体を動かす趣味は実際にやるのが一番楽しいのですが、ただやみくもにやってみても上手になるわけではありません。
まずは基礎を学ぶのに教科書的な本を読み、レベルが上がったらそれなりのレベルでやはり本を読んで勉強をしてゆくと、知識と実践が相まって上達が早くなることでしょう。
だんだん上達してくると、教科書で学んだり先輩筋から教わったことでも(自分には合わないな)と感じることが多くなってきます。学んで取り入れられるものは取り入れ、自分には合わないと感じることは捨て去る選別眼が必要です。
よく「守・破・離」と言いますが、芸事はまず師匠の教えを「守り」、それから自分なりの工夫で常識を「破り」、最後に自らの道を究めて師匠を「離れる」という順番で進歩・上達して行くのです。
また、趣味が高じてくると、単に技術レベルを上げるだけではなくて、周辺情報をもっと知る必要を感じます。
私の好きな素人手打ち蕎麦の世界には、全国麺類文化振興協議会というところが主催する「段位認定試験」というのがあって、初段から五段まで段位を認定します。
この試験では三段までが蕎麦打ちの技術をチェックする問う試験を行いますが、四段からはそれまでの蕎麦打ちに対する貢献内容を問われたり、そばの栽培、品種、栄養、健康、そばの歴史、文化、全麺協および段位認定制度の理解度等そばについての幅広い知識を問われる筆記試験などもクリアしなくてはなりません。
蕎麦打ちが技術だけではなくて、蕎麦打ちの文化となるにはそうした歴史を始めとする周辺知識も身につけておくことが必要なのです。
◆
釣りもやはり技術が必要ですが、上達するためやこの世界を楽しむためには膨大な周辺知識が必要です。
それもフライフィッシングとなると、単に釣りの道具や体の使い方だけではなく似せて作る疑似餌の元である昆虫やその幼虫の知識や、さらには魚そのものの生態も知っておくと、さらに奥の深い楽しみ方ができるというものです。
脳外科の権威でありながらフライフィッシングをこよなく愛し、ついには海外の良書を翻訳までしてしまうというマルチな活動をされている川野信之さんというお医者さんがいます。
色々な御縁が繋がって、一緒に釧路で釣りにいった経験もあるのですがこの川野先生による翻訳本の最新刊が『フライに対する鱒の行動(G.E.M・スキューズ著)』です。
宣伝文句は、「人生の全てをフライフィッシングに捧げ、フライフィッシングのステージを 劇的に変えた男、スキューズに学べ」。
先達の釣りの経験を時間を掛けずに手に入れるとしたら、先人の悩みと解決の道筋を読書という形で取り込むことは効率的。そして何より釣り文学を読むという最高の道楽というもの。
「札幌市内では、『Thames(テムズ)』というフライショップにあるよ」、とフェイスブックに書かれていたので早速お店に行って、最後の一冊を買ってきました。
「サインをもらわなきゃ」と思っていたら、なんと既に著者の川野先生のサインは入っていました。あとは、今度お会いしたときに「小松さんへ」と書いてもらおうと思います。
さて、シーズンが始まるこの時期は、この本を読んで鱒の心理を勉強して備えますぞ。
.
『フライに対する鱒の行動』 http://amzn.to/1DNwm1B