今日は仕事の関係で、物流のお仕事をしているAさんを訪ねました。
Aさんは私よりずっと若いのに、北海道の物流の今後に対する確かな目と行動力をもっていて、問題意識を解決するための行動をどんどん起こしています。
人口減少時代のこれからの物流への問題点を尋ねてみると、「トヨタがやって成功した"Just in time"方式、つまり、在庫を持たずに必要な時にもってくるというシステムがもう通じなくなるんです」と時代が変わったことを深刻に受け止めています。
「"Just in time"方式のために、地域で在庫を持たなくなりました。それと同時に巨大ショッピングセンターの進出で、地方の問屋さんが激減しました。そのために、ものはなくなったら持ってくれば良いという考え方が広がったのですが、それは道路が通行止めにはならないしいつでも運んでくれる人がいるという前提のシステムです」
「なるほど」
「北海道では、災害は稀だとしても冬期の吹雪によって二日間も通行止めになるなんてことがしょっちゅうあるのです。誰もモノを運べないとなると、地域の中で必要なものがあっという間に枯渇してしまいますよ。効率性だけを追求するシステムは、稠密な都会では成立しても、地方部の人口が点在するような北海道では、別なことを考えるべきだと思います」
確かに北海道では、吹雪になると安全のために道路の通行止めを簡単にするようになりました。
通行する車両の安全は確保できても、社会全体の経済を巡る観点では決して全体最適とは言えないのです。
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Aさんは、これからいよいよ物流のコストが上がってくると懸念を示します。
「国交省が、トラック運送業での運賃・料金の適正化を図るため、運送以外のコストを適切に収受しようと、標準貨物自動車運送事業約款を改正することになりました。今まではなんとなくドライバーがかぶっていた労働を明確に分けてコスト化するというのです」
「そうなんですか」
「ええ、現行の規定では、運送状の記載事項に『運賃、料金、燃料サーチャージ、立替金その他の費用の額』が含まれているのですが、『料金』『その他の費用』の内容についての細かな記載がありません。
貨物の 『積込み又は取卸し』については、運送事業者が行うこととされていますが、そのコストについては約款に定めがないのです」
「それが変わるのですか?」
「はい、トラック運送業における書面化推進ガイドラインを改正して、必要な記載事項として『料金』を追加し、その例として示す料金を『待機時間料』、『積込み料』、『取卸し料』、『附帯業務料』などと整理されるようです。つまり今まで実質めり込んでいたこれらのコストを明らかにされていきます。これらが実現するのにはまだ時間がかかるかもしれませんが、こうした傾向だという事です。
そうして物流コストが高くなると、特に北海道のように、モノが少なくてしかも遠いという地理的条件では特に厳しくなりますよ」
物流のコストが高くなると、北海道の産品の質が良いと言っても価格で勝てないかもしれません。
「そのためにはどうしたらよいとお考えですか?」
「運送業者主体の非効率な配送システムから、業者が連携してトータルのコストを下げるようなシステムが必要です。ちなみに、私は『それは今必要ですか?』という荷物があると思うんです」
「今すぐに要らない荷物ですか?」
「はい、例えばコピー用紙なんかそうですね。(ちょっと足りなさそうだから注文しておこうっと)というくらいの荷物だったら、別に来るのが来週でも良い。しかし注文を受けたら、我々配送業者は指定の時間に届けようと必死になるわけです。こういう荷物だったら、配送日時指定に『来週でもいいよ』というカテゴリーを作って、それなら値段をグンと安くしてやるというサービスがあっても良い。そうなれば、配送業者は運ぶ荷物を、急ぐものといつでも良いものを組み合わせて効率的な配送計画を立てられるようになるかもしれません」
地域の人口が減るとともに、物流を担う人口も減る。そうなるとコストも上がる。
北海道が良いものを安く供給できる島であるためには、物流の勉強を疎かにしてはいけないようです。