこそ「それはどこ?」「では説明しましょう」というとっかかりを得られる効果があるように思います。

 となるとやはり"遠州"という名前が残っていることこそ遺産の一つです。

 これをさらに魅力づけることもまだまだやれそうなことですね。

 磨けば光る原石は案外身近なところにあるものです。

 

コメント
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